テーゼ(命題):安全資産としてのTビルとバフェットの投資方針
- バークシャーは巨額のTビルを保有
2025年の第1四半期時点で、バークシャー・ハサウェイは約3,050億ドル(約3140億ドルとも試算)のTビルを保有し、米連邦準備制度理事会(FRB)の約1950億ドルを上回る規模となっています。この保有残高はTビル市場全体の約5%に相当し、バフェット氏は「適切な投資機会が現れるまで資金を保全し、即座に動けるようにする」と述べて、Tビルを現金代替物として利用している。 - Tビルの特徴
Tビルは米政府が発行する4週間〜1年の短期債で、利息は定期的に支払われず割引価格で発行され、満期時の償還差額が収益となります。米政府の信用を背景に世界で最も安全な資産の一つとされ、流動性が高く巨額資金の運用に適しています。 - 日本の証券会社で購入可能
日本の個人投資家も、SBI証券や楽天証券、マネックス証券などの外国債券取引口座を開設すれば、米国債を含むTビルを1,000米ドル程度から購入できるケースが多い。口座開設後は円を米ドルに交換して購入し、為替スプレッドが費用となります。多額の現金を預ける場合には、償還差益が米国では非課税、日本では雑所得扱いとなり雑所得税が課税される点を理解しておく必要があります。
アンチテーゼ(反命題):低金利・為替リスクと購入のハードル
- 利回りの限界
2025年7月時点でTビルの平均利回りは4%台前半と株式や長期債より低く、インフレ率を上回らない可能性がある。短期金利の低下局面では利回りも下がり、買い付け後に市場金利が上昇すると既存Tビルの価格が低下する金利リスクがある。 - 為替リスクと手数料
日本から直接米ドル建てTビルを購入すると、為替変動による損益が生じる。為替スプレッドや最低購入単位(一般的に1,000ドル)などのハードルもあり、個人投資家には負担が大きい。 - 投資対象の代替
証券会社によっては取り扱いが限られ、十分な流動性を持たない場合もある。米国短期債ETF(例:Solactive 1–3 Month US T-Bill Indexに連動する国内ETF)であれば、1単位数百円から購入でき、為替リスクや手数料を抑えながらTビルの運用成果を享受できる。ただし、ETF自体にも為替リスクや指数との乖離リスクがある。
ジンテーゼ(総合):Tビル投資の可能性と日本投資家に適したアプローチ
Tビルはバフェット氏が巨額の資金を保全するために選ぶほど安全性と流動性が高く、バークシャーのように投資機会を待つ姿勢の投資家にとって魅力的な資産です。日本の個人投資家も外国債券口座を通じてTビルを直接購入でき、為替を含めた幅広い資産分散が可能です。一方で、直接購入では為替コストや最低購入額といった障壁があり、利回りは魅力的とはいえません。国内上場の米短期債ETFを活用すれば、少額でTビルに近い運用を行え、為替リスクを円換算で抑える仕組みも利用できます。バフェット氏の投資戦略を参考にするなら、世界的な金融不安時には安全資産としてのTビルを保有し、魅力的な投資機会が現れた際に迅速に資金を振り向けるという柔軟な姿勢が鍵でしょう。
最終要約
バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイは、2025年に3,000億ドル超の米国財務省短期証券(Tビル)を保有しており、安全性と流動性を理由に株式市場の高い評価局面で現金の代替資産として活用しています。日本の個人投資家も外国債券取引口座を開設すればTビルを購入できるが、為替手数料・最低購入額や低利回りが課題です。また、Solactive 1–3 Month US T-Bill Indexに連動するETFなどを通じて少額からTビル相当の投資が可能で、為替リスクを抑えながら運用する選択肢も存在します。

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