政治経済

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トリフィンのジレンマと足元のドル信認の低下・金高騰

トリフィンのジレンマとは何か1950年代にベルギー出身の経済学者ロバート・トリフィンは、基軸通貨国が抱える矛盾を指摘しました。世界の基軸通貨を供給する国は世界の貿易と資本の決済に十分な自国通貨を供給しなければなりませんが、その供給は国際収支...
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スタグフレーションとドルの信認

序論1970年代前半、世界経済はかつて経験のない組み合わせに直面した。物価が高騰する一方で景気は低迷し、雇用も悪化するという「スタグフレーション」だ。日本語では「スタグネーション(停滞)」と「インフレーション(物価上昇)」を組み合わせた造語...
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『日本国債』に見る国家信用 ― 安全神話と市場不信、そして再生への道

幸田真音の小説『日本国債』は、国家財政と金融市場を舞台にした経済スリラーである。物語は、対外信用を失いつつある日本国債市場が投機筋に攻撃され、国家財政が危機に陥る過程を描く。主人公は外資系金融機関出身の敏腕ディーラーで、財務省に招聘されて国...
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9月CPI鈍化にみる米国経済の転換点 ― 利下げ期待とインフレ粘着性

問題設定2025年9月の米国消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.0%・前月比0.3%と、市場予想の3.1%・0.4%を下回った。食品・エネルギーを除くコアCPIも3.0%・0.2%と予想を下回り、中古車やアパレルなどモノの物価上昇率が鈍...
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1970年代米国スタグフレーションの弁証法的分析 ― ケインズ主義の崩壊と金融政策の転回

スタグフレーションとは何かスタグフレーションは物価上昇(インフレーション)と景気停滞(高失業や低成長)が同時に進行する現象である。第二次大戦後の経済学では失業率とインフレ率が逆相関するとされ、適度なインフレを容認すれば失業率は下がり、総需要...
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ニクソンショックと1970年代金価格高騰

ニクソンショック後の10年間、金価格が上昇し続けた背景には、米国政権の政策と世界経済の変動が複雑に絡み合っていた。まず1971年のドル=金兌換停止によって金価格は固定相場から解放され、市場で自由に値付けされるようになった。この新しい環境下で...
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戦後国際金融体制の変遷

第二次世界大戦後、ソ連やイギリスは国力を消耗し、経済・軍事力に余力を残したアメリカが主導権を握った。1944年のブレトン=ウッズ会議では、各国通貨とドルの交換比率を決め、ドルを金と交換可能とした固定相場制の金・ドル本位制が成立した。この仕組...
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日本の三権分立とその相互抑制の仕組み

日本国憲法(1947年施行)は、国家権力を「立法権」「行政権」「司法権」に分け、3つの機関がお互いに抑制し合うことで権力の集中や濫用を防ぎ、国民の権利と自由を守る「三権分立」の原則を定めています。以下、日本における三権分立の特徴と各機関の役...
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欧州レバレッジド債務に潜む“ゴキブリ”

弁証法的検討テーゼ(肯定的仮説):レバレッジド債務は欧州経済の危機を孕んでいるパンデミック時に企業買収や旧債務返済のために大量の資金が低金利で借り入れられた結果、欧州のレバレッジド債務残高は急拡大しました。ソナ・アセット・マネジメントのジョ...
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自由時間と真の富―マルクスとエンゲルスから新自由主義への考察

はじめにマルクスとエンゲルスは『共産党宣言』で「各人の自由な展開が万人の自由な展開の条件である」社会を展望しました。その後の経済学的探究では、生産力の発展によって労働時間を短縮し、人間が自由に処分できる時間こそが真の富であると喝破しました。...