パランティア・テクノロジーズ 2025年Q1決算 詳細解説

総売上高と前年同期比成長率

  • 売上高: 8億8390万ドル(前年同期比 +39%)と大幅な増収となりました。市場予想(約8億6300万ドル)を上回る結果で、過去数四半期の中でも加速した成長率を示しています。
  • 米国売上高: 6億2800万ドル(+55%)と全社を牽引しました。米国市場だけで売上の約7割を占めており、前年から飛躍的な伸びを記録しています。一方、米国以外の売上は約2億5600万ドル(+約11%)にとどまり、成長の大半が米国市場によるものです。

純利益・営業利益の動向

  • GAAP営業利益(営業損益): 1億7600万ドルの黒字(営業利益率20%)を計上しました。前年同期はGAAPベースでほぼ収支トントンでしたが、本四半期は二桁の営業利益率を確保し、大幅な増益となっています。
  • 調整後営業利益: 3億9100万ドル(営業利益率44%)と高い水準に達しました。株式報酬費用等を除いた非GAAPベースでは前年同期から大きく利益率が改善し、「Rule of 40」(成長率+利益率)の指標は83%に到達しています(ソフトウェア企業で40%以上が健全とされる中、突出した水準です)。
  • 純利益(当期利益): 2億1400万ドル(希薄化後1株当たり利益 $0.08)を計上しました。前年同期(数千万ドル規模、EPS約$0.01程度)から大幅に増加しており、2023年から継続してGAAPベースの黒字を維持・拡大しています。

セグメント別売上の推移(商業部門 vs 政府部門)

商業部門政府部門の双方で力強い成長を遂げており、特に米国市場の寄与が顕著です。

  • 商業部門売上(全世界): 約3億6600万ドル(前年同期比 +約50%)に達しました。企業向けソフト事業が急拡大しており、売上構成比でも全体の約41%を占めるまでになっています。中でも米国商業部門は2億5500万ドル(+71%)と爆発的な伸びを記録し、年間換算で10億ドル規模の事業に成長しました。この米国商用の大躍進が、全社商業売上の伸びを牽引しています。
  • 政府部門売上(全世界): 約5億1800万ドル(+約30%)と引き続き堅調に拡大しました。米国政府部門は3億7300万ドル(+45%)と高い成長率を維持し、防衛・官公庁向け需要の底堅さを示しています。一方で米国以外の政府売上の伸びは比較的穏やかで、政府事業においても米国市場が成長を牽引する構図です。

AIプラットフォーム(AIP)の進捗と収益インパクト

  • AIP需要の高まり: パランティアの新製品であるAIプラットフォーム(AIP)は、Q1における業績好調の大きな原動力となりました。経営陣は「我々のソフトウェア採用は今まさに地殻変動の只中にあり、特に米国企業での需要が急増している」と述べており、実際に米国商業部門の+71%成長には生成AIニーズによるAIP導入が大きく寄与しています。AIPは既存顧客の追加契約や新規顧客の獲得を促進し、同社の**新規契約総額(TCV)は米国商用部門だけで8億1000万ドル(前年同期比+183%)**という過去最高を記録しました。これは多数の企業が生成AIを実業務に取り入れるための基盤としてPalantirのAIPを選択していることを示します。
  • 製品面での強化: パランティアはAIPを「AI時代の現代企業のオペレーティングシステム」と位置付けており、その機能強化にも注力しています。2025年Q1にはイーロン・マスク氏の創設したxAI社の最新大規模言語モデル「Grok-2」および画像認識モデル「Grok-2 Vision」をAIPに統合し、自然言語処理やコンピュータビジョン分野の能力を一層拡充しました。また、機械学習モデルの学習過程を追跡・可視化・比較できる新API(Model Experiments API)を公開し、既存の業務ワークフロー上でAIモデルを容易に最適化できるようにするなど、開発者支援ツールも強化しています。さらにDatabricks社との戦略的提携を発表し、自社のAIプラットフォーム(AI OS)とDatabricksのデータ基盤を組み合わせたソリューション提供を進める計画です。
  • 導入事例と今後: AIPは発表から間もない製品であるものの、大企業での試験・導入が進みつつあります。例えば米大手ドラッグストア企業のWalgreensでは、Palantir FoundryとAIPを活用し約4,000店舗で在庫管理や発注などの業務を自動化、従来人手では処理しきれない莫大な意思決定をAIエージェントで実行することに成功しています。このようにAIPは顧客に大きな価値をもたらし始めており、Palantir側も「我々のソフトウェアを使えば顧客は支払額以上の価値を確実に得られ、その価値の一部を当社と分かち合う形でビジネスが成立している」と自信を示しています。今後もAIP関連の開発とトップクラスのAI人材採用に積極投資する方針ですが、それでも十分な収益成長とGAAP黒字を両立できると強調しています。

今後のガイダンスと市場予想との比較

  • 2025年Q2ガイダンス: 売上高は9億3400万~9億3800万ドルと予測され、前年同期比で約**+35%**の成長見通しです。これは市場コンセンサス(約8億9900万ドル)を上回る水準で、「強気」なガイダンスと受け止められました。また、2025年Q2の調整後営業利益は4億0100万~4億0500万ドルが見込まれ、引き続き高い利益水準を維持する計画です。
  • 2025年通期ガイダンス: 今回の好調な四半期を受けて、パランティアは通年業績見通しを上方修正しました。通期売上高は**38億90~39億02百万ドル(前年比+36%)とされ、従来予想の37億40~37億50百万ドル(+30%程度)から大きく引き上げられました。特に米国商業部門の通期売上は前年から+68%**増の11億78百万ドル超になる見通しで、今後も米国におけるAI需要が全社の高成長を牽引するとの自信を示しています。利益面のガイダンスも強く、通期の調整後営業利益は17億11~17億23百万ドル、調整後フリーキャッシュフローも16~18億ドルと豊富な資金創出を見込んでいます。これらはいずれも市場予想を上回る水準であり、経営陣は「我々は今年、収益成長率と利益率の合計(Rule of 40)で80%以上を達成できる軌道に乗っている」と発言するなど、2025年の業績に自信をのぞかせました。

株価・アナリストの反応

  • 株価の動き: 発表された決算内容自体は売上・利益ともに市場予想を上回りガイダンスも上方修正とポジティブサプライズでしたが、発表直後の株価は急落しました。決算翌日の時間外取引でパランティア株は前日比で約8%下落し、発表前の通常取引時間中もやや売られる展開となりました。この下落は、市場が決算前に相当程度織り込んでいたことや、短期的な利益確定売り(いわゆる「材料出尽くし」)によるものと考えられます。同社株価は2024年後半からAIブームを背景に急騰し、過去1年間で数倍に上昇、2025年に入ってからも決算前までに60%以上の上昇を見せていたため、好決算にもかかわらず**「噂で買って事実で売る」**動きが出た格好です。
  • 市場・専門家の受け止め: 決算発表後の市場の反応は一時的に売り優勢となったものの、アナリストや投資家の多くは中長期的な成長期待を維持しています。決算を受けて「生成AI関連ビジネスの爆発的成長と収益性改善を高く評価」し、目標株価の引き上げや強気判断を継続するレポートも見られました。特に、飛躍的な米国商業部門の伸びや高いフリーキャッシュフロー創出、連続してGAAP黒字を達成している点はポジティブに捉えられています。一方で一部には、株価バリュエーションの高さ(発表時点でPER数百倍に達する水準)や米国以外での成長が相対的に鈍い点を懸念材料として指摘する声もあります。しかし総じて、今回のQ1決算はパランティアが提供する**「AI時代の基盤ソフトウェア」としての価値を裏付ける内容**であり、市場は今後の四半期においても高成長・高利益が続くか注視しつつも、同社が引き続きAI分野を牽引する存在であるとの見方を崩していません。

以下が、パランティア・テクノロジーズの2025年第1四半期(Q1)決算の要約です:


✅ 売上・利益

  • 売上高:8.84億ドル(前年同期比+39%)、市場予想超え
  • 純利益:2.14億ドル(GAAPベース黒字継続)
  • 調整後営業利益率:44%、”Rule of 40″ 指標で83%と極めて高収益体質

✅ 事業別動向

  • 米国商業部門:2.55億ドル(+71%)と急成長。AIプラットフォーム(AIP)導入が牽引
  • 政府部門:5.18億ドル(+30%)、特に米国政府との取引が堅調

✅ AIプラットフォーム(AIP)の影響

  • 生成AI(Grok-2等)との連携進む
  • 新規契約額は米国商業部門で前年比+183%と爆発的成長
  • 大手企業での導入事例も進行(例:Walgreens)

✅ ガイダンス(見通し)

  • Q2売上予想:9.34~9.38億ドル(+35%)
  • 通期見通し:売上+36%へ上方修正、営業利益・キャッシュフローも高水準を維持

✅ 株価と市場反応

  • 決算発表後は短期的に株価下落(材料出尽くし)
  • ただし内容自体は「過去最高の好決算」で、中長期では成長期待維持との見方多数

🧠 総評

パランティアは生成AIと米国商用ビジネスの爆発的拡大により、売上・利益ともに記録的な成長を実現。高収益体質を維持しつつ、「AI時代のOS」としての地位を確立しつつあることが、今回の決算から明確に示されました。


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