ロシアはウクライナ侵攻前に金準備を増強し、制裁でSWIFT(国際決済機関)から排除されるとルーブルを金と事実上連動させて通貨暴落を防いだ。この「金本位的」措置がルーブルの下支えに奏功した。
米中対立が避けられない中、中国も制裁リスクに備えて金購入を継続する可能性が高い。ロシアの教訓から金の戦略価値を認識し、外貨準備のドル依存低減と並行して金保有を拡大している。ただし経済規模やドル依存の現実から慎重論もあり、極端な金本位制ではなく漸進的かつバランス重視の金戦略を採る見通し。総合的に、中国は今後も静かに金備蓄を増やし「金融の要塞化」を図る公算が大きい。
中国は平時に公式に人民元を金にペッグしてはいないが、非常時には金連動策を発動しうる準備を進めている。ロシア同様に有事の通貨防衛手段として金を担保に使う可能性があり、そのため金準備を潤沢に蓄積している。また上海黄金取引所を通じて人民元で受け取った代金を金に交換可能な枠組みを整え、人民元と金の間接的連動を実現している。
インドも近年金準備を大幅に増やし、自国通貨ルピーの安定と信用強化を図っている。中国が覇権争いを見据えて金戦略を進めるのに対し、インドはリスク分散と安全策として金を積み増す点が特徴的である。インドはルピー建て貿易などデドル化を模索するが、対米関係も重視するため中国ほど急進的ではなく、金保有拡大も通貨覇権というより経済防衛の意味合いが強い。
よって、中国やインドの金戦略は、将来的なアジアにおける通貨秩序再編の一端となり得る。各国が金を増備することで自国通貨に事実上の金裏付けを持たせ、ドルへの依存を低減する動きが進む可能性が高い。完全な金本位制復活は現実的でないものの、金を重視した多極的通貨体制(例:金・資源バスケットによる決済通貨、金担保のデジタル通貨活用など)の芽が育ちつつある。ロシアの先例に学んだ中国、その中国に触発されるインドという構図は、アジア発の新たな金融秩序へ向けた胎動を示唆している。
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