金利の文脈での「ブレークイーブン(break-even)」は、特に期待インフレ率(break-even inflation rate)や債券利回りの比較において使われる専門用語です。
✅ 金利における「ブレークイーブン」の代表的な意味
▶️ ブレークイーブン・インフレ率(Break-even Inflation Rate)
これは、名目金利と実質金利の差から求められる将来の市場のインフレ期待を表します。
✔ 計算式
ブレークイーブン・インフレ率=名目利回り(例:10年国債)−実質利回り(例:TIPSなどインフレ連動債)
✔ 例:
- 名目10年国債の利回りが 3.5%
- 10年TIPS(実質金利)が 1.5%
→ ブレークイーブン・インフレ率 = 3.5% – 1.5% = 2.0%
これは、「今後10年間、年平均2.0%以上のインフレになればTIPSの方が得、2.0%未満なら通常国債の方が得」という意味です。
✅ 他の金利文脈での使われ方
▶️ 債券投資における損益分岐点(金利リスクの視点)
固定金利 vs 変動金利の選択などで、
- 「今後金利が〇%を超えたら、変動金利の方が得」
- 「〇%未満なら固定金利の方が有利」
といった、「金利の上昇・下降に対して、どこまでなら得か・損かの境界線」としてブレークイーブン金利が使われます。
✅ イメージしやすい例(図解的に)
インフレ率(将来) → 1% 2% 3%
↓
TIPSリターン(固定) → +1.5%
普通債券リターン → +2.5% +3.5% +4.5%
→ 2.0%で損益が逆転 → ここが「ブレークイーブン」
✅ まとめ
用語 | 意味 |
---|---|
ブレークイーブン・インフレ率 | 市場が織り込む将来の平均インフレ期待 |
債券のブレークイーブン金利 | 債券や金利商品の損得が逆転するインフレ率・金利水準 |
米国財務省が発行する**物価連動国債(TIPS:Treasury Inflation-Protected Securities)**と、通常の国債の利回り差を利用して、**市場が予想する将来のインフレ率(ブレークイーブン・インフレ率)**を計算する方法について、具体的な数値を用いて説明します。
1. TIPSと通常国債の利回り
例えば、以下のような利回りが観測されたとします:
- 10年物TIPSの利回り:1.0%
- 10年物通常国債の利回り:3.0%
2. ブレークイーブン・インフレ率の計算
ブレークイーブン・インフレ率は、通常国債の利回りからTIPSの利回りを差し引くことで求められます: ブレークイーブン・インフレ率=通常国債の利回り−TIPSの利回り
上記の数値を代入すると:ブレークイーブン・インフレ率=3.0\% – 1.0\% = 2.0\%
この結果、市場は今後10年間で年平均2.0%のインフレを予想していることが示されます。
3. インフレ率と投資戦略への影響
- インフレ予想が2.0%の場合:実質利回りが1.0%であるTIPSは、インフレ率が2.0%を上回ると実質的な利益が減少します。一方、通常国債は固定の名目利回り3.0%を提供します。
- インフレ予想が2.0%を下回る場合:TIPSの実質利回り1.0%が有利になり、通常国債よりも魅力的な投資となります。
4. まとめ
ブレークイーブン・インフレ率を理解することで、投資家はインフレヘッジの必要性や、名目金利と実質金利の違いを考慮した投資判断を行うことができます。
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