2025年4月のTSMC収益レポート詳細分析

2025年4月の売上:前月および前年同月との比較

TSMC(台湾積体電路製造)は2025年4月の連結売上高が約NT$3,495.7億(約115.5億米ドル)に達し、前月(3月)比で+22.2%、前年同月(2024年4月)比で+48.1%という大幅な増収となりました。3月の売上高(約NT$2,859.6億)も当時過去最高でしたが、4月はそれを更に上回る記録的水準となっています。これほどの増収要因として、AI関連需要の急拡大が大きく寄与しています。実際、同社は3月までの好調な売上について「人工知能(AI)技術向けの強い需要」が主因とコメントしており、4月も引き続き高性能コンピューティングやAI向け先端チップの受注増が売上を押し上げたと考えられます。また前年2024年4月の売上が半導体市況低迷期で比較的低水準だったことも、前年同月比+48.1%という異例の伸び幅に現れています。

2025年1月~4月の累計売上と前年同期との比較

2025年1月から4月までの累計売上高はNT$1兆1,888.2億となり、前年同期(2024年1~4月)の約NT$8,286億と比べて+43.5%の大幅増となりました。この4か月間で前年より約NT$3,600億もの増収を達成しており、TSMCは2025年を非常に強いスタートで迎えています。特に2025年第1四半期(1~3月)はNT$8,392.5億で前年同期比+41.6%増と好調であり、4月単月の加速により累計の増収率はさらに拡大しました。この傾向は下表および図1のとおりで、2025年の月次売上は各月とも前年を大幅に上回っています。

図1:TSMCの2024年と2025年における月次売上高(1~4月)比較。2025年は全ての月で前年同月を上回り、特に4月の売上高が突出して高い。2月は両年とも営業日数減少による一時的な売上低下が見られる。2025年4月はNT$3,495.7億と、2024年4月(約NT$2,360億)の約1.5倍に達している。

月次増加率(前月比・前年同月比)の推移と分析

2025年初頭からの売上増加率を月次で見ると、前年同月比(Y-o-Y)は1月+35.9%、2月+43.1%、3月+46.5%、4月+48.1%と推移しており、40%超の高成長が続く中で徐々に伸び率が拡大する傾向が見られます。これらはいずれも非常に高い伸び率で、半導体需要の強さと前年初頭の低調さ(比較的低いベース)を反映しています。一方、前月比(M-o-M)の増減を見ると変動があり、12月から1月は+5.4%と微増、1月から2月は-11.3%と減少、2月から3月は+10.0%の増加、3月から4月は+22.2%の大幅増となりました。2月の前月比マイナスは祝日(旧正月)による営業日減や1月下旬の地震の影響で一時的に生産が落ちたことが要因で、特殊要因を除けば基調として売上は拡大を続けています。特に4月は前月比でも+22%という異例の急伸を示しており、季節要因を越えた受注/出荷の急増があったことを示唆します。

図2:2025年1~4月の月次増加率の推移(前年同月比=黄色線、前月比=オレンジ線)。前年同月比は1月の+35.9%から4月の+48.1%へと一貫して上昇している。前月比は2月に-11.3%と落ち込んだ後、3月に+10.0%、4月に+22.2%と急回復・加速した。2月の減少は季節要因によるものであり、4月の異例な前月比プラスは需要の急拡大を反映した結果と考えられる。

増加率の推移に特段の異常値はなく、2月の減少は想定内の季節要因です。一方で3月・4月の前年比+46~48%という伸びはTSMCの近年の実績でも際立って高く、極めて力強い成長局面にあることがわかります。

将来の業績見通しと影響要因

今後の業績見通しに影響を与える要因として、まず季節性が挙げられます。一般的にTSMCの売上は上期より下期にかけて(特にスマートフォン新製品向け生産が本格化する夏~秋に)伸びる傾向があります。ただし2025年については、年初からAI関連を中心とした需要が非常に旺盛であったため、従来の季節パターン以上の伸びが既に実現しています。市場環境としては地政学リスクと政策要因にも注意が必要です。米国による対中輸出規制や関税措置の可能性といった逆風が指摘されていますが、TSMC経営陣は現時点で「顧客行動の変化は見られない」とし、これらリスクを注視しつつも年間計画は据え置いています。実際、TSMCは2025年通年で売上高が前年比+20~30%増の中間程度(約25%増)になるとの見通しを示しており、AIチップ関連売上は前年比2倍に達するとの強気の予測も立てています。これは、現在の製品需要を牽引するAI・HPC分野が今後も成長を続けるとの判断によるものです。一方で、スマートフォンやPC向けなど他分野の需要動向や在庫調整局面にも留意が必要でしょう。総じて、AI需要の高まりが当面はTSMCの業績を力強く支える見通しですが、前年同期比40~50%増という異例の成長率は徐々に平常化していく可能性があります。もっとも同社は2025年第2四半期も前年同期比+36~40%増と引き続き大幅な増収を見込んでおり、少なくとも今年後半までは高水準の業績が続くものと予想されます。以上の要因を踏まえると、季節的な出荷増に加えてAI・先端チップ需要の波に乗った2025年のTSMCは、多少の増減はあれど年間を通じて堅調な成長軌道を維持する可能性が高いと言えます。

参考文献・情報源:TSMC公式プレスリリース、Focus Taiwan報道、Reuters通信ほか。

以下は、TSMCの2025年4月収益レポートの要約です:

  • 2025年4月売上高 は約3,495.7億台湾ドルで、前月比22.2%、前年同月比48.1%増と大幅に成長した。特にAIや高性能コンピューティング向け半導体の需要増が要因である。
  • 2025年1~4月累計売上高 は1兆1,888.2億台湾ドルで、前年同期比43.5%増加。AI関連需要が前年に比べ著しく伸びたことによる。
  • 月次増加率の推移 は、前年同月比で1月から4月まで一貫して高い成長(+35.9%→+48.1%)を示した。前月比では2月の季節的な落ち込みを除き、3月・4月は順調に増加し、特に4月の前月比22.2%増は需要拡大を示唆する。
  • 今後の業績予測 として、2025年はAI需要の強さから年間で前年比25%前後の売上成長を見込んでいる。ただし、高すぎる前年同月比(40~50%増)は徐々に正常化すると予想されるが、少なくとも年内は好調が続く見通し。

全体として、AI需要の急増がTSMCの成長を支える重要な原動力である。

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