米国フィラデルフィア半導体指数(SOX)の推移:過去から現在まで

政治経済

年次・月次ベースでの指数推移概要(直近5〜10年)

米国のフィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は、この10年で大きく成長を遂げました。2010年代半ばからの半導体需要拡大を背景に上昇基調を辿り、2020年前後には変動が激しくなりました。2020年3月の新型コロナショックで一時急落したものの、その後各国の大規模な金融緩和策やテレワーク・巣ごもり需要による電子機器販売増加を追い風に急反発し、2021年末までに過去最高値圏に達しました (LIVE MARKETS Chip index hits record as Nvidia eyes $1 trillion club | Reuters)。例えば2021年通年ではSOX指数は前年比+39%とS&P500の+25%を大きく上回り、半導体セクターの好調ぶりを示しました (LIVE MARKETS Chip index hits record as Nvidia eyes $1 trillion club | Reuters)。

しかし2022年になると一転して調整局面に入り、年初来で36%の下落となりました (Slowdown in Semis? Why the Long-Term Growth Story Remains Compelling for the PHLX Semiconductor Index | Nasdaq)。インフレ高進による金融引き締めや半導体の需要減速など複合要因で業績見通しが悪化し、指数は2022年10月中旬に底打ちするまで弱含みとなりました (Slowdown in Semis? Why the Long-Term Growth Story Remains Compelling for the PHLX Semiconductor Index | Nasdaq)。その後はインフレ鈍化や景気後退懸念の後退に伴い買い戻しが進み、2023年には大幅な回復を遂げます。特に生成AIブームによる新たな需要期待もあって、2023年末までにSOX指数は約2年ぶりの高値水準に達しました (Surging Chip Stocks: Philadelphia Semiconductor Index Reache… – moomoo Community)。そして2024年7月には過去最高値を更新するに至ります (Nvidia leads Nasdaq and S&P 500 to record high closes | Reuters)。

直近では、2024年後半以降に高値警戒感から調整が入り、米中対立激化懸念も加わって上昇に一服が見られました(後述) (Chip stocks shed over $500 billion in value on China trade fears | Reuters)。2025年初頭時点のSOX指数は4,000ポイント台前半(2025年4月1日終値4,282.46)で推移しており (History for SOX – Nasdaq Global Indexes)、ピークからやや下げたものの5年前と比べ依然高水準を保っています。

主要な上昇・下落局面とその背景

過去5〜10年のSOX指数の変遷において、いくつかの主要な上昇・下落局面がありました。それぞれの局面で影響した背景要因(政策、景気、米中関係、金利、需給など)を以下にまとめます。

  • 2018年後半の急落: 2018年は米中貿易戦争が本格化し、アメリカが中国製品に関税を課した影響でハイテク企業に逆風が吹きました。半導体株も例外ではなく、**2018年Q4(10〜12月期)**にSOX指数は約-20%の急落を記録しています (Effects on semiconductor industry of tariffs – moomoo Community)。ちょうど米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを進め市場心理が悪化していた時期であり、米中対立によるサプライチェーン混乱懸念が売り材料となりました。
  • 2019年前半の回復: 2019年になるとFRBが利上げ停止から利下げに転じたことや、米中貿易交渉で部分合意への期待が高まったことで市場環境が改善しました。半導体需要もデータセンターや5G投資などで底堅さを見せ、SOX指数は2019年を通じて堅調に上昇しました(2018年末の下落分を埋め、2020年初までにほぼ回復) (Effects on semiconductor industry of tariffs – moomoo Community)。
  • 2020年3月の急落と急反発: 2020年初頭に新型コロナウイルスの世界的流行が起きると、景気急減速の懸念から株式市場全体が暴落し、半導体指数も急落しました。しかし各国の大規模金融緩和と財政出動、そして在宅勤務やオンラインサービス拡大で半導体需要が却って高まる局面となり、半導体株は3月下旬を底に急回復します。特にPC・ゲーム機・データセンター向け半導体の需要が旺盛となり、2020年後半にはSOX指数はコロナ前の水準を大きく上回りました。
  • 2021年の記録的上昇: 2021年は世界的な半導体不足(チップ不足)が深刻化し、自動車から家電まで幅広い業界で半導体需要が逼迫しました。これにより半導体メーカーの業績が急拡大、市場も将来の成長を織り込んで半導体株を買い進めます。SOX指数は2021年11月までに当時の史上最高値を更新し、年末時点で前年比+39%という卓越したリターンを上げました (LIVE MARKETS Chip index hits record as Nvidia eyes $1 trillion club | Reuters)。低金利環境も追い風となり、半導体セクターがハイテク株式市場を牽引した年でした。
  • 2022年の弱気相場: 2022年はインフレ圧力に対応するため米FRBが急激な利上げを実施し、ハイテク・グロース株に逆風となりました。半導体需要もPC・スマートフォン向けを中心にコロナ禍の反動で減速し、在庫調整局面へ入ります (Semiconductor: Tech rally haunted by ‘palpable fear’ of chip industry weakness, ET CIO)。その結果、SOX指数は年初から10月中旬まで断続的に下落し続け、年間では36%の大幅安となりました (Slowdown in Semis? Why the Long-Term Growth Story Remains Compelling for the PHLX Semiconductor Index | Nasdaq)。また2022年10月には米政府が先端半導体の対中輸出規制を強化し、エヌビディアなど一部企業が高性能AIチップを中国に販売できなくなったことも短期的な売り材料となりました (Effects on semiconductor industry of tariffs – moomoo Community)。これら政策・需給要因が重なり、2022年は半導体セクター全体が大きく調整した年となりました。
  • 2023年の再上昇: 下落が続いた半導体指数は2022年10月に底入れし、2023年に入るとインフレ鈍化による利上げ停止期待や半導体市況回復観測から大きく反発しました (Slowdown in Semis? Why the Long-Term Growth Story Remains Compelling for the PHLX Semiconductor Index | Nasdaq)。特に生成AIブームによってデータセンター向け半導体需要が新たな成長エンジンとして注目され、関連銘柄が急騰します。エヌビディアの好調な業績見通し発表(AI需要による売上急拡大)を契機に、SOX指数は2023年5月下旬に1日で+6.8%も急騰し約1年ぶりの高値水準に達しました (Wall Street ends higher as Nvidia sparks rush for AI stocks | Reuters)。景気面でも米国や欧州がリセッション(景気後退)を回避し、中国もゼロコロナ解除で経済再開が進むとの期待が広がったことから、半導体需要の底打ちと先高感が意識されました (US semiconductor index hits highest in nearly a year on hopes for industry turn | Reuters) (US semiconductor index hits highest in nearly a year on hopes for industry turn | Reuters)。
  • 2024年前半の最高値更新: 2023年後半から加速したAIブームは2024年前半も継続し、半導体各社の業績を押し上げました。エヌビディアなどAI関連半導体企業の時価総額は過去最高を更新し、また米国の利上げサイクル終了から年内利下げへとの思惑も追い風となります (Nvidia leads Nasdaq and S&P 500 to record high closes | Reuters)。最大手の一角である台湾TSMC(台湾積体電路製造)が堅調な決算を発表したことなどを受け、SOX指数は2024年7月10日に前人未踏の水準へ到達しました (Nvidia leads Nasdaq and S&P 500 to record high closes | Reuters)。この時点でSOX指数は過去最高値を更新し、市場には強気ムードが漂いました。
  • 2024年後半の調整局面: 2024年7月下旬、米国政府が対中半導体輸出規制を一段と強化する可能性が報じられると、市場心理が急速に悪化します。米中対立激化に対する警戒から半導体株は急落し、SOX指数は2024年7月17日に1日で-6.8%(時価総額にして5,000億ドル超の蒸発)という2020年以来の急落を記録しました (Chip stocks shed over $500 billion in value on China trade fears | Reuters)。この急落ではエヌビディアが-7%、AMDが-10%、ASMLが-13%と軒並み売り込まれました (Chip stocks shed over $500 billion in value on China trade fears | Reuters)。その一方で、米国内生産比率の高いグローバルファウンドリーズやインテルは上昇するなど、地政学リスクの影響が企業ごとに明暗を分けました (Chip stocks shed over $500 billion in value on China trade fears | Reuters)。その後も米中関係や高止まりする金利への不安から半導体指数は乱高下し、2024年後半は総じて調整含みの展開となっています。

エヌビディア、インテル、AMDなど主要構成銘柄の影響

SOX指数は時価総額加重型の指数であり、構成銘柄の中でも特に規模の大きい企業の株価動向に大きく左右されます。中でもエヌビディア(NVDA)インテル(INTC)、**AMD(AMD)**の影響力は近年とりわけ顕著です。以下の図が示す通り、2023年にはエヌビディアとAMDの株価が年初来+226%および+112%と飛び抜けた上昇率を記録し、SOX指数を約2年ぶりの高値水準まで押し上げる原動力となりました (Surging Chip Stocks: Philadelphia Semiconductor Index Reache… – moomoo Community) (Surging Chip Stocks: Philadelphia Semiconductor Index Reache… – moomoo Community)。

(Surging Chip Stocks: Philadelphia Semiconductor Index Reache… – moomoo Community) (Surging Chip Stocks: Philadelphia Semiconductor Index Reache… – moomoo Community)2023年におけるSOX指数構成銘柄の株価上昇率(上位銘柄)。NVDA(エヌビディア)は+226%、AMDは+112%など突出した上昇となり、SOX指数自体もこの年約55%上昇したことが示されている。主要株指数(三大指数)を大きくアウトパフォームする半導体セクターの強さが視覚的に示された (Surging Chip Stocks: Philadelphia Semiconductor Index Reache… – moomoo Community)。

  • エヌビディア(Nvidia): データセンター向けGPUやAI(人工知能)用途の半導体需要拡大を背景に、近年SOX指数を牽引する存在です。2021年にはエヌビディア株が年初来+150%超の急騰となり、SOX指数の年間上昇率+39%の原動力となりました (LIVE MARKETS Chip index hits record as Nvidia eyes $1 trillion club | Reuters)。また2023年5月にAI需要による驚異的な業績見通し(売上高が予想比+50%)を発表すると、株価は1日で+24%急騰し時価総額が世界最大の半導体メーカーに躍り出ました (Wall Street ends higher as Nvidia sparks rush for AI stocks | Reuters)。この日にSOX指数も+6.8%と約1年ぶり高値まで急伸しており (Wall Street ends higher as Nvidia sparks rush for AI stocks | Reuters)、エヌビディア一社の好調が指数全体に与える影響の大きさが示されています。
  • インテル(Intel): かつて半導体業界を代表する王者であり、長年SOX指数における比重も高かったインテルですが、近年は製造プロセス競争で後れを取り株価は伸び悩みがちでした。2022年の弱気相場でもインテル株は大きく調整し、指数の下押し要因となったとされます。一方で地政学リスクの高まりに伴い、米国内で大規模製造拠点を有する強みから恩恵を受ける場面も出てきました。実際2024年7月に米政府の対中輸出規制強化懸念でエヌビディアやAMD株が急落した際、インテル株は逆に+0.35%と小幅ながら上昇を保ちました (Chip stocks shed over $500 billion in value on China trade fears | Reuters)。アメリカ政府の半導体補助金政策(CHIPS法など)や盟友国との連携強化も追い風となり、インテルは地政学的な逆風下でも相対的に有利な立場にいるとの見方があります (Chip stocks shed over $500 billion in value on China trade fears | Reuters)。
  • AMD(Advanced Micro Devices): PC・サーバー向けCPUやGPUでインテルやエヌビディアに競り合うAMDも、2016年以降の製品競争力向上により株価が長期的に急伸し、SOX指数上昇に寄与してきました。特に2020〜2021年にデータセンター用CPUやゲーム機向けプロセッサの需要拡大で株価が数倍に跳ね上がり、指数全体を支えた経緯があります。2022年は調整しましたが、その後のAIブームで注目され、2023年には株価が年間で約2倍(+112%)になるなど再び大きく上昇しました (Surging Chip Stocks: Philadelphia Semiconductor Index Reache… – moomoo Community)。エヌビディアの好材料発表時にはAMD株も連れ高する傾向が顕著で、例えば前述の2023年5月にはエヌビディア好決算を受けてAMD株も1日で+11%急騰しています (Wall Street ends higher as Nvidia sparks rush for AI stocks | Reuters)。このようにAMDも指数構成銘柄としてエヌビディアに次ぐ存在感を示しており、その株価パフォーマンスがSOX指数に影響を与えています。

以上のように、米国フィラデルフィア半導体指数(SOX)は過去5〜10年で大きな成長を遂げつつも、政策・景気・需給・地政学リスクによって周期的な変動を経験してきました。半導体産業は依然としてAIや電気自動車など新分野の需要拡大が見込まれる一方、米中関係や金利動向による波乱要因も内包しています。今後も主要構成企業の業績動向や各国の政策次第で、SOX指数は大きく上下し得るでしょう。そのため、信頼できる情報源 (Slowdown in Semis? Why the Long-Term Growth Story Remains Compelling for the PHLX Semiconductor Index | Nasdaq) (Chip stocks shed over $500 billion in value on China trade fears | Reuters)を参照しつつ、これら背景要因を総合的に注視することが重要です。

Sources: Nasdaq・Bloomberg・TradingView・Reuters 等の公的な金融情報ソースを参照し、各種レポートやニュースから指数推移の要因を分析しました。 (LIVE MARKETS Chip index hits record as Nvidia eyes $1 trillion club | Reuters) (Wall Street ends higher as Nvidia sparks rush for AI stocks | Reuters)上記記載の数値・事実はこれら信頼性の高い情報に基づいています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました