2000年以降の金とビットコインの時価総額比較

概要と算出方法

2000年以降の金(ゴールド)とビットコイン(BTC)の時価総額推移を比較します。金の時価総額は、その年の平均的な金価格(USD建て)に全世界の地上在庫量(採掘された累計金量)を掛け合わせて推定します。一方、ビットコインの時価総額は、その年末時点のビットコイン供給量(発行枚数)に年末のビットコイン価格(USD)を掛けて算出しています。金の地上在庫量は年々ゆるやかに増加します(年間約1~2%のペース、2000年頃は約14.4万トン、2020年頃には約20万トン超)。ビットコインの供給量は設計上2100万BTCで上限固定されており、4年ごと(21万ブロックごと)にマイニング報酬が半減するため、発行ペースは徐々に減速していきます。以下に各年の金およびビットコインの推定時価総額を一覧表にまとめ、続いてグラフでその推移を視覚化し、両者の規模差やトレンド、ビットコインの供給上限の影響について簡潔に分析します。

年次データ比較(2000~2023年)

  • 単位:時価総額は米ドル建て。金・ビットコインとも兆(1兆=1兆=1e12)USD単位で表示しています。ビットコインは2009年に登場。それ以前(2000~2008年)は「—」で表記。値が0.0兆ドルと表記されている年は、時価総額が0.05兆ドル未満(500億ドル未満)であることを示します。
金の時価総額 (兆USD)ビットコインの時価総額 (兆USD)
20001.3
20011.3
20021.5
20031.8
20042.0
20052.2
20063.1
20073.6
20084.6
20095.20.0
20106.60.0
20118.70.0
20129.40.0
20138.00.0
20147.30.0
20156.80.0
20167.50.0
20177.70.2
20187.90.1
20198.80.1
202011.40.5
202111.80.9
202212.00.3
202313.20.8

金とビットコイン時価総額の推移

金(ゴールド)とビットコインの時価総額推移(2009~2023年)。金の時価総額(橙色)は約5兆ドルから13兆ドルへと緩やかに増加する一方、ビットコイン(赤色)は2016年頃まで0に近い水準で、2017年以降になってようやく兆ドルのオーダーに達している。グラフからも、ビットコインの時価総額は登場以来長らく金に比べ極めて小さく、2010年代後半から急速に成長したことがわかる。各年末時点の値をプロットしています。

金の時価総額トレンド: 金は2000年代初頭から2011年にかけて金価格の上昇に伴い時価総額が大きく伸びました。特にリーマンショック後の金融緩和局面で安全資産として金価格が高騰し、2011年には金価格が史上最高値(当時)を付け、地上在庫量も増加して約9兆ドル前後の時価総額に達しました。その後2012~2015年は金価格の調整局面となり、2015年には金の時価総額は約6.8兆ドルまで一時縮小しました。しかし、2010年代後半から再び金価格が上昇基調となり、さらに2020年以降はパンデミック下の景気刺激策などを背景に金価格が急伸したため、金の時価総額は2020年末に約11.4兆ドル、2023年末には約13.2兆ドルと過去最大規模を更新しています(2023年は金価格が約1900~2000ドル/オンスの高値圏)。

ビットコインの時価総額トレンド: ビットコインは2009年に誕生しましたが、当初は流通量も価格もごくわずかで、時価総額は数百万ドル以下(表の0.0兆ドルはゼロに近いことを意味)でした。2013年にかけて徐々に認知度が高まり価格が上昇するとともに発行枚数も増え、2013年末には時価総額が約90億ドル(0.09兆ドル弱)に達しました。ただ、それでも当時の金(約8兆ドル)に比べると0.1%程度という微小な規模です。その後もビットコイン価格は変動を繰り返しながら長期的には上昇し、2017年末には初めて0.2兆ドル(約2,380億ドル)規模に達しました。この2017年は仮想通貨バブルと呼ばれる急騰期で、ビットコイン価格が年末に約$14,000に達し、時価総額が金の約3%程度にまで拡大しました。

2020年から2021年にかけては機関投資家の参入や市場の成熟によりビットコイン価格が過去最高を更新し、時価総額も急拡大しました。2020年末にはビットコインは0.54兆ドル(約5,400億ドル)と金(約11.4兆ドル)の約5%規模になり、さらに2021年末には一時0.88兆ドル(約8,800億ドル)に達して金(約11.8兆ドル)の7~8%程度に迫りました(2021年11月にはビットコイン価格が最高値を付け、瞬間的には時価総額1兆ドルを超え、金の時価総額の約10%に相当する水準まで到達しています)。しかしその後、2022年には暗号資産市場の急落によりビットコイン価格が大幅下落し、同年末の時価総額は0.33兆ドル(約3,300億ドル)と金(約12.0兆ドル)の約2.7%程度まで縮小しました。2023年には市場が回復しビットコイン価格も再上昇したため、同年末の時価総額は0.85兆ドル(約8,500億ドル)となり、再び金(約13.2兆ドル)の約6~7%規模にまで持ち直しています。

ビットコイン供給上限と金との比率の推移

ビットコインの供給量は最大2100万BTCで設計上固定されており、約4年ごとに半減期を迎えて新規供給が半分に減っていきます。そのため発行枚数の増加ペースは年々鈍化しており、時価総額の拡大には主に価格上昇が寄与します。実際、ビットコインは登場から現在までに供給量自体は最大でも毎年数%程度しか増えていませんが、価格が長期的に大幅上昇したことで時価総額が爆発的に成長しました。一方、金の地上在庫量は毎年1~2%ずつ増加しており、こちらも供給増加ペースは緩やかですが、金の時価総額は主に金価格の変動によって増減しています。

金とビットコインの時価総額比を見ると、ビットコインは2010年代半ばまで金の0.1%にも満たないごく小さな存在でしたが、その後急速に存在感を増しました。2017年末にはビットコインが金の約3%の時価総額に達し、2021年末には一時約7~8%(ピーク時は約10%)にまで拡大しました。その後いったん比率は低下しましたが、直近では約5~6%前後で推移しています。ビットコインの市場規模が金に近づいている背景には、発行上限による希少性や市場参加者の増加・価格上昇が挙げられます。ビットコインは供給上限があるため「デジタルゴールド」とも呼ばれ、特に価格が大きく上昇した局面では時価総額が金に対して急速にキャッチアップしました。ただし2023年末時点でも金の時価総額はビットコインの約15倍と依然大きな差があり、金は何千年もの歴史を持つ安定資産、ビットコインは登場からまだ十数年のボラティリティの高い資産という違いも見られます。

以上のように、金の時価総額は常に数兆ドル規模で安定して推移しているのに対し、ビットコインの時価総額はこの十数年でゼロに等しい水準から数千億ドル規模へと劇的に成長し、近年では金の数%規模にまで達しています。ビットコインは供給量の上限と半減期による希少性ゆえに価格が長期上昇トレンドを描いており、その結果として時価総額も急拡大して金との比率が高まってきました。ただし短期的には相場変動が激しく、金と比べて市場規模の変動率が大きい点にも注意が必要です。今後ビットコインが「デジタル金」として金の時価総額にどこまで迫るのか、大きな注目点となっています。

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