FOMC会合と利下げ決定
連邦準備制度(FRB)は9ヶ月ぶりに政策金利を0.25%引き下げたが、パウエル議長は記者会見でインフレ再燃を強く懸念して慎重姿勢を示した。報道によれば、この利下げはあくまで「念のため」の措置であり、インフレ抑制が依然として最優先課題とされている。
トランプ関税の影響
トランプ政権による追加関税措置で当初は物価上昇圧力が懸念されたが、パウエル議長は「消費者にとって関税から来る物価上昇圧力は今のところかなり少ない」と述べ、予想されていたほどの急激な影響は見られないと指摘した。実際、関税導入から半年が経過しても消費者物価指数(CPI)は依然2%台前半で推移しているが、わずかながら上昇基調にある。
インフレ率上昇の要因
今年に入り米国のインフレ率(前年比)は約2.9%となっており、パウエル議長もその着実な上昇を認めている。こうしたインフレ上昇は主に「物価(商品の価格)」によるもので、耐久財・非耐久財価格の両方で春以降インフレ率が高まっていると指摘された。具体的には:
- 物価インフレ:パウエル氏によれば、今年のインフレ率上昇の大部分(あるいは全て)がサービスではなく「物品の価格上昇」によるものである。
- 耐久財・非耐久財の動向:自動車や家電などの耐久財と、日用品や衣料品などの非耐久財の両方で春頃からインフレ率が上昇トレンドにあり、特に非耐久財がCPI全体の上昇を牽引している可能性がある。
- PPI(生産者物価指数):企業が仕入れる商品の価格を示すPPIでは消費者物価ほど急激な上昇は見られず、これらが直接的にインフレをけん引しているとは明確に言い難い。
- 輸入物価:関税の影響を受ける輸入物価も上昇は限定的で、現在のところCPIほど顕著な上昇傾向は確認できない(関税による物価押上げ効果は当初想定より小さい)。
パウエル議長の見解と見通し
パウエル議長は、現在のインフレ上昇は主に国内要因によるものであり、関税やドル相場の変動による影響は今のところ限定的だと分析している。ただし、これらの外部要因は年末から来年にかけて累積的に影響を及ぼす可能性があるとも指摘した。今後の見通しとして:
- ドル安の影響:金融緩和が進めばドル安が進行し、輸入物価が上昇する。すると、現在約2.9%となっているインフレ率はさらに上昇圧力を受ける見込みである。
- 今後のインフレ圧力:パウエル議長は「年末以降、関税と為替の影響が重なることでインフレ圧力が高まる」との見方を示している。
- 長期的な見通し:一部で指摘されるレイ・ダリオ氏の「長期的なドル安」シナリオが実現すれば、米国のインフレはより一層高まる可能性がある。
まとめ
まとめると、パウエル議長は今回の利下げに際しインフレ抑制の必要性を強調しており、米国のインフレ率は今後上振れするリスクがあると見ている。直近のインフレ上昇は主に国内的な需要などによるもので、トランプ関税など外部要因の影響はまだ小さい。しかし今後ドル安が進めば輸入価格が上昇し、インフレ率はさらに高まる公算だ。こうした状況下では、いわゆる「米国版アベノミクス」のような大規模な金融緩和政策が実施されれば、最終的に物価上昇圧力が一段と強まる可能性がある。
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