【法人税法の法体系ツリー(図式)】
法人税法(法律)
├─ 第1章 総則(定義・適用対象)
│ └─ 内国法人、外国法人、事業年度、益金・損金 等
├─ 第2章 課税所得の計算
│ ├─ 益金の額(売上等)
│ ├─ 損金の額(仕入・経費等)
│ ├─ 損金不算入項目(寄附金・交際費等)
│ ├─ 減価償却・引当金・貸倒・繰延資産
│ ├─ 欠損金の繰越・繰戻し
│ └─ 租税公課の取扱い
├─ 第3章 申告・納付・還付
│ ├─ 確定申告
│ ├─ 中間申告・予定納税
│ ├─ 修正申告、更正の請求
│ └─ 延滞税・加算税
├─ 第4章 連結納税制度(グループ法人税制含む)
├─ 第5章 外国法人課税
│ ├─ 国内源泉所得
│ └─ 恒久的施設(PE)課税
└─ 第6章 雑則・罰則等
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関連法令・通達(実務に不可欠)
├─ 法人税法施行令(政令:内閣)
├─ 法人税法施行規則(省令:財務省)
├─ 法人税基本通達(国税庁:解釈指針)
├─ 租税特別措置法(措法:特例税制)
└─ 会計基準(税効果会計との調整)
【ポイント】
- 条文は大まかに「定義 → 所得の計算 → 納付手続」の順
- 施行令・通達は条文を補完するルールブック
- 措置法(租特)は実効税率や優遇措置を左右するので、実務では法人税法以上に重要な場合も多いです
「措令(それい)」とは、正式には 「租税特別措置法施行令」 の略称で、以下のような位置づけを持ちます。
【措令とは】
1. 正式名称
租税特別措置法施行令(そぜいとくべつそちほうせいこうれい)
2. 目的と役割
「租税特別措置法(措法)」の実施を補完・具体化する政令であり、内容は次のようなものです:
- 租税特別措置の適用要件
- 計算方法の詳細
- 書類の提出方法、様式の指定
- 各種控除・軽減措置の適用に必要な細かな条件
3. 制定主体
内閣が定める「政令」としての法的効力を持ちます。つまり、国会ではなく行政(政府)が発行します。
【法体系の位置づけ】
法律:租税特別措置法(措法)
└─ 政令:租税特別措置法施行令(措令) ← 今ここ
└─ 省令:租税特別措置法施行規則(措規)
└─ 通達(国税庁長官などの解釈指針)
【例:中小企業投資促進税制の場合】
- 措法:中小企業が一定設備を取得した場合、特別償却や税額控除を認めると規定
- 措令:その「一定設備」の定義や、取得日の判定方法を定める
- 措規:申告書への記載方法や添付書類の内容などを定める
- 通達:各条文の運用や、例外ケースの扱いを現場レベルで解説
【まとめ】
項目 | 内容 |
---|---|
名称 | 租税特別措置法施行令(措令) |
性質 | 政令(内閣が定める) |
関連法令 | 租税特別措置法(措法)の補足 |
主な内容 | 要件の詳細・計算式・添付書類の規定など |
実務での役割 | 優遇税制を正しく使うために不可欠 |
承具体例として**「中小企業経営強化税制」**における「措法」と「措令」の関係を解説します。
【例】中小企業経営強化税制
中小企業が生産性を高める機械設備等を導入した場合、特別償却または税額控除が認められる制度です。
① 法律(措法):租税特別措置法第42条の12の2
- 「中小企業者等が、経営力向上設備等を取得して事業に供したときは、特別償却または税額控除を適用できる」と定める
- ただし、**「政令で定める要件」**を満たす必要があると規定
② 政令(措令):租税特別措置法施行令第27条の13
ここで具体的に、次のような要件が規定されます:
■ 対象資産の具体的内容(設備の種類)
- 機械装置(160万円以上)
- 測定工具および検査工具(30万円以上)
- 器具備品(30万円以上)
- 建物附属設備(60万円以上)
■ 「経営力向上計画」の認定を受ける必要あり
- 所管大臣から事前に認定を受けること
- 計画に基づいて取得すること
■ 取得日・供用開始日などの判定基準
- 「取得の日」=引渡しの日
- 「事業の用に供した日」=稼働・使用開始日
③ 省令(措規)や通達による補足
■ 租税特別措置法施行規則(財務省令)
- 申告書に添付する書類の様式や記載方法を定める
■ 通達(国税庁)
- 対象資産の判定基準や、認定計画の遅延時の対応
- 例外的に適用できないケースなどをQ&A形式で解説
【まとめ図】
租税特別措置法(措法)第42条の12の2 ← 法律:優遇措置の基本ルール
└─ 措令 第27条の13 ← 政令:対象設備や金額要件などの詳細
└─ 措規(施行規則) ← 申告方法や書類の様式
└─ 通達 ← 実務での運用解釈や例外的対応
【実務での使い方】
中小企業がこの制度を使う場合、以下の順に確認します:
- 措法:どんな税制優遇か?
- 措令:対象設備や要件は何か?
- 措規:申告書類はどう書くのか?
- 通達:例外・注意点は?
承知しました。次は企業での活用が特に多いもう一つの代表例として、研究開発税制(租税特別措置法第10条の2ほか)における措法・措令・通達の体系を解説します。
【例】研究開発税制(R&D税制)
研究開発活動に係る試験研究費の一定割合を法人税から控除できる制度で、多くの大企業・中堅企業が活用しています。
① 法律:租税特別措置法(措法)第10条の2 など
- 内容:国内外での**試験研究費の額の一部(最大25%)**を法人税額から控除できると規定
- 対象法人:青色申告法人であること
- 控除率や上限の規定は「政令で定める」として措令に委任
② 政令:租税特別措置法施行令(措令)第5条の2 など
措法の実施に必要な細かい計算方法や定義を規定しています。
■ 控除対象となる「試験研究費」の定義
- 新製品や新技術の開発に関わる人件費、原材料費、委託費など
- ただし、通常の業務上の改良や品質改善は除外
■ 控除額の計算式(3段階)
- 基本部分:当期の研究費の総額に基づく控除(6~14%)
- 増加割合加算:前年度より増えた額がある場合、追加控除(上乗せ)
- 高水準型:研究費が売上の10%以上ある場合、さらに控除率アップ
■ 控除上限
- 法人税額の25%(または40%)が上限
③ 省令(措規)・通達
- 施行規則では、具体的な書類様式(例えば別表六(九)など)を定める
- 国税庁通達では、**「何が研究開発に該当するのか」**や、 **「委託研究・共同研究の場合の取扱い」**などを詳細に解説
【まとめ図】
租税特別措置法(措法)第10条の2 ← 法律:税額控除の根拠
└─ 措令 第5条の2 ← 政令:対象費用・控除計算方法などの詳細
└─ 措規 ← 書類様式、申告手続の定め(省令)
└─ 通達 ← 実務指針(Q&A方式、判例的な事例含む)
【実務での適用フロー】
- 研究費の内容確認:人件費、委託費、材料費などが該当するか?
- 措令に基づく計算:控除率の適用、上限の確認
- 申告書作成:別表六(九)などの様式に従い作成
- 証拠書類の保存:試験研究費であることを証明できる契約書・明細書
【応用的な論点】
- 海外研究費(外国法人への委託)の扱い
- 経済産業省からの**「特別認定(オープンイノベーション型)」**の取得による追加控除
- 税額控除 vs 特別償却の選択
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