中小企業庁が公表している「中小企業の会計に関する基本要領」では、財務諸表の様式例をまとめた「Ⅲ.様式集」に貸借対照表の記載例が示されています。様式例では、資産の部と負債の部を区分し、企業が一般的に用いる勘定科目が上から下へ流動性や性質に沿って並んでいます。
貸借対照表の様式例における勘定科目の順序
- 流動資産(資産の部) – 例示されている貸借対照表では、流動資産の内訳として「現金及び預金」が最初に置かれ、その後に「受取手形」「売掛金」「有価証券」「製品及び商品」「仕掛品」「原材料及び貯蔵品」「短期貸付金」「前払費用」「未収収益」「その他」「貸倒引当金」の順に並んでいます。最下段に「流動資産合計」が表示されます。
- 固定資産 – 流動資産の下には固定資産の項目が続き、まず有形固定資産(建物、構築物、機械及び装置、工具・器具及び備品、土地、その他)の順で記載し、次に無形固定資産(ソフトウェア、借地権、その他)、最後に「投資その他の資産」(関係会社株式、出資金、長期貸付金、長期前払費用、敷金及び保証金、その他、貸倒引当金)を載せています。
- 負債の部や純資産の部も同様に、流動負債(支払手形、買掛金、短期借入金、未払金、預り金、未払費用、未払法人税等、前受収益、賞与引当金、その他)、固定負債(社債、長期借入金、退職給付引当金、その他)、純資産の部(資本金・資本剰余金・利益剰余金など)の順に示されています。
このように、会計要領では貸借対照表の標準的な様式を示し、資産の部では現金及び預金を最上位に置くなど、勘定科目の並び順の例を提示しています。しかし、同要領の脚注では「貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、附属明細書の作成に際しては、企業の実態に応じて、適宜勘定科目等を加除・集約することができる」と明記されており、必ずしも例示どおりの並び順に従うことが強制されているわけではありません。資産の部に有価証券や未収源泉税を最上位に置いてはならないという規定もなく、企業の実態に応じて科目の順序や名称を変更・集約することが認められています。
まとめ
中小企業の会計に関する基本要領では、貸借対照表の様式例として流動資産・固定資産の科目順が示されており、流動資産では「現金及び預金」が最上位、次いで手形や売掛金、有価証券、棚卸資産などが並びます。ただし、注記にあるように勘定科目の並び順や科目の加除・集約は企業の実態に応じて調整可能であり、有価証券や未収源泉税をどこに表示するかは自社の状況や利用者への情報提供の適切さを考慮して決めることができます。
 
  
  
  
  
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