ドル価値希薄化がもたらす基軸通貨体制の変容

はじめに

現在の国際金融体制では、米ドルが世界の基軸通貨として圧倒的な地位を占めています。しかし、今後もしドルの価値が継続的に希薄化していくとすれば、世界の基軸通貨体制にはどのような変容が起こりうるでしょうか。本稿では、この問いをヘーゲル的およびマルクス主義的な弁証法の観点から検討します。すなわち、「テーゼ(現状)→アンチテーゼ(問題の顕在化)→ジンテーゼ(新たな統合)」という弁証法的展開に沿って、ドル体制の現状と内在する矛盾、そしてそれを止揚した新たな通貨体制の展望について論じます。

ヘーゲル哲学の弁証法では、ある状態(テーゼ)とそれに対立する状態(アンチテーゼ)との葛藤を経て、両者を高次で統合する新たな状態(ジンテーゼ)へと至るとされます。マルクス主義の歴史観もまた、経済体制が内包する矛盾が危機を生み、革命的な変化を通じてより発展した体制(ジンテーゼ)へ移行すると考えます。通貨の世界においても、歴史的に基軸通貨の覇権は永続せず、内外の矛盾が蓄積すると体制転換が起きてきました。本稿では、過去の基軸通貨の歴史的変遷を概観したうえで、現行ドル体制のテーゼ(現状)とその内部に孕まれたアンチテーゼ(矛盾)を明らかにし、最後にそれらを総合した未来のジンテーゼ(新たな基軸通貨体制)を展望します。

基軸通貨の歴史的変遷

世界の基軸通貨体制は、時代の覇権国の興亡とともに変遷してきました。19世紀には金本位制が確立し、金そのものが「世界貨幣」として機能しました。この時代には大英帝国が経済・軍事で覇権を握り、イギリス・ポンドが金と結びついた基軸通貨として世界貿易と金融を支配しました。ロンドンは国際金融の中心地となり、ポンドは信用力と安定性から広範に受け入れられていたのです。

しかし、20世紀前半に二度の世界大戦と大恐慌を経験すると、イギリスの国力とポンドの信認は徐々に低下しました。代わって台頭したのがアメリカ合衆国です。米国は戦争で本土が被害を受けず経済力を飛躍的に伸ばし、潤沢な金保有高を背景に戦後の国際通貨体制の設計を主導しました。1944年のブレトンウッズ協定の下、米ドルは金1オンス=35ドルの比率で交換を保障され、各国通貨はドルとの固定相場制に入る金・ドル本位制が発足しました。こうして米ドルは英ポンドに代わり公式に世界の基軸通貨となりました。

ブレトンウッズ体制下、ドルは安定した価値基準として戦後復興と世界経済成長を支えました。しかし米国の経済規模拡大と対外赤字の増大により、世界で必要とされるドル供給量が増える一方、それを支える金の保有量には限りがあり、この体制の内包する矛盾が次第に表面化しました。ついに1971年、当時のニクソン大統領はドルと金の交換停止(ニクソン・ショック)を宣言します。これによってブレトンウッズ体制は崩壊し、各国は変動相場制へと移行しました。

それでもなお、米ドルはその後も基軸通貨の地位を維持しました。米国はサウジアラビアなどとの協定により原油をドル建てで取引する「ペトロダラー体制」を築き、また巨大なアメリカ国債市場やニューヨークの金融資本市場が各国の余剰ドルを吸収する仕組みを整えました。米国の経済力・軍事力による信用に加え、取引通貨としての便宜やネットワーク効果もあり、ドルは変動相場制の下でも圧倒的シェアを占め続けています。実際、世界全体の外貨準備高の約6割はいまだドル建てであり、国際貿易決済や外国為替取引でもドルが半数以上を占めています。こうした事実は、基軸通貨が単に経済規模だけでなく「国際的な信認」と体制の安定に寄与することが各国に共有されていることを示しています。

このように、基軸通貨は歴史的に見て当該時代に最も経済力・信用力を備えた国家の通貨が担ってきました。そしてその価値が金など普遍的な資産で裏付けられていることや、世界的な金融市場の整備、軍事・外交上の影響力も、基軸通貨の選択に大きな役割を果たしてきたのです。しかし同時に、どんな覇権通貨も永遠ではなく、覇権国の相対的地位低下や体制内部の矛盾が深刻化すると、新たな通貨体制への移行が避けられなくなることも歴史が示しています。

テーゼ:現行ドル基軸体制の現状

現行の国際通貨体制は、米ドル一極集中体制とも言える状況にあります。米ドルは各国の中央銀行の外貨準備の約6割を占め、国際貿易や投資の決済通貨としても支配的です。こうしたドルの支配的地位は、米国経済の規模と市場の厚みに加え、第二次大戦後に構築されたブレトンウッズ体制以来の歴史的な信頼によって支えられてきました。ドル建て資産(米国債など)は「安全資産」とみなされ、危機の際には世界中の資金がドルに避難する傾向すらあります。言い換えれば、ドルは国際経済の要として機能し、その信用は各国によって暗黙のうちに担保されているのです。

このドル基軸体制の下、米国は「覇権通貨国」の特権と責務を担っています。一つには、米国は基軸通貨を発行することで通貨発行益(シニョリッジ)を享受し、経常赤字や巨額の財政赤字を比較的容易にファイナンスできます。実際、アメリカ政府債務残高はGDPを上回る水準に達していますが、ドルへの信認を背景に低金利で資金調達が可能です。他方で、米国には世界に十分な流動性を供給し、金融システム安定を図る責務もあります。ドルが世界の決済や投資の潤滑油となっているため、FRB(米連邦準備制度)は事実上「世界の中央銀行」としての役割を果たし、危機時には他国の中央銀行にドルの通貨スワップを提供するなど、基軸通貨国としての責任を負っています。

またドル体制は、米国に強大な地政学的影響力も与えています。国際決済ネットワーク(SWIFTなど)や銀行取引でドルが基盤となっているため、米国は制裁措置として特定国をドル決済網から排除することすら可能です。基軸通貨が単一国家によって支配されていることで、経済のみならず外交・安全保障面でもその国に強大な「構造的権力」が集中するのです。一方で、世界全体にとっては、基軸通貨が一本化されていることで取引コストが下がり、各国が共通の価値基準を用いるメリットがあります。いわばドルはグローバル経済の公用語として機能し、その存在自体が国際経済の安定に寄与してきたと言えるでしょう。

総じて、テーゼとしての現行ドル基軸体制は、米国の経済的覇権と各国の信認を土台に成立し、世界経済に利便性と一定の安定をもたらしてきました。しかしこの盤石に見える体制の内部には、やがて顕在化する矛盾も潜んでいます。その矛盾こそが次のアンチテーゼとして浮上しつつあるのです。

アンチテーゼ:ドル体制の矛盾と価値希薄化の兆候

盤石に見えたドル基軸体制ですが、その内部矛盾が徐々に表面化し、ドルの価値と覇権に陰りが見え始めています。第一に挙げられるのは、米ドルの過剰発行とそれによる価値の希薄化です。2008年の金融危機以降、米連邦準備制度(FRB)は量的緩和を繰り返し、さらに2020年のパンデミック対応では前例のない規模のドル供給が行われました。その結果、2020年代初頭には米国内で高インフレが生じ、ドルの購買力低下が世界的にも懸念されるようになりました。基軸通貨たるドルの安定価値が揺らげば、各国は安全資産としてのドルへの信頼を弱め、他の資産への分散を検討し始めます。実際、国際通貨基金(IMF)の統計によれば、各国中銀の外貨準備に占めるドルの割合は長期的に低下傾向にあり、かつて70%以上あったものが近年は6割を割り込んでいます。この変化は、ドルの相対的地位がゆっくりと希薄化していることを示唆しています。

ドル体制の抱える根本的ジレンマも無視できません。いわゆる「トリフィンのジレンマ」にあるように、一国の通貨を基軸通貨とする以上、米国は世界経済の流動性需要を満たすために経常赤字を出し続けざるを得ません。しかし赤字と対外債務の累積は長期にはドルへの信認を損ないかねず、安易なドル供給拡大は通貨価値の希薄化と信用低下を招きます。この矛盾は、ドルが基軸通貨であり続ける限り構造的に存在し、いずれ臨界点に達すれば体制の根幹を揺るがすリスクとなります。米国の巨額の政府債務や財政赤字の持続は、将来のドルの実質価値に対する市場の不安を高めつつあります。

さらに、米ドル覇権に対する地政学的・国際政治的な逆風も強まっています。近年、アメリカは自国の制裁外交の一環で、金融制裁として相手国をドル決済網から締め出す措置を度々講じています。とりわけ2022年のロシアに対する厳しい金融制裁では、ロシア中央銀行が保有する巨額のドル資産が凍結されました。この出来事は各国に衝撃を与え、「いざという時にドル資産は使えなくなる可能性がある」というリスク認識を広めました。その結果、中国やインドをはじめとする新興国・資源国では、ドル依存を減らし自国通貨や第三国通貨で取引を行う「脱ドル化」の動きが加速しています。中国とロシアはエネルギー取引で自国通貨建て決済を拡大し、中国は「デジタル人民元」を発行してクロスボーダーでの人民元利用を促進しています。また湾岸産油国と中国との間で人民元建ての原油取引(いわゆる“ペトロ人民元”)も徐々に増えてきました。こうした動きはドルの国際的役割を徐々に低下させ、基軸通貨体制の多極化につながる兆候です。

欧州に目を転じれば、ユーロもまたドル依存の軽減に一役買っています。EUは統一通貨ユーロの国際化を進め、域内貿易や対外取引でドルではなくユーロを用いる比率を高めてきました。ユーロは現在、世界の外貨準備の約2割を占める第二の国際通貨となっています。もっとも、ユーロ圏は金融・財政政策の統合不足や加盟国間の経済格差といった内部問題を抱えており、ドルに代わる単一の基軸通貨に昇格するには限界もあります。それでも、ユーロの存在は各国がドル以外の選択肢を持つことを可能にし、結果的にドル一極体制の相対的弱体化に寄与しています。

最後に、民間発の通貨革命とも言える仮想通貨や金融テクノロジーの進展も、現行体制へのアンチテーゼとして注目されます。ビットコインに代表される暗号資産(仮想通貨)は、国家の信用に依存しない分散型の通貨を志向しており、法定通貨の乱発やインフレに対するヘッジ手段として台頭しました。一部の新興国や民間企業では、ドルに替わる価値保存手段としてビットコインやステーブルコインを採用する例も出ています。ただし、仮想通貨は価格変動が極めて大きく、信用供与の手段としては未成熟です。しかし各国の中央銀行もデジタル通貨(CBDC)の研究を進めており、将来的に国際送金や決済の在り方がブロックチェーン技術などで一変すれば、ドルの独占的地位が揺らぐ可能性があります。

以上のように、ドル基軸体制に対する不信や対抗軸が様々な形で現れ始めています。アンチテーゼとして浮上したこれらの力は、ドルというテーゼを揺さぶり、その価値と支配力を希薄化させつつあります。次節では、こうした動きを受けて登場しうる新たな通貨体制(ジンテーゼ)について考察します。

金の役割と復権の可能性

金(ゴールド)は、人類の通貨史において常に特別な地位を占めてきた資産です。前述のように19世紀には金本位制が採用され、各国通貨は保有する金に対する交換を保証されていました。金は希少性と不変性ゆえに「普遍的な価値」を持つと信じられ、国家を超えた信用の裏付けとして機能しました。しかし20世紀後半に各国は金本位制を離脱し、現代ではどの主要通貨も金による裏付けを持っていません。

それでもなお、金は現在も「準通貨的」な価値を持つ資産として意識されています。各国の中央銀行は外貨準備の一部に金地金を保有し、民間投資家もインフレヘッジや有事の避難先として金を重視します。法定通貨が乱発され価値が下がる局面では、相対的に供給の制限された金の価格が上昇しやすく、金は「価値の保存手段(ストア・オブ・バリュー)」として威信を示します。事実、2022年には世界の中央銀行による金の購入量が過去数十年で最大となり、ドル資産から金へのシフトが起きていることが示唆されました。特に、米ドルによる対ロシア制裁を契機にロシアや中国が外貨準備の一段の分散を進め、金準備を積み増す傾向が見られます。

金本位制への回帰可能性についても議論があります。米国内では、近年のインフレ高進を受けて、通貨の信用を回復するため金本位制への復帰を検討すべきだという主張が一部で台頭しました。例えば保守派シンクタンクが2025年に向けた政策提言で金本位制復活の研究を呼びかけるなど、ドルの将来に不安を抱く向きが金を再び通貨システムの中心に据える案を支持しています。しかし、現実問題として純粋な金本位制を復活させるハードルは極めて高いと言わざるを得ません。現在の世界経済規模に対して金の供給量は乏しく、仮に各国通貨と金を固定交換比率で結べば、金の供給制約から深刻なデフレ圧力が生じる恐れがあります。また各国の金融政策は金保有量に縛られ、景気後退時の柔軟な財政金融政策が打ちづらくなるなど、経済運営上の制約が大きいのです。各国が自国経済の状況を度外視してまで金とのリンクを維持する国際協調を行えるかも疑問です。こうした理由から、全面的な金本位制復活は現実的ではないとの見方が大勢です。

しかしながら、金が今後も国際通貨体制で重要な裏付け資産として機能し続ける可能性は高いでしょう。ドルなど法定通貨への信認が揺らぐ局面では、部分的にでも通貨と金の紐付けを検討する動きが出るかもしれません。例えばIMFの特別引出権(SDR)の価値算定に金を加える案や、新興国間で金やコモディティと連動したデジタル通貨を発行するといった構想も取り沙汰されています。金そのものが再び基軸「通貨」として復権する未来像は定かではないものの、「最終的な価値の錨(アンカー)」として金の存在感が増すシナリオは十分考えられます。ドル基軸体制の揺らぎに対する保険として、金はこれからも各国にとって戦略的資産であり続けるでしょう。

ジンテーゼ:多極・デジタル時代の新たな通貨体制

ドル基軸のテーゼとその矛盾から立ち現れたアンチテーゼを経て、最終的に模索されるジンテーゼは、「単一通貨覇権から多極的・分散的な通貨体制への転換」であると考えられます。この新たな通貨体制では、一国の通貨に過度に依存することなく、複数の主要通貨や国際的なデジタル通貨が併存し、相互に補完し合う仕組みが構想されます。

具体的には、米ドル・ユーロ・人民元といった複数の基幹通貨が国際準備資産として並立し、それぞれの経済圏で決済や価値保存の役割を担うシナリオが考えられます。例えば、貿易取引では取引相手国の通貨や第三の基軸通貨を柔軟に選択できるようになり、各国は外貨準備をドル一辺倒ではなく複数通貨バスケットで管理するようになるでしょう。ドルは依然重要な地位を占めるものの、そのシェアは低下し「一極」から「同格の中の第一(first among equals)」へと位置づけが変わるかもしれません。他方で、新興国は自国通貨の国際化を進め、地域的な金融圏(例えばアジア通貨圏など)が形成され、地域内貿易・投資で自地域の基軸通貨を使う動きが強まる可能性があります。

また、国際機関主導による新たなグローバル通貨の創設もジンテーゼの一形態として考えられます。国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)を拡充して実質的な世界通貨とする案や、主要国の中央銀行が協調してデジタル通貨を発行する構想です。実際、2019年には当時イングランド銀行総裁のマーク・カーニー氏が、ドルに代わる基軸通貨として主要国通貨のバスケットに基づく「合成覇権通貨(SHC)」というデジタル通貨の創設を提唱しました。これは各国通貨を一つの単位に統合し、世界規模で通用するデジタル通貨を作ることで、ドル一極体制の弊害を緩和しようという試みです。こうしたアイディアが実現すれば、各国は特定の国家の信用に極度に依存せずに済み、グローバルに安定した価値基準を共有できる可能性があります。

デジタル技術の進展は、新通貨体制の実現を後押しするでしょう。各国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)が普及し、相互接続されれば、異なる法定通貨間の交換や決済が瞬時かつ低コストで行えるようになります。それにより、市場参加者は取引の都度最適な通貨を選択でき、一つの基軸通貨に依存する必要性が薄れていきます。ブロックチェーン技術やスマートコントラクトを活用した分散型の決済ネットワークが確立されれば、国家の壁を越えた「通貨のインターネット」が実現し、現在ドルに集中している国際準備や決済システムが分散化されるでしょう。

このジンテーゼにおける鍵は、調和ある多極化です。一国支配のテーゼを否定した結果として単なる無秩序な通貨分散に陥るのではなく、主要国・機関が協調して新たな枠組みを設計・管理することが理想です。例えば、複数通貨体制の下でも各通貨の安定を維持するため、主要中央銀行間で為替スワップや市場介入の協調が行われるかもしれません。あるいは、新たな国際協定(「第二のブレトンウッズ」)を結んで、為替の過度な変動を抑制しつつ各国が柔軟に流動性供給できるルールを定めることも考えられます。ジンテーゼとしての通貨体制は、テーゼの利点(利便性・統一的基準)を活かしながら、アンチテーゼで顕在化した問題(過度な偏りや信用リスク)を克服する形で構築される必要があります。

もちろん、このような移行は容易ではなく、過渡期には混乱も予想されます。基軸通貨の交代劇は歴史的に見ると戦争や経済危機など劇的な過程を伴ってきました。ドル体制から新体制への移行も、緩やかなパワーシフトの中で徐々に進行する可能性もあれば、ドル危機のような急性のショックにより一気に加速するシナリオもあります。望ましいのは、各国が対立ではなく協調によって漸進的に通貨体制の改革を進めることでしょう。そうすれば、極端な混乱を避けつつ、世界経済は次のステージへと円滑に移行できるはずです。まさに弁証法的な止揚として、旧来のドル覇権とその反動から、新たな統合的通貨秩序が創出されることが期待されます。

要約

  • ドル基軸体制の現状(テーゼ): 第二次大戦後、米ドルが世界の基軸通貨として君臨し、国際取引や外貨準備を事実上一極支配してきた。これは米国の経済力と信用、そして単一通貨による利便性に支えられている。
  • ドル体制の矛盾と揺らぎ(アンチテーゼ): 過剰なドル供給や米国債務の膨張によるドル価値の希薄化、トリフィンのジレンマが内在する。また米国による制裁乱用への反発から各国で「脱ドル化」の動きが進み、人民元やユーロ、さらには仮想通貨などドル以外の選択肢が台頭しつつある。
  • 金の役割: 金本位制は過去の遺産となったが、金は依然として各国にとって価値の保存手段として重要。ドル不信が高まれば金の相対的重要性が増し、各国中銀は金準備を増やしている。完全な金本位制復帰は非現実的だが、金は今後も通貨価値の最後の拠り所として機能する。
  • 新たな通貨体制の展望(ジンテーゼ): 将来はドル一極支配が緩み、複数の基軸通貨やデジタル通貨が共存する多極体制に移行する可能性が高い。米ドル・ユーロ・人民元などが役割を分担し、国際機関主導のデジタル通貨やCBDCネットワークがそれを補完することで、単一通貨への過度な依存を避けつつ安定を図る新秩序が模索されている。
  • 歴史の弁証法的進展: このような新体制への移行は、テーゼ(ドル覇権)とアンチテーゼ(その矛盾)の相克を経て生まれるものであり、過去の英ポンドからドルへの交替になぞらえれば、対立する二者を止揚したより高度な統合として位置付けられる。今後、協調的かつ漸進的な移行によって世界経済の安定が維持されることが望まれる。

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