確かに、巷間では個人の感覚や体験に基づく投資が勧められている。「身近な商品で満足度の高いものを提供する業者の株を買え」である。例えば、「ハンバーガーが美味しいからマクドナルドを買う」や「ゲームが好きだからソニーや任天堂を買う」といった類いだ。しかし、投資判断は歴史的な事実に拠るべきである。個人の満足度よりも世界全体の需要増の方が遥かに市場への影響が大きいからだ。
例えば、年初来エヌビディア(NVDA)が高騰している。AIに必要な高性能な半導体の需要が世界規模で増大しているからだ。さらに、1990年代のインターネットの普及によりIT銘柄が高騰した事実(ITバブル・2000年以降暴落)を踏まえると、投資判断の妥当性が高まる。Windows95の爆発的ヒットと現在のChatGPT狂騒曲は世相が重なる。ChatGPTを日常的に業務に利用している者が少数であることから、AIの普及は未だ黎明期と言え、高騰は始まったばかりである。
また、画期的な科学技術の普及に加え、有事にも着目すべきである。ウクライナ侵攻や中東情勢である。経済制裁により世界有数の産油国であるロシアからの原油の輸入に制限がかかる。主にロシア産原油の輸入国であったEU諸国の輸入元が米国や中東、アフリカに変わることで、タンカーの需要増、航路延長が生じた。そして、中東情勢からフーシ派が紅海航行中の商船を襲うことで、スエズ運河経由の船がアフリカ最南端の喜望峰経由となり航路延長を引き起こし、傭船料が増大する。よって、歴史から産油国の有事によりタンカーの需要と供給の均衡が崩れることを予期していれば、タンカー株の投資により利益を得られた。
したがって、投資判断は歴史的事象に着目することで蓋然性が高まる。投資においては、ビスマルクの「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」が正に核心を突いている。
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