米国経済は直近の四半期(2025年第1四半期)に僅かながらマイナス成長となりましたが、その内訳を需要項目別に見ると項目ごとに明暗が分かれました。GDPを構成する主要項目の比率と前期からの変動を整理すると、個人消費が依然としてGDPの約7割を占める最大の項目であり、引き続き全体を下支えしています。一方、民間投資や純輸出(輸出-輸入)の動向に大きな変化が見られ、政府支出も増加から減少に転じました。以下では、個人消費, 民間投資, 政府支出, 純輸出の各項目について、GDPに占める割合と直近の変動を説明します。
個人消費
個人消費は米国GDPの約68~70%を占める最大の構成要素で、経済の主な牽引役です。最新の四半期でも個人消費は堅調に増加し、前期比年率換算で約2%の伸びを示しました(前年第4四半期は約4%増と高い伸びでしたが、今回はやや鈍化)。サービス消費・財消費の両方で支出が増えたものの、前期に高い伸びを見せた耐久財支出(例えば自動車など)が落ち着いたことで全体の伸び率は前期より低下しました。それでも雇用や所得環境の底堅さに支えられて個人消費は引き続きプラスを維持しており、経済成長を下支えする最大の要因となっています。
民間投資
民間投資(企業の設備投資や住宅投資、在庫投資の合計)はGDPの約15~20%を占める部門です。最新四半期では民間投資が大きく増加し、経済成長に寄与しました。前の四半期(2024年Q4)では企業の設備投資が減少に転じ、在庫の積み増し(在庫投資)も鈍化したために民間投資全体が伸び悩んでいました。しかし2025年Q1にはその反動で民間投資が活発化しています。特に企業の設備投資が前期比年率で約10%近い大幅増加となり、生産拡大に向けた機械・設備への支出が増えました。また企業が在庫を積み増したことも民間投資の押し上げ要因となりました(在庫投資がGDP成長率に大きくプラス寄与しました)。住宅投資は小幅な増加にとどまりましたが、設備投資と在庫の動きにより民間投資全体としてGDPを押し上げる結果となりました。
政府支出
政府支出(政府消費支出および公共投資)はGDPの約15%程度を占める部門です。直近の四半期では政府支出がわずかながら減少に転じ、GDP成長率を下押しする要因となりました。前期(2024年Q4)は国防費の増加など政府支出が前期比プラス成長となり経済を支えていましたが、最新期ではその一時的な増加分が剥落しています。加えて、新政権下での連邦予算の見直しや支出抑制措置(例:政府支出の一部凍結や海外への軍事支援削減など)の影響で、2025年Q1の政府消費は前期比でマイナス成長(年率換算で約1~2%減)となりました。その結果、政府部門のGDPに対する寄与はマイナスとなり、全体の成長率をやや押し下げています。
純輸出(外需)
純輸出(輸出-輸入)は米国GDPにおいて恒常的にマイナス寄与(貿易赤字)となっている項目です。平時でも純輸出はGDP比で数%程度のマイナスですが、最新の四半期ではその赤字幅が大きく拡大しました。これは輸入の急増によるものです。2025年Q1には、将来の関税引き上げを見越した駆け込み需要なども背景に輸入が異例の増加(前期比年率で約40%以上の急伸)となり、輸入の増加がGDPを大きく押し下げました(GDP算出上、輸入の増加はマイナス要因)。輸出も増加しましたが(同約5%程度の伸び)、輸入の増加幅には及ばず、純輸出全体では赤字拡大によりGDP成長率に対して約-4~-5%ポイントという大幅なマイナス寄与となりました。つまり純輸出はこの四半期のGDPを大きく引き下げる最大の要因となっており、外需(海外との交易)が経済成長のブレーキとなった形です。
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