1. 海水中の金の平均濃度と理論上の総量
海水にはごく微量ながら金が溶け込んでいます。その平均濃度はリットルあたり数ナノグラム(10^-9 g)程度とされています。例えば約10 ng/L(1リットルの海水中に約10ナノグラムの金)とすると、これは1 km³の海水あたり約0.01トン(≒10 kg)の金に相当します。地球上の海水総量は約1.38×10^9 km³(13.8億立方キロメートル)と非常に膨大です。この濃度で全海水を計算すると、理論上は最大で約1.4×10^7~2.0×10^7トン(数千万トン規模)の金を得ることができます。これは海水中に含まれる金をすべて抽出できた場合の 「総金量」 であり、非常に大きな値になります。
2. 技術的・経済的制約を踏まえた現実的な採取量
しかし、現実にこの金を取り出すのは極めて困難です。金の濃度が極端に低いため、わずかな金を得るために途方もない量の海水を処理する必要があります。例えば10 ng/Lという濃度では、1トンの金を回収するには約100 km³もの海水を完全に処理する必要があります。これは技術的にも経済的にも非現実的な規模です。現在稼働している世界中の海水淡水化プラントが1年間に処理する海水量(約30~40 km³)をすべて用いたとしても、理論上回収できる金は年間せいぜい数百kg程度に過ぎません。そのため、現行の技術で実際に採取できる金の量はごく僅かであり、事実上ゼロに近いと言えます。技術革新により吸着材などを大規模に展開できたとしても、経済的制約を考慮すると海水から得られる金の量は理論値のごく一部にとどまるでしょう。
3. 採取可能な金と採掘済み金の比較
以上で算出・評価した**(1)理論上の最大金量と(2)現実的に採取可能な金量を、現在までに全世界で採掘された金の総量(約20万トン**)と比較します。
- 理論上得られる総金量は数千万トンにも上り、これは既に採掘された20万トンと比べて桁違いに大きい値です。仮に約2000万トンとすれば、これは採掘済み金(20万トン)の100倍(= 10000%)にも相当します。つまり、海水中にはこれまで人類が地上で産出した金の数十~百倍もの膨大な金が含まれていることになります。
- 現実的に採取できる金量は、上記の通り技術・コストの制約から極めて少量です。仮に将来的に大規模技術を用いて数百~数千トン規模の金を海水から回収できたとしても、それは20万トンに対し**数%以下(例:1000トンで0.5%、数百トンなら0.1%未満)に過ぎません。現状の技術レベルでは実際の回収量はほぼ0%(皆無に等しい)**と言ってよく、採掘済みの金量に比べて無視できる割合です。
4. 結果のまとめ(数値と割合)
- 海水から得られる理論上の金総量: 約2000万トン(= 2×10^7トン)。これは、現在までに採掘された金約20万トンの**約100倍(≒10000%)**に相当します。
- 現実的に採取可能な金の量: ごく僅か(0に近い)。仮に数百トン程度を回収できたとしても、20万トンの0.1%以下(1/1000未満)に留まります。実際には経済的に見合う回収法がなく、**採取できる割合はほぼ0%**と言えるでしょう。
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