源泉控除対象配偶者とは

定義

所得税における「源泉控除対象配偶者」とは、給与所得者(その年の合計所得金額が900万円以下)の配偶者のうち、以下の要件を満たすものを指します。すなわち、所得者と生計を一にする配偶者で、当該年の配偶者自身の合計所得金額が95万円以下(給与所得のみの場合は給与収入150万円以下)である者です。ただし、青色事業専従者や白色事業専従者に該当する配偶者は含まれません。

所得制限・その他の適用要件

  • 所得者の所得要件: 納税者(給与所得者)の合計所得金額が900万円以下であること(給与収入のみの場合、収入金額が1,120万円以下)。これを超えると源泉控除対象配偶者の適用外となります。
  • 配偶者の所得要件: 配偶者のその年の合計所得金額が95万円以下であること。給与所得のみの場合は給与収入150万円以下が目安です(令和2年から95万円以下に緩和され、令和7年度税制改正では給与収入条件が160万円以下に引き上げ予定)。配偶者の所得には通常の給与所得や事業所得などが含まれますが、上場株式配当や利子などの源泉分離課税の所得や非課税所得は判定基準に含まれません。
  • 除外要件: 配偶者が青色事業専従者として給与を受け取る場合や白色事業専従者である場合は、この適用から除かれます。配偶者が給与所得者であっても、その給与が青色事業専従者給与などにあたるときは対象外です。

対象となる配偶者の条件(生計同一、年齢など)

  • 民法上の配偶者であること: 内縁関係や事実婚は含まれず、法律上の婚姻による配偶者であることが必要です。また、現在の民法では両性の婚姻最低年齢は18歳となっており、これに達していない場合はそもそも配偶者になれないため対象外です。
  • 生計を一にすること: 納税者と配偶者が同一生計であることが要件です。同居している必要はなく、たとえば単身赴任や別居でも生活費や教育費を共有・送金していれば同一生計とみなされます。
  • 同居・別居の取り扱い: 配偶者が別居中であっても、扶養状態(生活費の提供関係)が続いていれば適用可能です。ただし、生活費の送金がない場合や別世帯として独立生活している場合は同一生計とは認められません。

年末調整および扶養控除等申告書との関連

  • 年末調整では、給与所得者が扶養控除等申告書の**「源泉控除対象配偶者」欄**に該当配偶者の氏名・生年月日・個人番号・住所・その年の所得見積額を記入します。これにより、源泉徴収税額表の計算で扶養親族等の数に1人を加算し、毎月の源泉徴収税額を引き下げます。
  • 控除申告書の提出: 源泉控除対象配偶者がいる場合は必ず扶養控除等申告書を提出します(該当者がいない場合も「扶養控除がない」ことを確認するために提出が必要です)。扶養控除等申告書を提出しなければ、その従業員は源泉徴収税額表の「乙欄」扱いとなり税率が高くなります。
  • 配偶者控除の手続: 源泉控除対象配偶者欄への記載とともに、配偶者控除や配偶者特別控除を受けるには「給与所得者の配偶者控除等申告書」の提出も必要です。配偶者の所得が限度額以上の場合(給与収入150万円以上)には、扶養控除等申告書欄への記入は不要で、配偶者控除等申告書のみ提出します。
  • 複数収入源泉への対応: 複数の勤務先から給与がある場合、主たる給与と従たる給与の両方について扶養控除等申告書を提出できます。片方に源泉控除対象配偶者を記載することで、その支払者の税額計算に扶養が反映されます。

制度の趣旨と背景

  • 平成30年税制改正による導入: 本制度は平成29年度税制改正で配偶者控除制度の見直しとともに新設されました。従来、配偶者控除・特別控除の対象範囲が狭く、一部の共働き世帯ではほんの少し配偶者の所得が増えるだけで控除が大幅に減少する問題がありました。改正では配偶者の所得要件が大きく緩和され、扶養控除申告書に「源泉控除対象配偶者」の記載欄が設けられました。これにより、年末調整の時点で簡便に配偶者控除を適用できるようになり、多くの共働き家庭の負担軽減を図っています。
  • 制度の目的: 年末調整を通じて配偶者控除の適用を見込んだ源泉税額を毎月調整することで、給与所得者の税負担を平準化し確定申告不要で控除が受けられるようにすることが主な趣旨です。これによって納税事務が簡素化され、前年度の収入からおおよその年収を推定して控除を受けられます。

注意点・適用除外の例

  • 同居要件の誤解: 生計を一にするとは必ずしも同居を意味しません。別居していても生活費のやりとりがあれば同一生計とされるため、扶養状況が維持されているか確認が必要です。
  • 非居住者配偶者: 配偶者が日本に住所がなく、かつ1年以上国内に居所がない非居住者である場合でも、一定の要件を満たせば扶養控除を受けられます。ただし、この場合は扶養控除等申告書の非居住者欄に○を付け、戸籍の附票(配偶者の現住所を確認できる書類)や送金記録などの証明書類を添付する必要があります。
  • 年途中の異動: その年の途中で所得状況が変化し、配偶者が源泉控除対象配偶者に該当しなくなったり逆に該当することになった場合は、異動後の扶養控除等申告書を提出し直します。源泉徴収済みの税額は遡及できないため、年末調整で清算されます。
  • 共働き夫婦: 夫婦双方で源泉控除対象配偶者の適用を受けることはできません。どちらか一方が配偶者を扶養として申告する必要があります。
  • 高所得配偶者との併用: 配偶者の所得が95万円超133万円以下の場合は源泉控除対象配偶者にはなりませんが、配偶者特別控除の対象となります。その場合は源泉控除対象配偶者欄には記載せず、配偶者控除等申告書で申告します。

要点まとめ

  • 源泉控除対象配偶者は、給与所得者(所得900万円以下)と同一生計の配偶者で、その配偶者の所得が95万円以下(給与収入150万円以下)の場合に該当します。
  • 年末調整では、扶養控除等申告書の源泉控除対象配偶者欄に該当配偶者の情報を記載し、扶養親族等の数に加えることで源泉徴収税額を減らせます。配偶者控除の適用を受けるには、別途配偶者控除等申告書の提出も必要です。
  • この制度は平成30年度改正で導入され、共働き世帯の負担軽減と源泉徴収事務の簡素化が目的です。共働き夫婦で双方が適用できない点や、所得超過・非居住者の場合の手続きなどには注意が必要です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました