外貨建て棚卸資産の低価法評価と取得原価主義

会計基準上の取扱い

日本基準では棚卸資産は原則として取得原価で評価し、期末に時価(通常「正味売却価額」)が取得原価を下回る場合にのみ低価法で簿価を切り下げますasb-j.jp。すなわち、期末時点の売価から追加製造費用・販売経費を控除した正味売却価額や、再調達原価のいずれか低い金額を取得原価と比較し、低い方を評価額としますasb-j.jp。低価法適用により評価損を計上するのは、①期末時の時価が取得原価より下落している場合、②その下落が回復見込みのないと認められる場合などで、計上額は(取得原価-時価)で算定しますasb-j.jp。なお、外貨建てで仕入れた棚卸資産は非貨幣性資産とみなされ、取得時の為替レートで円換算した金額を原価とするため、期末時に為替レートが変動しても原価の再換算は行いません。たとえばIFRSでも「取得原価で測定される非貨幣性項目は取引日の為替レートで換算する」とされておりsuperstream.canon-its.co.jp、同様に日本基準でも外貨建棚卸資産は取得時の円貨額をもって評価されるのが前提です。期末時に時価が回復しても、棚卸資産については評価損の戻入れは原則として行いません(IAS2や会計基準上も一度下方修正した簿価は回復させない扱い)。

法人税務上の取扱い

法人税法上は「取得原価主義」が原則であり、棚卸資産は取得時の円貨額(または支払済み外貨額を期末レートで円換算した額)を原価とします。国税庁は基本通達で「換算対象となるのは貨幣性資産のみで、棚卸資産など非貨幣資産は期末に換算しない」ことを明示していますmikagecpa.com。つまり、外貨建て棚卸資産は取得時レートで円建計上され、その後の為替差損益や価格下落による評価損は原則税務上認められません。一方で税法上も会計同様に低価法(令99条)を選択適用できます。この場合、会計上の低価法評価による簿価切下げ額は損金算入できますが、外貨建て特有の為替損(会計上の円換算損)が直接損金算入されるわけではありません。評価損の回復についても、税務上は評価損自体を認めていないため特別な規定はなく、回復益も通常課税対象とはなりません。

関連法令・通達・FAQ等(国税庁)

  • 法人税法施行令第99条(棚卸資産の評価方法:原価法・低価法の規定)
  • 法人税法第61条の9、法人税基本通達13-2-1以下(外貨建取引・資産の換算)mikagecpa.com
  • 国税庁FAQ:外貨建取引に関する会計処理等(平成13年課法2-7「十九」)※外貨建資産換算の例示
  • 国税庁「棚卸資産の評価に関する通達」ほか関連解説(企業会計基準との調整方針)asb-j.jp

要約

会計上、外貨建棚卸資産は取得時のレートで評価し、期末に正味売却価額が取得原価を下回る場合のみ低価法で評価損を計上しますasb-j.jpsuperstream.canon-its.co.jp税務上は取得原価主義が原則で、棚卸資産は取得時レートの円貨額で評価しますmikagecpa.com。低価法を選択した場合に限り評価損を損金算入できますが、外貨建て仕入れ分の為替損益は基本的に損金不算入です。価格や為替レートが回復しても、税務上は評価損の戻入れは行わず、元の取得原価が維持されます。以上の取扱いは法人税法・施行令・通達等および国税庁FAQなどで定められていますmikagecpa.comasb-j.jp

引用

会計基準詳細 | 会計基準検索システム

https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=24会計基準詳細 | 会計基準検索システムhttps://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=24第10回 「IFRSにおける外貨建取引と外貨換算の留意点を教えてください」https://www.superstream.canon-its.co.jp/column/kouza/vol_010〖具体例付〗外貨建取引の会計処理/税務上の法定換算方法/為替レートはどれを使う?https://www.mikagecpa.com/archives/4805/

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