【1】主要業績の概要
2025年1月~3月期におけるAlphabetの業績は、AIおよびクラウドの加速により、アナリスト予想を大きく上回るものとなった。
- 売上高:902億ドル(前年比+12%)
- 純利益:345億ドル(前年比+46%)
- 1株利益(EPS):2.81ドル(市場予想2.01ドルを大幅超過)
- 営業利益率:34%
- Google Cloud収益:123億ドル(前年比+28%)
- 広告収益:669億ドル(前年比+8%)
- 有料サブスクリプション数:2億7,000万件超(YouTube Premium、Google One等)
- 株主還元:四半期配当を0.21ドルに引き上げ、自社株買い枠を700億ドルに設定
【2】AIとクラウドを軸とした成長戦略
Alphabetは生成AIを全社的に展開する戦略を鮮明にしている。Gemini 2.5の導入は、コーディング、数理推論、科学的応用などで従来モデルを凌駕する性能を実現しており、企業向けと開発者向けの採用が急拡大中である。
検索サービスでは「AI Overviews」が15億人以上の月間ユーザーに展開されており、従来の検索広告モデルの収益源を補完・進化させる役割を果たし始めている。
クラウド事業では、AIインフラ(TPUやNVIDIA H100など)の需要が急伸しており、Google Cloudの収益成長の柱となっている。特に生成AIソリューションやVertex AIの提供が競争優位を支えており、AWSやAzureとの市場競争において強力な追い風になっている。
さらに、2025年に予定されている設備投資額750億ドルの大部分が、AI関連のデータセンターや半導体インフラに充てられる予定であり、資本投資の集中は明確にAI分野へと向けられている。
【3】懸念要素と潜在リスク
業績は極めて好調である一方、以下のようなリスクが存在する。
- 規制強化の可能性:米司法省による検索と広告に関する独占禁止法訴訟が進行中で、今後の広告事業モデルへの修正を迫られる可能性がある。
- 地政学的リスク:米中対立により、特に中国企業からの広告需要が鈍化するリスクや、クラウド事業の国際展開に影響が及ぶ懸念がある。
- AI競争の激化:OpenAI、Perplexityなどの新興AI勢力との競争は短期的な収益化を困難にする要因となる可能性がある。
【4】ガイダンスと今後の展望(重点)
Alphabetは具体的な数値によるガイダンスを公表していないものの、以下の中期的展望を市場に示している。
AI分野
- Geminiシリーズを中核に据えたAIプラットフォーム戦略を推進。
- 検索、広告、YouTube、クラウドなど全サービス群へのAI統合を加速。
- モデル訓練および推論基盤への投資強化(専用チップTPUの刷新を含む)。
Google Cloud
- AIベースの企業向けサービス(BigQuery, Vertex AIなど)の需要増が収益ドライバーに。
- 特に製造、金融、ライフサイエンス、医療業界からの受注が拡大。
サブスクリプション事業
- YouTube PremiumやGoogle Oneなどの安定的な収益源が引き続き成長。
- コンテンツとストレージ機能の強化でユーザー単価の上昇を見込む。
設備投資・株主還元
- AIインフラ投資を通じた長期的な競争力強化。
- 自社株買いと増配を通じた投資家還元を継続。
【5】総括
Googleの2025年Q1決算は、生成AIを軸とした全社的な戦略が本格的に業績へ反映され始めたことを示している。広告・クラウド・サブスクの各領域がバランスよく伸びており、AI投資のリターンが今後加速度的に現れる可能性がある。
今後の課題は、AI分野のイノベーションをどれだけ迅速かつ安全に製品化・収益化できるか、そして規制や競合による障害をいかにマネージするかにかかっている。とはいえ、現時点では中長期成長シナリオの確度は高く、株主価値創出へのコミットメントも強いと評価できる。
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