日本国憲法(1947年施行)は、国家権力を「立法権」「行政権」「司法権」に分け、3つの機関がお互いに抑制し合うことで権力の集中や濫用を防ぎ、国民の権利と自由を守る「三権分立」の原則を定めています。以下、日本における三権分立の特徴と各機関の役割・相互関係をまとめます。
立法権:国会(衆議院・参議院)
- 憲法は国会を「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関」と規定し、国会が主権者である国民の意思を代表します。
- 国会は法律を制定するほか、予算や条約を議決し、内閣総理大臣を指名し、憲法改正を発議するなどの権能を持っています。
- 二院制を採用し、衆議院(465人、任期4年・解散あり)と参議院(248人、任期6年・3年ごとに半数改選)で構成されます。衆議院は内閣不信任決議を行う権限を持ち、予算・条約の議決や首相指名などで参議院より強い権限を持ちます。
行政権:内閣(首相と国務大臣)
- 現行憲法下で内閣は行政権の主体として位置づけられ、議院内閣制の下で国会の信任を要します。内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決で指名され、国務大臣の過半数も国会議員から選ばれます。
- 憲法第73条は内閣の職務を列挙しており、法律を誠実に執行して国務を総理し、外交関係の処理や条約締結、官吏の任免、予算案の作成、政令制定、大赦・特赦などを行います。
- 天皇の国事行為は内閣の助言と承認を必要とし、例えば国会の召集や衆議院の解散・首相の任命などは内閣の助言に基づいて行われます。
司法権:裁判所(最高裁判所・下級裁判所)
- 憲法76条1項は「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」と定め、司法権を裁判所に属させています。特別裁判所の設置や行政機関による終審裁判を禁じており、裁判官はその良心に従い独立して職権を行い憲法と法律にのみ拘束されます。
- 最高裁判所は長官1名と14人の裁判官で構成され、憲法81条により「一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかどうかを決定する終審裁判所」として違憲審査権を持ちます。
- 下級裁判所には高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所があり、高等裁判所は8都市に設置され選挙訴訟や行政事件などの控訴審を担当します。地方裁判所は全国50か所にあり第一審の中心となる裁判所で、家庭裁判所は親族や少年事件を非公開の手続で扱うため心理・福祉の専門職を置いています。簡易裁判所は438か所設けられ、140万円以下の民事事件や軽微な刑事事件の第一審を担います。
- 裁判官は心身の故障による罷免以外は弾劾裁判所の判決を受けない限り罷免されず、報酬も在任中減額できないなど身分保障が規定されています。
三権のチェックと均衡
- 国会は首相を指名し、衆議院は内閣不信任決議を行うことができます。内閣は国会を召集し、衆議院を解散する権限を持ちます。
- 国会は裁判官の罷免を審査する弾劾裁判所を設けることができ、裁判所は国会が制定した法律や内閣の行政行為が憲法に適合するかどうかを審査する違憲審査権を有します。
- 内閣は最高裁判所長官を指名し、その他の裁判官を任命しますが、最高裁判所裁判官は任命後最初の衆議院総選挙と10年ごとの総選挙で国民審査に付され、国民が罷免を可とした場合は辞めさせることができます。
- このようなバランスの仕組みにより、国会・内閣・裁判所が相互にチェックし、権力の行き過ぎを防いでいます。
現行制度の特徴と課題
日本では議院内閣制を採用しているため、立法府と行政府の結び付きが強いのが特徴です。国会の多数派が内閣を構成するため、行政権と立法権は一定程度協調して活動します。その一方で、議院内閣制による「三権の均衡」は国会による行政監視や野党の役割に依存しており、与党が議会を多数で占める場合には行政へのチェックが弱まるとの指摘もあります。司法権については、裁判官の独立が憲法で強く保障されており、違憲審査制や弾劾制度・国民審査制度により民主的なコントロールも一定程度行われています。
以上のように、日本の三権分立は、立法権を国会、行政権を内閣、司法権を裁判所が担当することで権力の濫用を抑え、国民の権利を守る仕組みです。それぞれの機関が憲法に基づく役割を果たしつつ相互に監視し合うことで、民主的な統治を支えています。

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