リベルサス(経口セマグルチド)の副作用

よくある副作用と発現頻度

  • 胃腸症状:最も頻度が高く、吐き気・嘔吐・下痢・便秘・腹痛などが挙げられます。臨床試験(PIONEER試験群)では、14mg群で約20%が吐き気を訴え、下痢は約10%、嘔吐約6~8%、便秘約5~6%に認められました。用量を増すほど発現率は上昇する傾向にあります。
  • 食欲減退:セマグルチドの食欲抑制作用により起こり、7mg群で約6%、14mg群で約9%の患者に見られています。
  • その他:頭痛、めまい、倦怠感なども報告されますが比較的軽度で経過しやすい副作用です。

重篤な副作用の種類と頻度・対処

  • 急性膵炎:非常にまれですが報告があります。PIONEER試験のプール解析ではリベルサス群で発生率は0.1例/100人年程度で、プラセボ群とほぼ同等でした。膵炎が疑われる場合(持続する激しい上腹部痛など)は直ちに服用を中止し、速やかに医療機関受診が必要です。
  • 胆石症・胆嚢炎:急激な体重減少に伴う胆石形成のリスク増加や、GLP-1作用による胆汁流出抑制の可能性が指摘されています。臨床試験では胆石の発生率は約1%で、プラセボと大差ありませんでしたが、発熱・黄疸・右季肋部痛などが出現した場合は医療機関を受診します。
  • 腸閉塞様症状:極めてまれですが、腸管の蠕動抑制による疑似閉塞(イレウス)の報告例があります。持続する腹痛・嘔吐・腹部膨満感が続くときは注意が必要です。
  • その他:副作用による脱水から腎機能障害が起こることがあります。低血糖は単独では起こりにくいですが、インスリンやスルホニル尿素薬併用時には注意します。アレルギー反応や膵炎に付随するような重篤な症状(急激な嘔吐、意識障害など)が出た場合も直ちに医療機関へ連絡します。

臨床試験・実臨床データ

  • 海外データ:PIONEER試験(グローバル臨床試験群)では、消化器系副作用の発現が多く報告されました。服用中止の主な原因も胃腸症状で、14mg群では約8%が副作用で治療中断に至りました。一方、重篤な副作用は少なく、膵炎や胆石はプラセボ群とほぼ同頻度でした。欧米での市販後調査でも、吐き気や下痢などの軽度消化器症状が中心で、重篤例は極めて稀とされています。
  • 日本データ:日本人を対象としたPIONEER5試験や実臨床(PIONEER REAL Japan)でも同様の傾向があり、消化器症状が最多でした。日本の市販直後調査(発売後6ヶ月間)では599例中878件の副作用報告があり、吐き気・嘔吐・下痢などの消化器症状や、これらに伴う脱水による腎障害が報告されています。重篤な副作用例は12例(腸閉塞を含む)でいずれもまれな発現でした。

副作用のメカニズム(特に消化器系)

  • 胃腸動態への影響:セマグルチドはGLP-1受容体作動薬で、胃の内容物排出を遅延させる作用があります(胃排出遅延)。これにより満腹感が早く現れる半面、食後のもたれや吐き気を引き起こしやすくなります。また、腸管の蠕動運動も抑制されるため、便通異常(下痢・便秘)につながります。これらの作用は投与初期や用量増量時に強くあらわれる傾向があり、継続により次第に慣れて軽減することが多いです。
  • 中枢作用:GLP-1受容体は脳にも存在し、満腹中枢を刺激して食欲を抑制します。この中枢作用により、吐き気感やめまいを引き起こすことも考えられています。
  • 膵臓・胆道への影響:GLP-1は膵β細胞を増殖させるほか、膵酵素分泌も促す可能性があります。このため、膵管内圧が高まって膵炎を誘発する仮説があります。また、胆のうの運動低下や胆汁成分変化によって胆石形成リスクが高まるとも言われています。動物試験では胆のう上皮細胞増殖が確認されており、人での胆石リスク増加を示唆する報告もあります。

副作用軽減の対策・服薬指導上の留意点

  • 服用方法の徹底:必ず指示通り「空腹時の朝・少量の水(120mL以内)で服用し、服用後少なくとも30分は飲食・他の内服薬を避ける」ことが重要です。これにより薬の吸収が安定し、副作用リスクが低減します。
  • 段階的増量:初期は3mgから開始し、4週間後に7mg、その後さらに必要時には4週間以上7mgを継続してから14mgへ増量します。ゆっくり増量することで胃腸への負担を和らげ、吐き気・下痢などの発現を抑制します。医師の指示なしに自己判断で用量変更せず、副作用が強い場合は一時的に増量を見合わせることもあります。
  • 食事・生活上の工夫:脂肪分や刺激の強い食事は胃腸に負担がかかりやすいため、避けるよう指導します。食事は少量ずつ良く噛んでゆっくり摂り、食後すぐに横にならないようにします。また、脱水防止のため、下痢・嘔吐時には水分をこまめに少量ずつ摂取することが大切です。胃もたれや吐き気が強い場合は、市販の制吐薬や胃薬の使用を医師に相談の上で検討しても良いでしょう。
  • 併用薬・低血糖対策:他の血糖降下薬(特にインスリンやSU薬)との併用時は低血糖リスクが上昇します。併用薬の減量や血糖自己測定での注意、低血糖時のブドウ糖摂取法の指導を行います。

まとめ

リベルサスの副作用では、消化器系症状(吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹痛など)が最も一般的で、用量依存的に出現しやすい点が特徴です。発現率は用量や個人差がありますが、14mg投与群で吐き気約20%・下痢約10%・嘔吐約8%と報告されています。重篤な副作用(急性膵炎や胆石症など)はまれで、臨床試験ではプラセボ群と同程度の低頻度でした。しかし、持続する激しい腹痛・黄疸・発熱などが生じた場合は直ちに受診が必要です。副作用の発現機序は、GLP-1による胃排出遅延や中枢性満腹作用が大きく関与しており、これらが吐き気や食欲低下を引き起こします。対策としては、服用方法の徹底(空腹・少量水・段階的増量)と食事・生活習慣の工夫が重要で、これにより多くの副作用は軽減可能です。万一重い副作用が起きても、自己判断で中断せず医師・薬剤師に相談することが大切です。

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