関税率10%は自由貿易と見なされるか?

経済学的な定義

経済学の観点では、自由貿易とは政府が輸出入にほとんど介入せず、輸入関税や数量制限などの障壁が撤廃または極めて低い状態を指します。したがって、輸入品に一律10%の関税が課されている状況は、商品の価格に10%上乗せする明確な障壁が存在することになり、厳密には自由貿易とは言えません。10%という関税率は中程度に見えるかもしれませんが、市場の効率から見ると依然として保護貿易的な要素が残っており、真の意味で「自由」な貿易とは呼べない水準です。

国際貿易制度上の基準

**WTO(世界貿易機関)の枠組みでは、加盟国は関税の引き下げや撤廃を進めますが、必ずしも全ての関税がゼロになるわけではありません。WTO加盟国でも平均関税率が10%前後の国は存在しており、これは規則上許容されています。ただし、より自由な貿易を目指す枠組みとして自由貿易協定(FTA)**があります。FTAでは加盟国間の関税撤廃が原則であり、多くの場合、協定発効後の移行期間を経てほぼ全ての品目で関税をゼロにします(WTO規定でも「貿易の実質的すべて」を自由化することが求められます)。つまり、FTAの文脈では10%の関税を残すことは例外的であり、基本的には関税ゼロが「自由貿易」の基準と考えられます。

現実の政策事例

現実の政策例を見ると、関税率10%は自由貿易とはみなされないことが分かります。歴史的には、19世紀後半から自由貿易を推進していたイギリスが1932年に一律関税10%(輸入関税法の制定)を導入した際、それは自由貿易政策の終焉として受け止められました。また近年では、米国がすべての輸入品に一律10%の関税を課す提案を打ち出した例がありますが、これは国内産業保護を目的とした保護主義的措置とみなされ、自由貿易の理念に反する政策とされています。一方で、本当に自由貿易志向の経済圏では関税率は限りなくゼロに近く、例えば香港のようにほぼ全ての輸入品に関税を課さない例もあります。以上のように、関税が10%課されている状態は経済理論上も制度上も「自由貿易」とは言えず、あくまで部分的に貿易を自由化しているに過ぎないといえます。

要約

関税が10%の状態は、経済学的にも国際貿易制度上(WTOやFTA)でも自由貿易とはみなされない。自由貿易とは関税などの貿易障壁が撤廃され、極めて低い状態(通常ゼロかそれに近い水準)を指すため、10%という関税は保護主義的要素が残る状態と評価される。実際の政策でも、10%の関税は保護主義措置として位置づけられている。

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