タワマンを息子の法人に売る場合の税金周りの注意点

以下では、40年前に取得したタワーマンション(高層マンション)を、息子が100%出資する法人へ固定資産税評価額で売却する場面を想定し、譲渡所得を小さくするために取得費を正しくかつ可能な限り多く算入する方法を、国税庁の資料を基に整理します。

1. 譲渡所得の計算式と取得費の考え方

  • 不動産を売った際の譲渡所得は、売却代金から「取得費」と「譲渡費用」、特別控除を差し引いて計算します。
  • 取得費とは、土地・建物を買った際の購入金額や手数料、設備費などの合計額ですが、建物については経年で価値が減少するため、購入代金から減価償却費相当額を差し引いた額が取得費になります。

2. 取得費に含められる費用(取得費の内訳)

国税庁は取得費に含まれる主な項目を以下のように列挙しています。これらを正確に集計することで取得費を高めることができます。

  • 購入代金・建築代金:土地や建物そのものの購入価格。建物は減価償却後の額を用います。
  • 仲介手数料・購入時の手数料:不動産仲介業者への手数料など。
  • 設備費・改良費:キッチンやバスルームの更新、増築、バリアフリー化など資産価値を高めるためのリフォーム費用。
  • 登録免許税や不動産取得税等の税金:登記費用を含む登録免許税、不動産取得税、印紙税など。
  • 立退料等:借主を退去させるために支払った立退料。
  • 土地の造成費・測量費:埋め立てや土盛り、地ならし、測量費用。
  • 所有権を確保するための訴訟費用
  • 建物付土地の取り壊し費用:土地利用が目的で建物付き土地を購入し、1年以内に建物を解体した場合の建物取得費と解体費。
  • 購入資金の利子:取得資金にかかった借入金の利子のうち、実際に使用開始する日までの期間分。
  • 契約解除の違約金:他の物件購入のために契約を解除した際の違約金。

これらの費用は領収書や契約書等で証明する必要があります。また、事業所得の経費に算入したものは取得費に含められません。

3. 建物の取得費の計算(減価償却)

建物部分の取得費は購入代金から減価償却費相当額を差し引きます。自宅などの非業務用建物の場合、国税庁は次の計算式を示しています。

減価償却費相当額 = 建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
※償却率は耐用年数の1.5倍を基に旧定額法で決まります。
※経過年数の端数は6か月以上を1年、6か月未満を切り捨てます。
※減価償却費相当額は取得価額の95%が上限です。

築40年の高層マンションは鉄筋コンクリート造で法定耐用年数(47年)前後が適用されるため、建物価格の大部分が減価償却されている可能性があります。購入価格や当時の契約書が残っていれば、この計算式で正確に減価償却費を求めることが取得費の上乗せにつながります。

4. 概算取得費の特例(取得費が分からない場合)

購入からかなり年数が経過し、購入代金や領収書が残っていない場合は「概算取得費の特例」を利用できます。国税庁は、取得費が分からない場合や実際の取得費が売却価額の5%未満の場合、売却価額の5%を取得費とすることを認めています。この特例を利用する場合は、実額での取得費計算との併用はできず、5%を取得費とするか実額を用いるかを選択します。

売却代金を固定資産税評価額とした場合、その評価額の5%が概算取得費となります。ただし固定資産税評価額は一般的に市場価値より低いため、取得費の額も相対的に小さくなる可能性があります。可能であれば、実際の購入費用やリフォーム費用などの領収書を集め、実額で申告した方が取得費を大きくできるケースが多いです。

5. 関係会社への低額譲渡に対する注意点

息子が全株を持つ法人に固定資産税評価額で売却する場合、売却価額が実勢価格より著しく低いと「特殊関係者間の不等価交換」とみなされ、差額が贈与と見なされて贈与税の対象になることがあります。国税庁は、兄弟間で時価5,000万円の土地を時価2,000万円の土地と交換したケースについて、時価差額3,000万円が贈与に当たるため、交換取得者の譲渡収入金額とはならず別途贈与税が課税されると述べています。親子会社間の売買でも同様のリスクがあり、売却代金を市場価値に近づけるなどの適正な価格設定が求められます。

6. まとめとアドバイス

  1. 購入時の資料を探す:40年前の売買契約書や領収書、登記費用の納付書、リフォームの請求書などを可能な限り収集し、購入代金・改良費・税金等を取得費として計上します。
  2. リフォーム・改良費の把握:過去の大規模修繕や設備更新費用は取得費に含まれるため、領収書があるものはすべて計上します。
  3. 減価償却費の計算:建物の購入代金が分かる場合は、法定耐用年数に基づき減価償却費を算出し、取得費に反映します。
  4. 概算取得費の利用:資料が残っていなければ、売却価額の5%を取得費とする特例を使うことも可能です。
  5. 贈与税リスクを考慮:親族会社への低額譲渡は贈与とみなされる場合があるため、売却価額は実勢価格を参考に決めることが望ましく、適正な価格で取引を行ったうえで取得費を正しく計算することが重要です。
  6. 専門家への相談:長期間所有した不動産の売却では資料の整理や減価償却計算が複雑になるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

以上のように、取得費を適正にかつ可能な限り高く計上することにより、譲渡所得を減らすことができます。ただし、親族間での低額売買は贈与税の対象となる危険があるため、適正な時価での取引を心がけ、必要な手続きや計算は国税庁の指針に従って行ってください。

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