アウフヘーベンとは

用語

ヘーゲルの「アウフヘーベン」(Aufheben、ドイツ語)とは、弁証法の中心的な概念で、二重の意味を持つ複雑な言葉です。「アウフヘーベン」には、「取り除く」と「保存する」という相反する意味が含まれています。具体的には、ある事柄や状態を否定しつつも、その本質的な部分を保持・発展させるプロセスを指します。

1. 否定(取り除く)

「アウフヘーベン」は、まず前の段階や概念を否定することを意味します。ヘーゲルの弁証法では、テーゼ(命題)に対してアンチテーゼ(反対命題)が現れ、この対立を克服するために、新しい段階に進む必要があります。古いものはそのままでは前進できないため、否定されます。

2. 保存(発展させる)

しかし、この否定は単なる破壊ではありません。古い段階の価値や本質的な側面は保持され、次の段階でより高次な形で発展します。これが「保存」という意味です。つまり、古いものを全て無効にするのではなく、その中で有効な部分は新しい形で再構成されます。

3. 統合(発展)

「取り除く」と「保存」の両方が行われる結果、矛盾や対立が統合され、より高次の新しい段階(ジンテーゼ)が生まれます。このプロセスを通じて、対立する概念や状況が「揚棄」され、より進んだ形で存在するようになるのです。

アウフヘーベンの具体例

例えば、「自由」と「秩序」の対立を考えます。自由が無制限に拡大すると、秩序が失われ、混乱が生じます。一方、秩序を優先しすぎると自由が抑圧される。しかし、アウフヘーベンにより、自由と秩序の対立は、両者を否定しつつも、それぞれの本質を保持した新たな制度や社会体制として統合されます。

このように、ヘーゲルの「アウフヘーベン」は、単なる否定でも単なる保存でもなく、矛盾を統合してより高次の段階に進むための弁証法的なプロセスを指します。

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