米国投資よりも金投資に妙味があるか

政治経済

現在、S&P500のPER(株価収益率)が歴史的に見ても高水準にあり、米国株が割高と考えられる一方で、BRICS諸国が金の購入を加速している。この状況を踏まえ、米国株投資と金投資のどちらに優位性があるのか、弁証法的に検討する。


1. テーゼ(正):米国株は依然として魅力的な投資先である

(1) S&P500の割高感は米国の覇権の強さを示す

  • S&P500のPERが高水準であるのは、単なる過熱ではなく、米国の強い経済成長と企業収益の拡大を反映していると考えられる。
  • 米国は依然としてイノベーションの中心(AI、半導体、クラウド、医療)であり、企業の利益成長が続く限り、高いPERも正当化される。
  • 米国債市場の安定性とドル基軸通貨体制の維持により、世界の資本は引き続き米国市場に流入しており、株価の上昇要因となる。

(2) 企業収益の成長による高PERの持続可能性

  • 例えば、GAFAやNVIDIAのようなハイテク企業は営業利益率が高く、高成長が見込まれるため、PERが20〜30倍でも割高とは言い切れない。
  • AI革命や再生可能エネルギー投資の波が続く限り、S&P500企業の成長力は維持され、今後の株価上昇も期待できる。

(3) 金投資のデメリット

  • 金は配当を生まないため、長期的なリターンはS&P500よりも低くなる可能性がある。
  • ドル高が続けば、金価格は相対的に抑えられる。米国の金融引き締めが進む限り、金は短期的な投資先としては魅力に欠ける。

2. アンチテーゼ(反):米国株のリスクと金投資の魅力

(1) S&P500の割高はバブルの兆候

  • PERの上昇は、実体経済と乖離している可能性がある。2000年のITバブル崩壊や2008年の金融危機のように、過熱した市場は調整を迎えるリスクが高い。
  • インフレの高止まりと金利上昇リスク:FRBがインフレ抑制のために利上げを継続すれば、企業の借入コストが上昇し、株価の下落圧力が強まる。

(2) BRICSの金購入加速とドル覇権の揺らぎ

  • BRICS諸国(特に中国、ロシア、インド)が金購入を加速している背景には、ドル依存を減らし、国際貿易決済における独自の枠組みを構築しようとする動きがある。
  • 脱ドル化の進行
    • ロシア・中国の二国間貿易では人民元決済の比率が急増。
    • 中東諸国が石油取引でドル以外の通貨(人民元や金)を活用する動きも進んでいる。
    • 金を準備資産とする国が増えれば、金の価値が相対的に上昇し、投資妙味が増す。

(3) 金のリスクヘッジ資産としての魅力

  • 米国の財政赤字とドルの信頼性低下
    • 米国政府の財政赤字が拡大し続ける中、ドルの長期的な購買力が低下するリスクがある。
    • もし米国の債務上限問題が再燃すれば、米国債の信頼性が低下し、金の価格が上昇する可能性が高い。
  • 地政学リスクの高まり
    • 米中対立の激化、ウクライナ戦争の継続、中東情勢の不安定化など、地政学的リスクが高まる中、安全資産としての金の需要が増す。

3. ジンテーゼ(総合):金と米国株の適切なバランス

(1) 株式と金のポートフォリオ分散が有効

  • S&P500の高成長企業を一部保有しつつ、金をリスクヘッジとして組み込む
    • S&P500が長期的には成長を続ける可能性は高いが、短期的な調整リスクも無視できない。
    • 一方で、金は経済危機や地政学リスクのヘッジ資産として有効であり、BRICS諸国の動きを考慮すると中長期的な上昇要因がある。

(2) 米国覇権の持続性 vs. BRICSの挑戦

  • 米国が今後も覇権を維持できるか?
    • 軍事力、技術力、金融市場の影響力を考えれば、米国は今後も世界の中心であり続ける可能性が高い
    • ただし、ドル基軸通貨体制が徐々に変化すれば、金の価値が相対的に上昇する可能性もある。

(3) 戦略的な投資アプローチ

短期的には米国株の成長を享受しつつ、金を長期的なリスクヘッジ資産として組み込む

  • リスク許容度の高い投資家:S&P500の主要銘柄を中心に投資
  • リスク分散を考える投資家:S&P500と金(GLDや金鉱株)を組み合わせる
  • 金中心のポートフォリオを考える場合
    • BRICSの金購入の動向を注視し、金ETF(GLD)や実物資産への分散投資を進める
    • 地政学リスクが高まる局面では金の割合を増やす

結論

  • 米国株は依然として魅力的な投資対象であるが、高PERのリスクがある
  • BRICSの金購入加速は、脱ドル化の兆候であり、金価格の上昇要因となる
  • 短期的にはS&P500が強いが、長期的なリスクヘッジとして金の重要性が増す
  • したがって、「米国株 vs. 金」ではなく、「米国株+金」の戦略的バランスが鍵となる

✅ よって、弁証法的な視点から見ても、現状では金投資に妙味があり、資産ポートフォリオの中での比率を増やすべき局面にある。

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