1957年のS&P500の導入以来、同指数の年平均利回りが約11%であり、トマ・ピケティが「21世紀の資本」(2013年発刊)において示した資本収益率 ( r = 5% ) を大きく上回ることから、「r>g」の顕在化について論じたい。
確かに、S&P500が長期にわたり約11%の高い利回りを達成し、多くの個人や機関投資家を惹きつけ、米国市場への資本流入を促している。つまり、米国市場は「資本を持つ者がさらに富を増やす手段」として機能している。
しかし、ピケティによれば、資本収益率 ( r ) が経済成長率 ( g ) を上回ることで、富は次第に資本家に集中し、社会的な不平等が拡大する。S&P500が11%の高い利回りを示す一方で、経済成長は1.5~2%にとどまると、労働を通じた収入と資本からの収入に格差が生じる。この状態が続けば、ピケティが警告する「不平等の構造的固定化」が現実のものとなり、資本を持たない労働者の不満が高まるだろう。
よって、労働者に対して株式市場への参加を啓蒙したり、再分配政策(資産課税の強化)が必要となる。米国企業の恩恵をより多くの人々が享受できれば、経済や社会が健全な発展を遂げられる。S&P500の高利回りは資本主義の強さを示す一方で、不平等の温床ともなり得る。資本主義の恩恵を社会全体に行き渡らせ健全な社会を築くためには、労働者への還元や税制改革が求められる。
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