逆イールド(Yield Curve Inversion)の定義
逆イールドとは、長期金利が短期金利を下回る状態のことを指します。通常、長期債(金利が高め)>短期債(金利が低め)となるのが自然ですが、これが逆転すると「逆イールド」となります。
例えば:
- 通常のイールドカーブ
- 2年国債:3.0%
- 10年国債:4.0%(→長期金利の方が高い)
- 逆イールド
- 2年国債:5.0%
- 10年国債:4.0%(→短期金利の方が高い)
逆イールドが発生する経済状況
逆イールドは景気後退のシグナルとされ、以下のような経済環境で発生します。
① 中央銀行の利上げ
- インフレ抑制のために**政策金利(短期金利)**を引き上げる
- その結果、短期債の金利が急上昇する
② 景気減速・リセッション懸念
- 景気減速が見込まれると、投資家は安全資産の長期債を買う
- 債券価格が上昇し、長期金利が低下する(需要増)
③ 長期的な低成長見通し
- 将来の景気後退を予想し、長期金利が低下
- 一方で、短期金利は中央銀行の利上げで上昇したまま
結果として、「短期金利>長期金利」となり、逆イールドが発生します。
逆イールドの意味と影響
逆イールドは、過去のデータでは景気後退(リセッション)の前兆とされることが多く、特に米国では高い予測精度を持っています。
過去の逆イールドと景気後退
逆イールド発生年 | 景気後退開始 |
---|---|
1989年 | 1990年 |
2000年 | 2001年 |
2006年 | 2008年(リーマン・ショック) |
2019年 | 2020年(コロナショック) |
影響
- 株式市場の下落
- 逆イールドが発生すると、投資家は景気後退を警戒
- 企業業績悪化の懸念から株価が下がる傾向
- 金融機関の収益悪化
- 銀行は通常、「短期で資金を調達し、長期で貸し付ける」ビジネスモデル
- 逆イールドになると「短期金利>長期金利」となり、利ざや(貸出金利-調達金利)が縮小
- 銀行の貸し渋りが発生し、景気がさらに悪化する可能性
- リスクオフの動き
- 投資家は「リスク資産(株式)」から「安全資産(国債・金)・現金」へシフト
- 特に**米国債(長期債)**の需要が高まる
逆イールドが続くとどうなるか?
- 逆イールドが「長期間続く」と、実際に景気後退が現実化する可能性が高まる
- ただし、逆イールドが発生した瞬間に不況になるわけではなく、1~2年のタイムラグがある
現在の逆イールド状況(2025年3月時点)
現在の経済状況(2025年3月時点):
米国では、2022年7月から続いていた2年債と10年債の逆イールドが、2024年9月初旬に解消されました。 これは、インフレ鈍化と雇用情勢の変化が背景にあります。 しかし、逆イールドの解消が即座に景気後退を意味するわけではなく、過去のデータでは解消後も一定期間のタイムラグを経て景気後退が発生するケースがあります。現在の米国経済は底堅さを維持しており、景気後退の明確な兆候は見られていません。
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