ユークリッド幾何学とは、古代ギリシャの数学者ユークリッド(Euclid, 紀元前300年頃)が『原論(Elements)』にまとめた幾何学体系のことです。これは、日常生活で馴染みのある平面図形や空間図形の性質を扱う幾何学であり、現在でも数学や物理学の基礎として重要視されています。
ユークリッド幾何学の特徴
1. 5つの公理(Postulates)
ユークリッド幾何学は、5つの基本的な公理(公準)に基づいています。
- 任意の2点を結ぶ直線を引ける。
- 有限な直線を無限に延長できる。
- 任意の点を中心とし、任意の半径で円を描ける。
- すべての直角は等しい。
- 1つの直線とその外の1点があるとき、その点を通り、もとの直線と交わらない直線は1本しかない。(平行線公準)
特に**「平行線公準」**(第5公準)は、のちに非ユークリッド幾何学の誕生に影響を与えました。
2. 基本的な定理
ユークリッド幾何学では、多くの定理が導かれました。代表的なものを紹介します。
① 三角形の内角の和
- 三角形の内角の和は必ず180°になる。
- これは、平行線公準に依存しているため、ユークリッド幾何学の特性といえます。
② ピタゴラスの定理
- 直角三角形において、斜辺の長さ² = 他の2辺の長さ²の和(a² + b² = c²)
- 例:32+42=523^2 + 4^2 = 5^2
③ 相似と合同
- 相似(三角形の角がすべて等しいとき、辺の比が一定)
- 合同(対応する辺の長さと角がすべて等しいとき)
- 例:三角比(sin, cos, tan)の基礎
④ 円に関する定理
- 円周角の定理:「円の円周上の角は、同じ弧に対して等しい」
- 接線の性質:「円の接線は、接点における半径と直交する」
ユークリッド幾何学の応用
1. 物理学
- 力学(ニュートン力学)では、空間をユークリッド幾何学に基づいて記述
- 運動の軌道計算、投影の計算
2. 建築・工学
- 建物の設計、構造計算
- 図面作成(CADソフト)
3. コンピュータ科学
- コンピュータグラフィックス(CG)
- 画像処理(2D/3Dの幾何変換)
ユークリッド幾何学と非ユークリッド幾何学の違い
ユークリッド幾何学は、「平面」のみを考える幾何学ですが、実際の宇宙空間や曲面の幾何学では成り立たない場合があります。
- 双曲幾何学(Hyperbolic Geometry)
- 平行線公準を否定(1点を通る平行線が無限に存在)
- 例:ロバチェフスキー、ボヤイが研究
- 球面幾何学(Spherical Geometry)
- 地球のような曲面上では、三角形の内角の和が180°を超える
- 例:ナビゲーション、地図作成
まとめ
ユークリッド幾何学は、日常生活の空間や建築設計などに適用される、最も基本的な幾何学体系です。しかし、現代の数学や物理学では、非ユークリッド幾何学の概念も重要視されています。
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