「ユビキタス」は英語の ubiquitous から来ており、語源はラテン語の ubique(あらゆるところに)です。もともとは「遍在する」「どこにでもある」という意味で、宗教では神がどこにでも存在するというニュアンスでも使われますが、情報技術の世界ではコンピュータやネットワークが「いつでも」「どこでも」「何でも」「誰でも」利用できる状態を指します。
ことばの意味と語源
- ラテン語の由来 – ubiquitous はラテン語 ubique(あらゆるところ)から派生し、「遍在する」や「どこにでもある」という意味を持ちます。
- 一般的な定義 – KDDIの IT 用語集では「ユビキタス(Ubiquitous)とは『至るところに存在する』という意味で、社会や生活のあらゆる場所にコンピュータやネットワークが存在し、いつでもどこでも情報にアクセスできる状態を示す」とされています。
ユビキタス社会(ユビキタスネットワーク社会)
総務省の情報通信白書ではユビキタス社会を「『いつでも・どこでも・何でも・誰でも』ネットワークにつながり、さまざまなサービスが人々の生活を豊かにする社会」と定義しています。具体的には、パソコンだけでなく携帯端末や自動車など、屋内外のあらゆる場所でネットに接続できることを指し、接続対象もコンピュータ同士だけでなく家電や自動車などあらゆるモノと人の組み合わせを含みます。したがって、ユビキタス社会では時間や場所の制約がなく、「何でも」「誰でも」情報交換できる環境が前提となります。スマートフォン、IoT家電、ウェアラブル端末、車載システム、電子タグ付き商品などが連携し、利用者が意識せずに利用できる状態が典型的なユビキタス社会の姿です。
ユビキタス・コンピューティング
ユビキタス社会を支える技術が「ユビキタス・コンピューティング」です。JPNIC はこれを「社会や生活の至る所にコンピュータが存在し、ユーザがコンピュータの使用を意識せずにいつでもどこでも情報へアクセスできる環境」と定義しています。この概念は米ゼロックス社のパロアルト研究所の研究者マーク・ワイザーが1988年頃から提唱しました。彼は科学雑誌『サイエンティフィック・アメリカン』の記事で、コンピュータが「環境に溶け込み、人々の意識から消える」未来像を示しました。KDDI の解説でも、ユビキタスという言葉はこの「ユビキタス・コンピューティング」に由来していると説明されています。
ユビキタス・コンピューティングは、人がコンピュータの存在を意識しなくても生活や仕事に必要な情報やサービスを得られる環境を目指します。例としては、スマートスピーカーやセンサー付き家電が自動的に情報を共有し、冷蔵庫が在庫を通知したり、コンビニで商品を持って店を出るだけで代金が自動決済されるといったことが挙げられます。
まとめ
ユビキタスは単に「どこにでもある」という意味だけでなく、IT 分野ではコンピュータやネットワークが生活の隅々に溶け込み、誰もが意識せずに情報やサービスを利用できる状態を指します。総務省の白書が示す「いつでも・どこでも・何でも・誰でも」という四つの要素が、この概念を表すキーワードです。その実現に向けてスマートデバイスや IoT、AI などの技術が急速に発展し、私たちの日常生活を支えています。
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