受取配当等の益金不算入制度は、法人が他の法人から配当金を受け取った場合に、一定割合を課税所得から除外する仕組みです。企業会計では受取配当金を営業外収益として計上しますが、同じ利益を二度課税しないよう法人税法が配慮しており、一定要件を満たす配当金は益金から除外することが認められています。
制度の趣旨
配当金は支払法人の利益剰余金から分配されます。この剰余金にはすでに法人税が課されているため、受け取り側の法人がそのまま益金に算入すると同一の利益に対して二重課税が生じます。そこで、法人税法は受取配当等の一定部分を益金不算入とする制度を設け、グループ内での資金移動に対する過度な課税を避けています。
区分と控除割合
受取配当等を益金不算入できる割合は、配当を支払う法人への持株割合に応じて定められており、主に次の4区分に分類されます。
| 区分 | 判定の基準 | 益金不算入割合 | 負債利子の控除 |
|---|---|---|---|
| 完全子法人株式等 | 配当計算期間を通じて100%を保有。全額がグループ内で保有されている場合は間接保有でも可 | 100% | 不要 |
| 関連法人株式等 | 配当計算期間を通じて持株比率が1/3超 | 100% | 必要(株式取得資金の負債利子控除) |
| その他株式等 | 持株比率が5%超~1/3以下 | 50% | 不要 |
| 非支配目的株式等 | 持株比率が5%以下 | 20%(保険会社は40%) | 不要 |
持株割合の判定時点は区分によって異なり、完全子法人株式等と関連法人株式等は配当等の計算期間の全期間を通じて保有しているかどうかで判定します。一方、その他株式等と非支配目的株式等は配当の基準日(株主確定基準日)における持株割合で判断します。また、2022年度税制改正により「完全子法人株式等」の判定は100%グループ全体の持株割合で行うこととされ、関連法人株式等については自社の直接持株割合による判定と区別されるようになりました。
適用に際しての注意点
- 継続保有要件:完全子法人株式等や関連法人株式等は、配当等の額の計算期間を通じて保有割合を維持している必要があります。期中にM&Aなどで保有割合が変動した場合、全額不算入の区分に該当しなくなることがあります。
- 負債利子の控除:関連法人株式等については、その株式取得のための借入金利子を損金に算入する場合、受取配当金から負債利子相当額を差し引いて益金不算入額を計算します。
- 短期保有株式等:取得から短期間(計算期間末日以前6か月以内)に保有割合が変動した株式については、益金不算入の適用が制限されます。
- 申告手続き:受取配当等の益金不算入制度を適用する際は、法人税申告書に別表八(一)「受取配当等の益金不算入に関する明細書」を添付し、株式等の区分や保有割合、負債利子の控除額などを明記する必要があります。
要約
- 受取配当等の益金不算入制度は、法人が配当金を受け取った際に二重課税を防ぐための税務上の特例で、配当支払法人への持株割合によって益金不算入とされる割合が変わります。
- 完全子法人株式等や関連法人株式等では配当金の全額が益金不算入となる一方、その他株式等では50%、非支配目的株式等では20%(保険会社は40%)が不算入となります。
- 制度の適用には継続保有要件や持株比率の判定時期、負債利子控除の要否など細かなルールがあり、法人税申告書別表八(一)で適正に申告する必要があります。

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