PCE(個人消費支出物価指数)とCPI(消費者物価指数)は、どちらも物価上昇率(インフレ)を測定する指標ですが、以下のような違いがあります。
① 対象範囲の違い
項目 | CPI(消費者物価指数) | PCE(個人消費支出物価指数) |
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対象 | 消費者が実際に購入した商品・サービスの「固定されたバスケット」を基準にする | 個人が実際に購入した商品・サービスの範囲をより広く柔軟に扱う |
価格範囲 | 主に消費者が直接支払う小売価格 | 消費者が支払う小売価格に加え、医療費のように保険や政府が負担するコストも含む |
② 算出方法の違い
項目 | CPI | PCE |
---|---|---|
重み付け | 2年ごとに更新する固定バスケット方式(ラスパイレス指数) | 毎月変動する消費構成を用いる柔軟な方式(フィッシャー指数) |
柔軟性 | 固定された品目構成のため、消費行動の変化を反映しにくい | 消費行動の変化や代替品の利用などを迅速に反映 |
③ 調査機関の違い
- CPI:米国労働省 労働統計局(BLS:Bureau of Labor Statistics)
- PCE:米国商務省 経済分析局(BEA:Bureau of Economic Analysis)
④ FRB(連邦準備制度理事会)が重視するのは「PCE」
米連邦準備制度理事会(FRB)は、金融政策の指標として、より広範で柔軟に消費行動の変化を反映する PCE物価指数(特にコアPCE) を主に採用しています。
実務上の使い分け
項目 | 主な用途 |
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CPI | 一般消費者が感じる実感に近い指標(家計目線) |
PCE | 政府やFRBがマクロ経済政策を決定する際の重要指標(政策目線) |
実際の数値例(2025年3月現在)
- CPI:前年比 +3.2%
- PCE:前年比 +2.9%
一般的にPCEはCPIよりも若干低い数値となる傾向があります。これはPCEが消費者の代替行動や価格変動をより柔軟に取り入れるためです。
結論としてのポイント
- CPI:一般消費者にとっての「実感インフレ」
- PCE:政策決定者にとっての「政策インフレ」
経済政策や投資の観点では、FRBが政策判断の基準としている PCE(特にコアPCE) を注視することが重要です。
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