国の債務残高が増えるとインフレになりやすい

政治経済

国の債務残高が増えるとインフレ基調になる。なぜなら、支払利息の負担から利上げをしにくくなり、金融引締めの足かせとなるからだ。

確かに、利上げ以外にも量的引締め政策はある。例えば、財政支出の抑制や規制の強化が考えられる。しかし、新自由主義下では、両者は採用されにくい。新自由主義は、マネタリズムとサプライサイド経済学を両輪とする。前者は、貨幣の供給量で需給を調整する考え方で、後者は、供給側に便宜を図ることで経済を駆動させる考え方である。よって、財政支出の抑制と規制の強化はサプライサイド経済学と相容れない。

一方、マネタリズムは貨幣の供給量で需給を調整するのだが、具体的な手段は金利の調整や国際その他の証券の売買や貸借である。仮に国の債務残高が過大だと利上げがしにくく、インフレ局面において利下げの余地が小さい。よって、インフレ退治に重要な手段の一つを失ってしまう。

インフレの最たる悪弊は、生活必需品の高騰による市民生活の破壊であり、治安が悪くなる。我が国でも江戸幕府討幕の主因は小判(金)の国外流出による物価高による庶民の生活の困窮である。令和の世にあっても市民の生活が苦しくなれば、社会不安が増大するだろう。

したがって、国の債務残高の増大はインフレをもたらす。21世紀において世界が経験した3度の経済危機(ITバブル崩壊、リーマンショック、コロナショック)はいずれも金融緩和により回復したが、金融緩和の一環としての国債の発行により国の債務は増大した。近い未来に暴落が起きたら再度国債を大量に発行するだろうが、その副作用としてのインフレが世界経済の宿痾になる恐れがある。国は過去最高の税収を達成した今こそ、基礎的財政収支の改善を図るべきである。

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