インドと中国の外貨準備高の内訳比較 (2023~2024年)

最新のデータ(2023~2024年頃)に基づき、インドと中国の外貨準備の内訳を以下にまとめます。米ドルやユーロなど通貨建資産のほか、金(ゴールド)、SDR(特別引出権)、IMFリザーブポジションなど主要カテゴリごとに比較しています。

外貨準備内訳データ(インド vs. 中国)

項目インド (最新, 約2023-24年)中国 (最新, 約2023-24年)
外貨準備高(総額)約6,500億ドル約3.2兆ドル
米ドル建資産約3,900億ドル(全体の約60%)約1.8兆ドル(全体の約55%)
ユーロ建資産約1,300億ドル(約20%)約6,400億ドル(約20%)
その他外貨建資産(円・ポンド等)約500億ドル(約8%)約6,000億ドル(約18%)
金(ゴールド)約530億ドル(822トン、約8%)約1,500億ドル(約2,000トン、約5%)
SDR(特別引出権)約180億ドル(約3%)約520億ドル(約2%)
IMFリザーブポジション約40億ドル(1%未満)数十億ドル規模(1%未満)

注: 上記は最新時点の概算値です(各国中央銀行等の公表値および推計に基づく)。「その他外貨建資産」には日本円や英ポンドなど米ドル・ユーロ以外の外貨建資産をまとめています。インドと中国ともにSDRは2021年のIMF新規配分による増加分を含みます。中国の米ドル建資産比率は公表されていませんが、近年の動向から推計しています。

類似点 (共通点)

  • 外貨建資産が主体: 両国とも外貨準備の大部分は外国通貨建て資産で占められており、特に米ドル建資産が最大の構成要素です。これは米ドルが国際的な基軸通貨として依然重要であることを反映しています。
  • ゴールド保有: インド・中国ともに、準備資産の一部を金(ゴールド)で保有しています。金は価値の保存手段や非常時の安全資産として位置づけられており、両国とも準備の数%程度を金で保持してリスク分散を図っています。
  • IMF関連資産: 両国は国際通貨基金(IMF)から配分された特別引出権(SDR)を保有し、IMFへの出資に基づくリザーブポジションも有しています。ただし、SDRおよびIMFポジションはいずれも外貨準備全体に占める比率は小さく、数%~1%未満に留まっています。

相違点 (差異)

  • 規模の違い: 最大の差異は準備高の規模です。中国の外貨準備高は約3.2兆ドルと、インド(約6500億ドル)のおよそ5倍に達し、世界最大です。この絶対規模の違いにより、各構成要素の絶対額にも大きな開きがあります。例えば金保有量は中国が約2000トンとインド(約800トン)を上回りますが、総額規模の差からインドの方が金の比率が高くなっています。
  • 通貨構成の比率: 外貨建資産の内訳を見ると、インドの方が米ドル依存度がやや高いと考えられます。インドは外貨準備の推定60%前後を米ドル建資産が占め、残りを主にユーロや円・ポンドなどで構成しています。一方、中国は公表こそされていませんが、近年「脱ドル化」に努めており米ドル建資産比率を低下させています。推計では中国の米ドル建資産は全体の約50~55%程度とインドより低く、そのぶんユーロや円など他の通貨建資産の占める割合がインドより大きいとみられます。つまり両国とも米ドルが最大構成ですが、中国の方が通貨分散が進んでいる点が異なります。
  • 金の比率: 上記の通り金保有の割合はインドの方が高めです。インドは準備高の約8%を金が占めるのに対し、中国は約5%程度です。ただしこれは総額の差による相対的な比率の違いであり、絶対量では中国が大きいことに注意が必要です。インドは歴史的に金の保有比率がやや高く、安全弁として活用してきた経緯がありますが、中国も近年金の積み増しを継続しており徐々に比率が上昇する傾向にあります。
  • SDR・IMFポジション: SDR保有額は中国が約520億ドルとインド(約180億ドル)より大きいものの、巨大な総準備の中で占める比率は中国で約2%、インドで約3%と中国の方が比率としては低い状況です。またIMFリザーブポジションも、中国はインドより出資額が大きい分絶対額では上回るものの、いずれも全体比では1%未満と僅少です。
  • 情報開示と運用方針: インドは外貨準備の安全・流動性を重視し、主要通貨建ての債券(米国債など)で運用している点でオーソドックスです。中国はSAFE(国家外貨管理局)が運用を所管し、米国債も大量に保有しつつ、一部でユーロ圏国債や他通貨資産、そして金を増やすことでリスク分散を図っています。また中国は外貨準備の詳細な内訳を機密情報として公表しておらず、近年の動向からその構成比を推測するしかない点も、インドとの違いと言えます(インドも通貨別構成の詳細は公開しませんが、カテゴリー別残高は定期公表しています)。

以上のように、インドと中国はいずれも米ドル主体の外貨準備構成である点では共通していますが、外貨準備の規模や多様化の度合い、金の比率などにおいて明確な差異が見られます。それぞれの国情と政策スタンスに応じて、準備資産の内訳にも特徴が表れています。

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