はじめに
日本の総合商社5社(三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅)は、エネルギーから食品まで幅広い事業を手がけています。その中でも金やレアアース(希土類)といった貴金属・レアメタル資源への関与は、各社の資源ビジネス戦略の特徴を映し出す重要な要素です。近年は世界的にインフレ(通貨価値の低下)が進み、特に資源価格の高騰や円安傾向が商社の業績に大きく影響しています。一般にインフレ局面では実物資産の価値が上がりやすく、金価格の上昇や資源全般の高騰が見られます。そのため資源権益を多く持つ商社は業績追い風を受ける一方、インフレが長期化すれば調達コスト増や景気減速リスクも孕みます。本稿では、まず各社の貴金属・資源ビジネスの現状と直近の動向を整理し、続いて弁証法の枠組み(正・反・合)に沿って、インフレ環境下でどの商社の業績が伸びそうかを考察します。最後に議論を要約し結論を示します。
各社の資源・貴金属事業の現状と動向
まず5大商社それぞれについて、貴金属(例:金)やレアアースなど資源ビジネスへの関与度合いや収益構造の特徴を概観します。
- 三菱商事: 「資源の王者」とも称されるように、石炭・鉄鉱石・銅などの金属資源分野が収益の柱です【26†】。実際、同社は豪州や南米の炭鉱・銅山など世界トップクラスの資源権益ポートフォリオを保有し、原料炭や銅の生産で存在感があります。また、金やプラチナ等の貴金属やレアアースの取り扱いも行っておりmitsubishicorp.com、金属トレーディングを通じて需給を支えています。資源依存度は5社中トップクラスで、直近でも利益の約4割が資源セグメント(金属資源・エネルギー等)によるものですplus.onecareer.jp。最近の動きとして、三菱商事は米国アリゾナ州の未開発銅鉱山権益を約30%取得する大型投資を発表し、洋上風力や半導体向けに需要が高まる銅の安定供給体制を強化しています(※米「Copper World」プロジェクトへの約6億ドル出資)plus.onecareer.jp。同時に、将来を見据えAI・バイオ分野への500億円規模のCVC設立など非資源領域への投資にも乗り出しており、新旧両面で収益基盤を築こうとしていますplus.onecareer.jp。
- 三井物産: 三菱商事と並ぶ資源エキスパートで、鉄鉱石・原料炭・LNG(液化天然ガス)などエネルギー・鉱物資源分野に非常に強みがあります【26†】。同社の資源事業依存度も約40%と高くplus.onecareer.jp、オーストラリアや南米の鉱山権益を早くから獲得してきました。例えば豪州やブラジルの鉄鉱石鉱山や石炭鉱山に参画し、日本含む世界の製鉄会社へ安定供給しています。また近年は、EV(電気自動車)市場拡大を見据えたレアメタル戦略にも意欲を示しています。三井物産は「自動車・電子産業に不可欠なレアアース(希土類)やタングステン、リチウム等の有望案件に参画したい」と表明しており、銅・ニッケルなどの権益拡大と並行して希少金属の取扱量・権益拡大を目指していますjapanmetal.com。実際、2023年には過去最大となる約8000億円を投じて世界最大級埋蔵量を誇る豪州のローズリッジ鉄鉱石プロジェクト権益(40%)を取得すると発表するなどjp.reuters.com、資源分野で積極投資を続けています。一方で非資源ビジネスにもバランスよく注力しており、最近ではチリの建機リース・レンタカー企業を買収して鉱山向けサービス事業を強化するなど、資源と非資源の両輪で安定収益を図っていますplus.onecareer.jp。
- 伊藤忠商事: コンビニエンスストア(傘下にファミリーマート)や食品流通、繊維・機械など生活消費関連ビジネスを主力とする商社です。【26†】にもあるとおり「生活に近い会社」であり、非資源セクターに極めて強いことが特徴です。エネルギー権益も一部持つものの規模は小さく、資源事業が利益に占める比率は直近でわずか3%程度に過ぎませんplus.onecareer.jp。つまり収益の約97%は食料・日用品など非資源事業から生み出しており、資源価格の変動リスクに最も左右されにくい構造です。この堅実な基盤を背景に、伊藤忠は近年5社の中で安定した最高益更新を続けていますplus.onecareer.jp。また直近では、金融・サービス分野への進出にも力を入れており、たとえばセブン銀行への出資やタイの大手金融会社との提携を通じて個人金融ビジネスを強化するといった動きを見せていますplus.onecareer.jp。貴金属やレアメタル資源への直接的な関与は限定的ですが、それだけにインフレ下でも生活必需の領域で着実に収益を伸ばせる体質が光っています。
- 住友商事: 資源と非資源のバランス型と言える商社です【26†】。金属資源ではチリの銅事業やマダガスカルのニッケル生産(アンバトビー・プロジェクト)などに参画してきましたが、大型資源案件での減損(投資損失)も経験しています。実際、ニッケル事業では2024年3月期に約890億円もの減損処理を余儀なくされるなどtoyokeizai.net、過去10年で巨額の投資失敗が相次ぎました。この反省から、現在の住友商事は非資源ビジネスの伸長に活路を見出しています。収益構造を見ると、資源事業の利益貢献は1割強(直近で約13%)と5社中で下位でありplus.onecareer.jp、電力インフラ、リース・不動産、メディアなどストック型ビジネスが収益を支えています。例えば2024年度第1四半期は、不動産事業など非資源分野の好調により大幅な増益を達成しましたplus.onecareer.jp。貴金属については、住友商事は米アラスカ州のポゴ金鉱山に15%出資して金の権益を保有していた実績があります。しかし同鉱山は操業開始から10年以上経過して埋蔵資源の寿命が見えてきたことから、2018年に住友金属鉱山と共同で豪企業へ全権益を約290億円で売却していますbloomberg.co.jp。このように、住友商事は資源分野で慎重姿勢に転じており、「強みの掛け算」で非資源を加速する新戦略を掲げています(上野社長談)toyokeizai.net。もっとも銅をはじめ基礎資源需要は根強いため、権益保有自体は維持しつつ、リスク管理を徹底している状況です。
- 丸紅: 五大商社の中では食品・穀物など生活インフラ分野への注力が目立つ企業です。かつては油田開発など資源投資でも存在感がありましたが、2010年代半ばの資源市況悪化で多額の損失計上を経験したこともあり、現在はむしろ非資源事業で安定利益を稼ぐ戦略にシフトしています【26†】。資源事業の利益寄与は2割弱(約19%)と中程度でplus.onecareer.jp、残りの80%強は食料・農業、生活関連や金融事業などからの収益です。近年の取り組みとしては、アジアの調味料メーカーやアフリカの医薬品流通プラットフォームに相次いで出資し、新興国の食・医療分野での事業拡大を図っていますplus.onecareer.jp。一方で資源分野では、発電用燃料やレアメタル資源にも一定のプレゼンスがあります。例えば、丸紅はアフリカでのレアアース探索案件に情報提供するなど間接的に関与したことがありますし、豪州のアルミ精錬プロジェクト参加などの実績もあります。総じて丸紅は「資源よりも非資源主導で、長期的に高効率な利益構造」を目指す方針【26†】であり、インフレ下でも食料など実需分野の価格上昇メリットを享受する一方、資源高による追い風は三菱・三井ほど大きくはない構造です。
以上のように、5社それぞれ資源(特に貴金属やエネルギー)への依存度や事業ポートフォリオが大きく異なります。まとめると、三菱商事と三井物産は資源権益と海外収益が突出して大きく(資源依存度約40%)、一方で伊藤忠は非資源中心(資源依存度わずか数%)で安定収益型、住友商事と丸紅はその中間で資源と非資源をバランスする形ですplus.onecareer.jpplus.onecareer.jp。各社とも直近では資源高の恩恵と多角化戦略の両面で動いており、次章からはこの特徴を踏まえてインフレ局面での業績見通しを論じます。
正:インフレが資源ビジネスにもたらす追い風
インフレ(物価上昇・貨幣価値の下落)は**総合商社、とりわけ資源ビジネス主体の商社に強力な追い風(メリット)をもたらすという見方があります。以下、その肯定的側面(正)**を整理します。
まず、インフレ期にはコモディティ(商品)の価格が総じて上昇しやすく、実物資産である資源の価値が高騰します。典型的なのが金価格の上昇です。金は古来「インフレヘッジ(通貨価値目減りから資産を守る避難先)」とされ、実際に世界的なインフレ懸念が高まった2020年代前半には一時金相場が史上最高水準(1トロイオンス=2000ドル超)に達しました。これに伴い、金の現物や先物を扱う商社は在庫評価益やトレーディング収益が増える傾向にあります。また、金鉱山などの権益を持つ場合、採掘した金の販売価格が上がるため権益収入が直接増加します。前述の通り現在の5大商社で大規模な金鉱山権益を持つ企業はありませんが、三菱商事や三井物産は貴金属の売買事業を手掛けているため(金地金・プラチナ地金の取引など)インフレ下の金高騰による恩恵を一定程度享受し得ますmitsubishicorp.com。例えば、金価格が上昇局面では関連部門の利益が平時より拡大し、全社の収益底上げに寄与するでしょう。
金だけでなくレアアース(希土類)やレアメタルもインフレや需給逼迫で価値が上昇しやすい資源です。レアアースはハイブリッド車・EVのモーター用磁石や先端機器に不可欠で、中国が世界供給を寡占する戦略資源です。近年、脱炭素シフトや地政学リスクからレアアース確保競争が激化し、価格も乱高下しています。もしインフレが進み主要生産国でのコスト増や輸出規制が起これば、レアアース価格も高騰する可能性があります。そうした中、レアアースの安定供給源を持つ商社は戦略的に優位に立てます。例えば双日(※5大商社ではないものの)は豪州ライナス社のレアアース事業に出資し、日本向け希土類の供給枠を獲得しましたmeti.go.jpmeti.go.jp。同様に、三井物産は将来的に有望なレアアース・リチウム案件への参画意欲を示しておりjapanmetal.com、実現すればインフレ下でのレアアース価格上昇に伴い大きな利益を得られるでしょう。さらに、ニッケルや銅、リチウムといった電池・電気材料も需要超過で価格上昇基調にあります。総合商社はこれら新分野の希少金属にも投資を広げており、インフレがそれらの収益化を後押しすることが期待できます。
もう一つ重要な点は、日本の大手商社は収益の多くを海外事業から得ており、その計上通貨は米ドルなど外貨建てだということです。インフレに伴い日本銀行が緩和的な金融政策を続ける局面では円安が進行しやすく、結果として円換算での商社の利益額が膨らむ構造があります。実際、総合商社は外貨収益比率が高く資源権益も多いため、円安になると業績が押し上げられる傾向が明確です(過去10年でも円安時に商社利益が伸びています)。例えば2022年度は資源価格高騰と急激な円安が重なり、三菱商事と三井物産はいずれも純利益1兆円超えの過去最高益を記録しましたplus.onecareer.jpplus.onecareer.jp。このようにインフレ環境(=資源高&円安)は、資源資産を多く持つ商社に収益拡大の機会をもたらします。特に三井物産や三菱商事はインフレの追い風を直に受けやすく、業績が大きく伸びる可能性が高いと言えます。事実、資源市況が好調だったここ数年、両社は五大商社の純利益ランキングでトップの座を競い合う状況が続いてきましたplus.onecareer.jp。
以上を整理すると、インフレ=資源高・実物資産価値上昇という図式の下では、豊富な資源権益とトレーディング機能を持つ総合商社、とりわけ資源エクスポージャーの大きい三菱商事・三井物産が大きな恩恵を受けることになります。金やレアアースなど貴金属分野も含め、これらの資源価格上昇が高収益につながりやすい体質だからです。インフレ局面では両社の業績は他社より跳ね上がる余地が大きく、株式市場でも「資源インフレの勝ち組」として再評価されるでしょう。実際、著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが近年日本の商社株に着目し、5社すべてに出資する大型投資を行いましたが、その背景にはインフレ耐性が高くキャッシュフローに優れるビジネスモデルへの期待があるとされています。バフェット氏自身、「今後50年は商社株を保有し続ける」と長期保有の意向を示しておりplus.onecareer.jp、インフレを乗り越える価値創造力が商社にあるとの見方を強めています。
反:資源依存のリスクとインフレの負の側面
一方で、インフレ環境がすべての商社に無条件でプラスかと言えば、そうとも限りません。ここでは**否定的側面(反)**として、インフレ下で露呈しうるリスクや資源依存の弱点に目を向けます。
まず、インフレはコスト増加を招く点に留意が必要です。資源価格が上昇すると採掘コストやエネルギー・輸送費も高騰し、商社の資源開発プロジェクトではオペレーションコストの増大や投資負担の増加をもたらします。例えば油価や資機材価格の高騰でプラント建設費用が当初計画より膨らみ、採算が悪化するといったケースです。住友商事のマダガスカルニッケル事業(アンバトビー)では、ニッケル市況悪化とコスト超過が重なり何度も減損処理が発生しましたtoyokeizai.net。インフレで資源価格が上がっても、プロジェクト自体のコストも跳ね上がれば利益は伸び悩む可能性があります。また各国でインフレ抑制のため金利が上昇すれば、資源開発の調達資金コストも上昇し、新規投資にブレーキがかかる懸念もあります。極端なインフレは世界経済の停滞(スタグフレーション)を招き、資源需要の減退や価格急落をも引き起こしかねません。実際、2022年にピークに達した資源相場は、その後主要国の利上げや中国経済減速などで落ち着きを見せ、2023年度には三菱商事・三井物産の利益が前年から減少する結果となりましたplus.onecareer.jp。つまり、インフレによる資源高騰は永続的ではなく、その反動減や市況調整によって業績が乱高下するリスクが内在しています。
次に、資源依存度の高さゆえの業績変動の大きさもデメリットです。前述の通り、伊藤忠商事のように非資源中心のモデルは景気変動に強く安定成長しやすいのに対し、三菱商事・三井物産のような資源依存型は好況時に急騰・不況時に急落という振れ幅の大きい利益構造ですplus.onecareer.jp。現に、資源ブームに湧いた2022年には両社とも純利益1兆円超えの空前の利益水準でしたが、資源価格が平常化した2023年にはそれぞれ15~18%の減益となりplus.onecareer.jp、2024年度もさらなる減益予想が出ていますplus.onecareer.jp。一方で伊藤忠はコロナ禍でも堅調に利益を維持し、2024年度には過去最高益を更新して五大商社トップに躍り出る見通しとなりましたplus.onecareer.jp。この対照的な動きは、資源ビジネスへの依存度の違いがもたらしたものですplus.onecareer.jp。インフレ下で資源高の恩恵を享受できる企業は、裏を返せば資源安局面でダメージを受けやすい諸刃の剣とも言えます。ことに資源価格は地政学リスクや投機的な動きにも左右され予測困難なため、一時的なインフレによる“追い風”を過信するとその後の“向かい風”で痛手を被る恐れがあります。
また、インフレ対策として各国が輸出規制や課税強化に動くリスクもあります。資源ナショナリズムが高まれば、せっかく権益を保有しても現地政府に利益の多くを取り上げられる可能性があります(例:原油高局面で産油国が石油企業に特別課税するケース等)。こうした政治リスクは資源投資に常につきまとい、インフレで各国財政が悪化すればその危険性は増します。商社もリスクヘッジとして、権益保有から流通・加工ビジネスへのシフトを進めていますplus.onecareer.jp。実際、5社とも「資源依存からの脱却」を掲げておりplus.onecareer.jp、三菱商事は前述のようにスタートアップ投資、三井物産や丸紅も非資源の新規事業(カーリースや食品・医療分野)に注力し、住友商事も得意の不動産・インフラで利益を伸ばしていますplus.onecareer.jp。言い換えれば、各社とも資源一本足では将来の成長が危ういと認識しており、インフレによる一時的な資源バブルに依存しない経営を志向しているのです。
最後に、インフレ環境で問題となるのは消費者マインドの冷え込みです。生活必需品価格が上がれば購買力が低下し、消費関連ビジネスに逆風が吹きます。例えば伊藤忠商事傘下のコンビニや食品会社にとって、原材料高と消費者の節約志向は収益を圧迫しかねません。一方で資源高はエネルギー輸入国である日本経済全体にはマイナスでもあり、商社にとっても取引市場の縮小リスクとなります。資源高メリット組の三菱・三井にとっても、取引先の製造業がインフレで打撃を受ければ資源需要が減るジレンマがあります。したがってインフレは諸刃の剣であり、特に長期化すると経済全体の停滞を通じて商社ビジネスに負の影響を及ぼす懸念があるのです。
以上の反対論のポイントをまとめると、インフレで一時的に資源ビジネスが潤っても、コスト上昇・景気減速・市況変動リスクなどで持続的な利益拡大が阻害される可能性があります。また資源依存度が高いモデルは不安定であり、安定成長の面では非資源重視の商社に軍配が上がるという見方も成り立ちます。実際に伊藤忠商事の安定した最高益更新やplus.onecareer.jp、住友商事の非資源拡充戦略toyokeizai.netは、インフレ下でも堅実なビジネスモデルが勝機を握る可能性を示唆しています。
合:総合評価と有望な商社の展望
**正反両論を踏まえた統合的な見解(合)として、インフレ局面における商社各社の業績見通しを総合評価します。結論から言えば、短期的には資源リッチな商社ほど業績が伸長しやすいものの、長期的・持続的な成長には資源と非資源のバランス戦略が鍵となります。その観点で、インフレ環境下で最も業績が伸びそうな商社として浮上するのは、「資源分野での上昇気流を捉えつつ他分野でも収益基盤を持つ企業」**です。
具体的には、三井物産がその有力な候補と言えます。三井物産は前述の通り鉄鉱石・エネルギー・金属資源で突出した強みを持ち、インフレによる資源高の恩恵をダイレクトに享受できる体制です。現に足元の資源高局面では巨額の権益投資(豪州鉄鉱石など)を果敢に行い、将来の収益源を拡大しています。加えて、同社は近年資源分野でのROIC重視やリスク管理を徹底し【26†】、失敗案件を減らす努力も続けています。また非資源では機械インフラや化学品なども育成中で、完全にワンブックではない点が強みです。これらを総合すると、インフレ下で資源価格が上昇する間は三井物産の業績は大きく伸びる余地があり、たとえ市況調整局面が来ても一定の耐久力を備えていると評価できます。
三菱商事も同様に有望です。同社は資源収益の絶対額が最大規模であり、インフレ時のキャッシュ創出力はピカイチです。「資源の王者」の名にふさわしく、エネルギーから金属まで多彩なポートフォリオで利益を稼げます。もっとも資源偏重ゆえの振れ幅も大きいため、今後は非資源投資(デジタル・医療など)の成果が出てくれば、より安定感が増すでしょう。仮にインフレと資源高が長引けば、三菱商事は再び純利益トップの座に返り咲く可能性も高く、その成長ポテンシャルは見逃せません。
一方、伊藤忠商事はインフレ下でも堅調な業績拡大が見込まれますが、それは主に非資源ビジネスの価格転嫁力や海外展開力によるもので、劇的な伸び幅という点では資源ブームに乗る他社ほどではないかもしれません。とはいえ持続的には最も安定した成長が期待でき、インフレ耐性も高い企業です。「安定成長の雄」として着実に利益を積み上げるでしょう。
住友商事と丸紅については、資源高のメリットとデメリットを併せ持つ中間的ポジションです。インフレ初期にはエネルギー・金属価格上昇で一定の追い風がありますが、資源依存度が適度なぶん上振れも限定的です。ただし近年両社とも非資源の収益力を強化しており、たとえば住友商事は電力・不動産、丸紅は食料・農業分野で高収益案件を育てています。したがってインフレが沈静化した後も安定利益を確保できる点で、長期の視点では魅力があります。総じて、インフレ下の瞬発力は三菱・三井、持久力は伊藤忠、バランス型が住友・丸紅という構図が浮かび上がります。
最後に、インフレ局面における商社業績の行方は、インフレそのものの性質によっても左右されます。短期的なコストプッシュ型インフレなら資源高メリットが勝り、長期的な悪性インフレだと経済停滞のデメリットが勝るでしょう。しかしいずれにせよ、日本の総合商社は変化に対応する柔軟性と多角経営による耐久力を備えています。インフレという荒波を乗り切り、さらなる成長を遂げる可能性が高い企業群と言えるでしょう。
まとめ
インフレ(通貨価値の低下)局面における5大商社の業績見通しを、貴金属資源への関与状況を軸に考察しました。三菱商事と三井物産は金やレアアースを含む豊富な資源権益と外貨収益を背景に、インフレによる資源価格上昇・円安の追い風を直接受けて業績拡大が期待できることがわかりました。一方で、資源依存度が高いぶん市況変動による業績ブレも大きく、インフレ長期化に伴うコスト高騰や需要減退リスクには注意が必要です。対照的に伊藤忠商事は非資源ビジネス中心の安定モデルで、劇的な増益は望みにくいもののインフレ下でも堅調な成長を続けると予想されます。住友商事・丸紅は資源と非資源のバランス型として中程度の恩恵を受けつつ、他分野の伸長で補完し合う展開となるでしょう。
以上を踏まえ、インフレ環境下で特に業績が伸びそうな商社としては、資源高の果実を享受できる三井物産(および三菱商事)が筆頭に挙げられます。ただし長期的には非資源分野も含めた総合力が物を言うため、「攻め」の資源と「守り」の非資源を両立させる戦略が重要です。五大商社はいずれもそうした方向に舵を切っており、インフレという試練をバネに持続的な企業価値向上を目指していると言えるでしょう。インフレ下の収益拡大に期待がかかる一方で、各社が磨く総合力こそが真の強さであり、今後の商社業界の行方を左右するポイントとなりそうです。
引用
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/about/business-group/mineral-resources/五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)|総合商社の決算・年収・社風を徹底比較〖2025年最新〗|転職サイト〖ワンキャリア転職(旧 ONE CAREER PLUS)〗https://plus.onecareer.jp/articles/935五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)|総合商社の決算・年収・社風を徹底比較〖2025年最新〗|転職サイト〖ワンキャリア転職(旧 ONE CAREER PLUS)〗https://plus.onecareer.jp/articles/935五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)|総合商社の決算・年収・社風を徹底比較〖2025年最新〗|転職サイト〖ワンキャリア転職(旧 ONE CAREER PLUS)〗https://plus.onecareer.jp/articles/935五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)|総合商社の決算・年収・社風を徹底比較〖2025年最新〗|転職サイト〖ワンキャリア転職(旧 ONE CAREER PLUS)〗https://plus.onecareer.jp/articles/935三井物産、レアメタル扱い拡大へ 車産業向け品種に照準 | 鉄鋼・非鉄金属業界の専門紙「日刊産業新聞」https://www.japanmetal.com/news-h2013072337624.html三井物産、豪鉄鉱石事業の権益40%取得 計8000億円見込む – ロイターhttps://jp.reuters.com/markets/global-markets/JLQO2I273FP33BKEKJ7P22OTCE-2025-02-19/五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)|総合商社の決算・年収・社風を徹底比較〖2025年最新〗|転職サイト〖ワンキャリア転職(旧 ONE CAREER PLUS)〗https://plus.onecareer.jp/articles/935五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)|総合商社の決算・年収・社風を徹底比較〖2025年最新〗|転職サイト〖ワンキャリア転職(旧 ONE CAREER PLUS)〗https://plus.onecareer.jp/articles/935五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)|総合商社の決算・年収・社風を徹底比較〖2025年最新〗|転職サイト〖ワンキャリア転職(旧 ONE CAREER PLUS)〗https://plus.onecareer.jp/articles/935住商・上野社長「強みを掛け合わせ非資源を加速」 直近10年で巨額減損 …https://toyokeizai.net/articles/-/843183五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)|総合商社の決算・年収・社風を徹底比較〖2025年最新〗|転職サイト〖ワンキャリア転職(旧 ONE CAREER PLUS)〗https://plus.onecareer.jp/articles/935五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)|総合商社の決算・年収・社風を徹底比較〖2025年最新〗|転職サイト〖ワンキャリア転職(旧 ONE CAREER PLUS)〗https://plus.onecareer.jp/articles/935住友鉱、住友商:米アラスカ州の金鉱山を290億円で売却、豪企業に – Bloomberghttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-08-30/PE93DJ6TTDS001五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)|総合商社の決算・年収・社風を徹底比較〖2025年最新〗|転職サイト〖ワンキャリア転職(旧 ONE CAREER PLUS)〗https://plus.onecareer.jp/articles/935五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)|総合商社の決算・年収・社風を徹底比較〖2025年最新〗|転職サイト〖ワンキャリア転職(旧 ONE CAREER PLUS)〗https://plus.onecareer.jp/articles/935五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)|総合商社の決算・年収・社風を徹底比較〖2025年最新〗|転職サイト〖ワンキャリア転職(旧 ONE CAREER PLUS)〗https://plus.onecareer.jp/articles/935日本として初となるレアアース(重希土類)の権益を獲得します (METI/経済産業省)https://www.meti.go.jp/press/2022/03/20230307001/20230307001.html日本として初となるレアアース(重希土類)の権益を獲得します (METI/経済産業省)https://www.meti.go.jp/press/2022/03/20230307001/20230307001.html五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)|総合商社の決算・年収・社風を徹底比較〖2025年最新〗|転職サイト〖ワンキャリア転職(旧 ONE CAREER PLUS)〗https://plus.onecareer.jp/articles/935五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)|総合商社の決算・年収・社風を徹底比較〖2025年最新〗|転職サイト〖ワンキャリア転職(旧 ONE CAREER PLUS)〗https://plus.onecareer.jp/articles/935五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)|総合商社の決算・年収・社風を徹底比較〖2025年最新〗|転職サイト〖ワンキャリア転職(旧 ONE CAREER PLUS)〗https://plus.onecareer.jp/articles/935五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)|総合商社の決算・年収・社風を徹底比較〖2025年最新〗|転職サイト〖ワンキャリア転職(旧 ONE CAREER PLUS)〗https://plus.onecareer.jp/articles/935五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)|総合商社の決算・年収・社風を徹底比較〖2025年最新〗|転職サイト〖ワンキャリア転職(旧 ONE CAREER PLUS)〗https://plus.onecareer.jp/articles/935五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)|総合商社の決算・年収・社風を徹底比較〖2025年最新〗|転職サイト〖ワンキャリア転職(旧 ONE CAREER PLUS)〗https://plus.onecareer.jp/articles/935五大商社(三菱商事・三井物産・伊藤忠商事・住友商事・丸紅)|総合商社の決算・年収・社風を徹底比較〖2025年最新〗|転職サイト〖ワンキャリア転職(旧 ONE CAREER PLUS)〗https://plus.onecareer.jp/articles/935
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