以下では、相続税における宅地比準方式の概要と、評価時に用いる各種補正率について説明します。最後に要約を示します。
宅地比準方式とは
宅地比準方式は、市街地にある農地・山林・雑種地など、宅地への転用が可能な土地の評価に使われる方法です。対象土地の宅地としての利用価値を評価するため、近隣の宅地の価額(固定資産税評価額や路線価)を基準にし、宅地への造成費用や建築規制を考慮して算出します。具体的には、近隣宅地の1㎡当たりの価額に該当地域の倍率や形状補正率を掛け、そこから1㎡当たりの造成費用を控除して求めます。都市計画区域内で建物の建築に制限がある場合は、制限割合(しんしゃく割合)を考慮し、住宅が建てられる面積割合を乗じて評価します。形状の違いに対しては、路線価方式で用いられる画地調整率(後述)と同様の補正率を用いて評価額を調整します。
主な補正率・加算率
宅地比準方式および路線価方式では、対象地の形状や環境に応じて複数の補正率を乗じて評価額を調整します。
| 補正・加算の名称 | 概要 | 適用例 |
|---|---|---|
| 奥行価格補正率 | 前面道路に面する土地の奥行が標準より短すぎる、又は長すぎる場合に用いる補正率です。路線価にこの率を掛けて奥行の違いを調整します。 | 奥行が極端に長い宅地や短い宅地。 |
| 奥行長大補正率 | 間口の2倍以上の奥行をもつ「長大地」の場合に、奥行価格補正率に続けて掛ける補正率です。 | 奥行が非常に長い宅地や農地。 |
| 間口狭小補正率 | 間口(道路に面した幅)が狭い宅地に適用する補正率で、奥行価格補正率や奥行長大補正率と併用します。 | 幅が狭い形状の土地。 |
| 不整形地補正率 | L字型や旗竿地など、正方形や長方形ではない不整形地に適用します。標準的な宅地と比べて利用効率が落ちる分を減価する補正率です。 | くびれがある土地、L字地、三角形の土地など。 |
| 側方路線影響加算率/二方路線影響加算率 | 角地や二方路線に面した土地は、通行や採光のメリットがあるため価値が上がります。道路が側方にあっても角地として機能しない場合は「二方路線影響加算率」を用います。 | 二方向が道路に面している宅地、袋地の入り口にある宅地など。 |
| 規模格差補正率 | 敷地が広大な場合、道路や公園などの公共負担部分、開発リスクなどを考慮して価額を減額する補正率です。 | 数千㎡に及ぶ大規模宅地や大型開発予定地。 |
| がけ地補正率 | 敷地内に斜面や崖がある場合、利用できない部分を減価する補正率で、利用可能地の価額に乗じて評価します。 | 敷地が傾斜地を含む場合やがけ地に面する宅地。 |
| 宅地造成費控除 | 宅地比準方式では宅地への転用を前提として評価するため、1㎡当たりの造成費(宅地造成費)を評価額から控除します。 | 農地や山林などで整備費用が必要な場合。 |
| しんしゃく割合(建築制限率) | 都市計画区域内で建物の建築が制限されている場合、制限に応じて評価額を減額するための割合です。 | 用途地域や地区計画などにより建築が一定割合しか認められない土地。 |
このほか、路線価方式ではさらに「大型店補正率」「崖地補正率」「洪水など災害リスクの補正率」などが定められており、宅地比準方式でも地域の実情に応じて適用されることがあります。
要約
- 宅地比準方式は、市街地近郊の農地や山林を宅地化した場合の価値を求める方法で、近隣宅地の評価額に倍率・補正率を乗じ、造成費用を控除して求めます。
- 形状の違いに対する調整には、奥行価格補正率・間口狭小補正率・奥行長大補正率・不整形地補正率など、路線価方式と共通の補正率を用います。
- 角地や側方道路を持つ宅地には価値を上乗せする加算率があり、二方路線に面しても角地として機能しない場合は二方路線影響加算率を適用します。
- 大規模地やがけ地には規模格差補正率やがけ地補正率があり、利用効率の低下や造成費用を考慮します。
- 都市計画の建築制限がある場合はしんしゃく割合で評価額を減額し、宅地造成費も控除します。
以上が、宅地比準方式の概要と主要な補正率の説明です。

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