1.親族への売却が特別控除の対象外となる場合
「マイホームを売ったときの3,000万円特別控除」(措法35①)は、譲渡所得から最大3,000万円まで差し引ける制度ですが、適用要件の一つに 「親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものではないこと」 が含まれています。国税庁の解説では、この“特別の関係がある人”に以下のような者が含まれると明記されています。
- 配偶者・親子などの親族で生計を一にする者
- 家屋を売った後に売主と同居する親族
- 内縁関係にある人と、その親族で生計を一にする者
- 売主やその親族等が発行済株式の50%超を保有する同族会社などの法人
このため、売却先が配偶者や直系の親族(親、子、孫など)または生計を一にする親族である場合や、売却後もその家屋に同居する親族である場合は特別控除が適用されません。売却先が兄弟姉妹や甥・姪などでも、売主と生計を一にしている場合や売却後同居する場合は“特別の関係”と判断され、控除は使えません。
2.その他の適用できないケース(国税庁による適用除外事項)
3,000万円特別控除は親族関係以外にも適用除外が設けられています。国税庁のタックスアンサー No.3302では、適用除外に該当する家屋として次のようなものを挙げています。
適用できない主なケース | 国税庁の根拠・理由 |
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特例の適用を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋 | 国税庁は、控除目的で短期入居した家屋には適用できないとしています。 |
居住用家屋を新築する間の仮住まいやその他一時的な入居と認められる家屋 | 新築工事の間だけの仮住まいなど、一時的な目的で住んだ家屋は特例対象外です。 |
別荘など趣味・保養目的の家屋 | 自宅ではなく別荘など娯楽用の建物は対象外です。 |
引越し後3年を経過する年の12月31日を過ぎて売却した以前の住まい | 以前に住んでいた家屋でも、転居後3年が経過する年の12月31日までに売却しないと特例を受けられません。 |
同一年または前2年以内にこの特例や買換え特例等を利用している場合 | 同じ年や前年・前々年に3,000万円控除やマイホームの譲渡損失特例を受けている場合は適用できません。 |
他の特例(収用等の5,000万円特別控除など)を同じ譲渡で併用している場合 | 3,000万円特別控除と他の特例は併用できません。 |
家屋の一部しか住居として使っていない場合 | 店舗兼住宅などでは、居住用部分に対応する部分のみが対象となり、その他の部分には適用されません。 |
所有者として居住した事実がない家屋・一時的な別居 | 短期滞在などで実際に居住していない家屋は対象外となり、住民票や戸籍附票で居住実績を確認されます。 |
3.まとめ
- 3,000万円特別控除は、自宅(居住用財産)を売却した際に譲渡所得から最大3,000万円を控除できる制度ですが、 売却相手が「特別の関係にある人」(配偶者・親子・生計を一にする親族・売却後も同居する親族・内縁関係の相手やその親族・同族会社等)であると適用されません。
- 親族であっても、売主と生計を別にし、かつ売却後も同居しない場合は“特別の関係”に該当しないと考えられるため、控除が適用できる余地があります。ただし生計や同居状況の判定は個々の事実関係によります。
- 上記の特別関係者への売却以外にも、仮住まい・別荘等の一時的な家屋や転居後3年以上経過した家屋、直近2年以内の重複利用、他特例との併用など、国税庁が示す適用除外事項に該当すると特別控除は利用できません。
特例の適用範囲は細かく定められており、判断に迷う場合は税務署や税理士に相談することをおすすめします。
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