- 臨床試験・実臨床での頻度: リベルサス(経口セマグルチド)の臨床第III相試験(PIONEER 試験群)では、便秘が報告されています。例えば、日本人を対象としたPIONEER 9・10試験では、経口セマグルチド服用群で便秘が約9~15%に認められました。海外の大規模試験でも概ね同程度の頻度とされ、重篤例は少ないものの少数の患者で発生します。市販後の実臨床でも便秘はしばしば報告されており、メーカーによる添付文書などでも「常発性(Common)」の副作用として挙げられています。
- 便秘発生のメカニズム: GLP-1受容体作動薬であるリベルサスは胃腸運動を抑制する作用があります。具体的には、胃内容排出を遅らせ、小腸大腸の蠕動(ぜんどう)運動を低下させるため、消化管内を食べ物が移動する速度が遅くなります。その結果、排便回数の減少や便が固くなるなどして便秘を招きやすくなります。医療情報サイトや専門家も、GLP-1薬は「胃をゆっくりさせる」作用が便秘の主要因であると指摘しており、服用開始後や用量増量後に便秘症状が現れやすいとされています。さらに、GLP-1受容体作動薬は腸脳(Enteric nervous systemや迷走神経など)にも影響を及ぼし、腸のリズムやセロトニン分泌にも変化が生じる可能性が指摘されています。これらの作用によって、リベルサス服用患者には下痢よりも便秘が起こりやすい傾向が報告されています。
- 因果関係に関する見解: リベルサスと便秘の因果関係は、GLP-1受容体作動薬全般の作用機序から理論的にも支持されています。臨床現場や学会資料では、リベルサスが原因で便秘が生じたと考えられる症例も報告されています。製薬会社の医療従事者向け情報や医薬品添付文書では、消化管運動低下による便秘をリベルサスの副作用として明記しており、臨床試験でもプラセボ群より発現頻度が高いとされています。現時点でリベルサス単独と便秘発生の直接的な検証研究は限られていますが、GLP-1クラス薬全体で一致した副作用プロファイルが確認されていることから、因果関係は一般に認められていると考えられます。医師による解説や国内外の医療機関情報でも「胃腸運動遅延が主因」として便秘を注意すべき副作用とみなしています。
- 他GLP-1受容体作動薬との比較: GLP-1受容体作動薬は口腔投与型(リベルサス)も注射型(例えばセマグルチド注射製剤OzempicやWegovy、リラグルチド、デュラグルチドなど)も同様に消化管運動を遅くします。便秘リスクに関しては、使用剤や投与量で差があり得るものの、クラス効果としていずれも発現します。体重管理用の高用量セマグルチド注射(Wegovy)では便秘の発現率が20%以上報告されており、糖尿病用セマグルチド注射(Ozempic)でも数%程度で認められています。リベルサスの場合、前述のPIONEER試験などでは5~15%程度とされ、注射製剤と同程度かやや低い傾向です。メタ解析によれば、経口型・注射型を問わず同じGLP-1剤では総じてGI副作用発現率に大きな違いは認められておらず、リベルサスも他剤と同様の範囲で便秘リスクがあるとされています。いずれにせよ、GLP-1受容体作動薬全体で便秘は代表的な副作用の一つであり、用量漸増で症状が緩和しやすいこと、十分な水分・食物繊維摂取などで対策可能なことが知られています。
リベルサス(経口セマグルチド)と便秘

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