会計収益と税務上の益金不算入の弁証法的考察
企業会計における収益は、発生主義に従って企業が得た経済的価値を網羅的に計上し、投資家や債権者に公正な業績情報を提供することが目的です。株式の配当金や税金の還付金、資産の評価益なども損益計算書に収益として表れ、会計上の利益(収益-費用)を構成します。一方、法人税法に基づく税務会計は、公平な課税と経済政策の実現を目的とするため、会計上の収益の全てがそのまま課税対象とはなりません。代表例が受取配当金であり、「受取配当等の益金不算入制度」により一定割合を益金から除外します。
正(テーゼ):会計上の収益は課税対象になるべき
会計基準から見れば、配当金や評価益などは企業の経済的利益であり、利益計算に含めるのが当然です。配当金は他社株式投資の成果であり、税金の還付金も企業が受け取る現金収入です。また、保有資産の評価益は潜在的な価値上昇を示し、純資産を増加させるため投資家への情報開示上は重要です。この立場では、企業が得た経済的価値は網羅的に課税すべきであり、会計上の収益と税務上の益金は一致している方が公平だと考えます。
反(アンチテーゼ):二重課税の排除と政策目的による益金不算入
税務会計では、会計上の収益の中にも課税すると不合理となるものがあると考えます。受取配当金は、配当を支払う法人の利益剰余金から分配されますが、その剰余金はすでに法人税が課されているため、配当を受け取る側でも課税すれば同一所得に二重課税が生じます。そのため、株式の保有割合に応じて全額または一部を益金から除外し、二重課税の排除と企業グループ内資金移動の自由度を確保します。税金の還付金も、過払い税の返還にすぎないので益金に含めず、付随する利息部分のみ益金にします。さらに、資産の評価益や引当金の戻入益は、実際に売却や支払いが確定していない段階では実現していない利益とみなされ、税務上は原則として課税対象外とされます。これらは税の公平性や政策的配慮を優先した規定であり、会計上の収益との乖離が生じます。
合(ジンテーゼ):会計と税務の目的の統合
会計上の収益と税務上の益金不算入の違いは、情報提供を目的とする会計と、公平な課税を目的とする税法という二つの制度の目的の違いから生じています。企業は損益計算書で受取配当金や還付金を収益として認識することで投資家に透明な情報を提供しつつ、法人税の申告では別表4を用いて当期純利益から益金不算入を減算し、課税所得を調整します。このように、企業会計の発生主義と税務会計の実現主義・二重課税排除を調整する仕組みが整備されており、双方の目的を両立させています。
要約
- 会計上の収益には、配当金や税金の還付金、資産の評価益なども含まれる。
- 受取配当等の益金不算入制度は、配当が配当支払法人の利益から支払われ、既に法人税が課されていることから、二重課税を防止するために配当金の一定割合を課税所得から除外する制度である。
- 税金の還付金や資産の評価益なども実現していない利益や過払い税の返還であるため、税務上は益金に算入しない。
- 弁証法的には、会計は投資家への情報提供を重視する「正」に対し、税務は二重課税排除や政策目的を重視する「反」であり、別表4などを用いた税務調整によって両者を統合することが「合」となる。

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