労働者の実績とは

政治経済

資本主義社会において、生産手段の獲得が労働者の実績であり、単に時間を報酬に替えるだけでは進歩がないという主題を弁証法的に論じることができます。


1. 資本主義における労働者の現状(テーゼ)

マルクス経済学における資本主義の構造では、労働者は生産手段を持たないため、自らの労働力(時間や能力)を資本家に売ることで賃金を得ます。この賃金は、日々の生活を維持するための最低限度に過ぎず、労働者が労働によって生み出した「剰余価値」は資本家の利益として蓄積されます。

  • 労働者は時間を売り続ける限り、労働力の再生産(生活の維持)にとどまり、資本の蓄積ができない。
  • 資本家は生産手段を持つことで、他者(労働者)の労働力を用いて利益を生み出し、さらなる生産手段を拡大し続けます。

この状態では、労働者は生産手段の獲得に至らず、時間の切り売りによって資本主義の構造を維持する側に固定化されるのです。


2. 生産手段の獲得という労働者の可能性(アンチテーゼ)

労働者が真に「進歩」し、階級的立場から脱却するためには、生産手段を獲得することが必要です。生産手段の所有は次の意味を持ちます:

  • 労働者が自ら生産を制御し、剰余価値を自身のために蓄積できるようになる。
  • 資本家に依存する労働力の再生産から脱却し、資本の拡大や新たな生産活動を可能にする。

これが労働者にとって「実績」と呼べるものです。単なる賃労働(時間と報酬の交換)にとどまる限り、労働者は進歩せず、経済的にも社会的にも固定的な立場から抜け出せません。

ここで弁証法的視点を加えると、労働者は次の段階に進むことが求められます:

  1. 自己の労働力を通じて得た賃金を消費するだけではなく、蓄積に向ける。
  2. 蓄積した資本を活用し、小規模でも生産手段を獲得し、次の段階へ移行する。

3. 生産手段の獲得による進歩(ジンテーゼ)

労働者が生産手段を獲得することで、資本家との従属関係を超えた新たな社会的・経済的立場が生まれます。具体的には:

  • 労働者自身が経済活動を主導し、富の分配を自ら行う立場に立つ。
  • 資本家が独占していた生産手段と剰余価値の蓄積を労働者も手に入れることで、経済的な平等に近づく。

この過程は、労働者が「時間を売るだけの存在」から「生産を所有する存在」へと進化する弁証法的な発展です。

  • 時間を売ること=停滞、 生産手段を得ること=進歩・解放 であるという結論に至ります。

まとめ:弁証法による到達点

資本主義社会において、生産手段の獲得こそが労働者の真の実績です。単に時間を売って報酬を得るだけでは、労働者は生産手段を持つ者(資本家)に従属する構造を再生産するに過ぎず、進歩はありません。労働者が蓄積を通じて生産手段を得ることで、搾取の構造を打破し、資本主義の支配関係を超克する可能性が開かれるのです。

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