メカニカルターク(Mechanical Turk, MTurk) には、以下の2つの意味があります。
1. 歴史的な「メカニカルターク」(自動チェス人形)
概要
- 18世紀後半に登場した、自動でチェスを指す機械として有名。
- 1770年、オーストリアの発明家ヴォルフガング・フォン・ケンペレンが制作。
- 木製のトルコ人形が、盤上のチェス駒を動かし、実際に人間と対局できるように見せかけた。
実態
- 実は内部に人間が隠れて操作していたトリック装置だった。
- 操作するのは優秀なチェスプレイヤーで、隠し扉から中に入り、磁石や歯車を使って人形を動かした。
影響
- 当時は本当に自動で動いていると思われ、多くの著名人(ナポレオン・ボナパルト、ベンジャミン・フランクリンなど)が挑戦した。
- 後に「人間の労働を機械に見せかける」という象徴的な存在となった。
2. Amazonの「メカニカルターク」(クラウドソーシングサービス)
概要
- Amazonが2005年に開始したクラウドソーシングプラットフォーム。
- 企業や個人が、小さなタスク(HITs: Human Intelligence Tasks)を発注し、世界中のワーカー(Turkers)がそれを受注して報酬を得る仕組み。
特徴
- 機械では処理が難しい単純な作業(例:画像認識、データ入力、アンケート回答、音声文字起こしなど)を、多くの人間に分散して実行させる。
- 低コストで大量のデータ処理が可能。
問題点
- 低賃金(タスク単価が数セント~数ドル程度)
- 労働の透明性の問題(企業が労働力を搾取しやすい構造)
- 品質のばらつき(ワーカーのスキルに依存)
メカニカルタークの象徴的な意味
- 「人間の労働を隠して、機械がやっているように見せる」
- AIや機械学習の分野では、「人間がAIの手助けをしているが、それが見えないようになっている状態」を「メカニカルターク的な状況」と表現することもある。
例えば、AIが自動翻訳をしているように見えて、実際はバックエンドで人間が補助している場合、「メカニカルタークのようだ」と言われることがある。
まとめ
名称 | 内容 |
---|---|
歴史的なメカニカルターク | 18世紀の「自動チェス人形」。実は内部に人間が隠れて操作していた。 |
Amazon Mechanical Turk | クラウドソーシングサービス。人間が単純作業をオンラインで請け負う。 |
象徴的な意味 | 「機械のように見えて、実は人間が働いている」状況を指す。 |
この言葉は、人間の労働を見えにくくするシステム全般を指す象徴として、現代でも使われています。
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