総合型選抜の危うさ

批評

大学入試における総合型選抜の危うさについて、弁証法を用いて論じてみましょう。

論題の設定

まず、大学入試において受験生の知識よりも感覚や体験を重視することの危うさを議論するにあたり、総合型選抜の利点と欠点を整理します。

正:総合型選抜の利点

総合型選抜には、以下のような利点があります:

  1. 多様な能力の評価: 学力試験だけでは評価しきれない、リーダーシップやコミュニケーション能力、創造力などの多様な能力を評価できる。
  2. 個別対応: 受験生一人一人の特性や背景を考慮した選抜が可能となり、個別対応ができる。
  3. 柔軟性: 従来の画一的な学力試験から脱却し、多様な選抜方法を導入することで、入試の柔軟性を高める。

反:総合型選抜の欠点

次に、総合型選抜には以下のような欠点が指摘されます:

  1. 客観性の欠如: 感覚や体験の評価は主観的になりがちで、選抜の公平性や一貫性が担保されにくい。
  2. 学力の担保: 理系分野においては特に、基礎的な学力(数学、物理、化学)の確保が必要不可欠であり、これが不足すると技術者としての資質が問われる。
  3. 準備の不平等: 感覚や体験を評価する際、家庭環境や教育環境による差が大きく影響するため、不平等が生じやすい。

止:総合型選抜の総合的評価

総合型選抜の利点と欠点を踏まえた上で、その危うさについて以下のように弁証法的に論じます。

1. 客観性の欠如に対する懸念

総合型選抜において感覚や体験を評価する際、主観的な判断が避けられません。これは選抜の公平性に疑問を生じさせる要因となります。例えば、面接官の個人的な好みや先入観が評価に影響を及ぼす可能性があり、これにより実力を正当に評価されない受験生が出てくる危険性があります。

2. 学力の担保の必要性

特に理系分野においては、基礎的な学力の担保が不可欠です。技術者として必要な数学、物理、化学の知識が不足していると、専門的な知識や技術の習得が困難となり、結果として社会に貢献できる技術者を育成することが難しくなります。したがって、総合型選抜を導入する際には、学力の評価を併せて行うことが重要です。

3. 準備の不平等に対する対策

感覚や体験を評価する総合型選抜では、家庭環境や教育環境による差が大きく影響します。これにより、経済的に恵まれた家庭の子供が有利になりやすく、教育格差が広がる危険性があります。この問題を解決するためには、受験生が平等に評価されるための基準や方法を確立することが求められます。

結論

総合型選抜の導入には、多様な能力の評価や個別対応の面で利点がある一方で、客観性の欠如、学力の担保、不平等の問題が指摘されます。これらの問題を克服するためには、総合型選抜と学力評価をバランスよく併用し、公平で一貫性のある評価基準を確立することが不可欠です。したがって、総合型選抜の危うさを認識し、適切な対策を講じることが、大学入試制度の健全な発展に寄与すると考えられます。

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