**夜警国家(やけいこっか、Night-watchman state)**とは、国家の役割を極限まで限定し、国防、警察、裁判といった基本的な治安維持機能のみに特化した国家のことを指します。この概念は、**古典的自由主義(クラシカル・リベラリズム)や最小国家(ミニマル・ステート)**の思想に基づいています。
特徴
- 国家の役割の最小化
- 軍隊:外敵から国を守る
- 警察:国内の治安を維持する
- 裁判所:法の執行と紛争の解決を担う
- 上記以外の福祉・教育・経済介入などは原則として行わない
- 自由市場の尊重
- 経済活動は市場の自由競争に委ね、政府が介入しない
- 増税や福祉政策を避け、個人の自由を最大限に尊重
- 個人の自由と所有権の重視
- 国家の干渉を排し、個人の権利と自由を最大限に確保
- 財産権の保護を最優先する
背景・思想的ルーツ
- ジョン・ロック(17世紀):政府の役割は「生命・自由・財産」の保護に限定されるべきと主張
- アダム・スミス(18世紀):市場の「見えざる手」を強調し、政府の介入を最小限にすべきと考えた
- ロバート・ノージック(20世紀):著書『アナーキー・国家・ユートピア』で夜警国家を支持し、福祉国家を批判
批判・限界
- 社会的不平等の拡大
- 国家が福祉を提供しないため、貧困層への支援がなく、格差が拡大する
- 公共財の供給不足
- インフラ整備や教育・医療サービスが市場原理に任されるため、供給が不安定になる
- 市場の失敗への対応が困難
- 独占・環境問題・金融危機など、市場の失敗に対処する仕組みがない
現代における夜警国家の影響
完全な夜警国家は実現した例がほとんどありませんが、以下の国々では夜警国家的な思想が見られます:
- アメリカ(19世紀の初期):国家の役割が限定的で、自由市場を重視
- 香港・シンガポール(部分的に):低税率・規制の少ない経済政策
また、リバタリアニズム(自由至上主義)の支持者の中には、夜警国家を理想とする人々も多くいます。
まとめ
夜警国家とは、国家の役割を治安維持に限定し、それ以外の分野では個人の自由と市場の働きに委ねる国家体制です。しかし、現実には完全な夜警国家はほとんど存在せず、現代の国家はある程度の社会福祉や経済介入を行っています。
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