退職所得を確定申告書に記載すべきかどうか
通常、会社から退職金を受け取る際に**「退職所得の受給に関する申告書」**を勤務先に提出していれば、退職金に対する所得税・復興特別所得税は支給時の源泉徴収で精算済みとなり、その退職所得については原則として確定申告は不要です。しかし、給与所得など他の所得や医療費控除・寄附金控除の適用など別の理由で確定申告書を提出する場合には、退職所得の金額も確定申告書に記載する必要があります。したがって、退職金以外の所得で確定申告が必要な場合は、退職所得も申告書に漏れなく記載するようにしましょう。
また、平成31年(2019年)以降の税制改正により、確定申告書を提出する際には給与所得や退職所得、公的年金等の源泉徴収票の提出・提示は不要となっています。従来は紙で申告する場合、源泉徴収票の原本を「添付書類台紙」に貼り付けて提出する必要がありましたが、現在は申告書への添付省略が可能です。ただし、税務署から求められた場合に提示できるよう、退職所得の源泉徴収票は自宅で5年間保管しておくことが望ましいとされています。
確定申告書第一表・第二表での退職所得欄の扱い
退職所得は「申告分離課税」の所得(他の所得と分離して税額を計算する所得)となるため、確定申告書では通常の所得金額合計とは別枠で扱われます。確定申告書B様式第一表の上部には「総合」「分離」の区分欄があり、退職所得がある場合は「分離」の欄に○を付します。これにより、別途**申告書第三表(分離課税用)**を使用して退職所得の詳細を申告することになります。第一表の所得金額欄には、退職所得は他の所得と合算せず、必要に応じて第三表で計算した退職所得に係る税額を別途反映します(退職所得の税額は分離課税として算出されるため、総合課税の「合計所得金額」には含めません)。
申告書第二表には、所得の内訳や源泉徴収税額等を記載する欄があります。退職所得がある場合、第二表の「所得の内訳(所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額)」欄に退職所得に関する支払者名や支払金額、源泉徴収税額など該当事項を記入します。さらに、第三表の「退職所得に関する事項」欄で退職所得の計算明細を記載します。第三表の該当欄は退職手当等の種別ごとに区分されており、「一般」欄には一般退職手当等、「短期」欄には短期勤続(勤続5年以下)の退職手当等、「特定役員」欄には特定役員退職手当等に関する事項をそれぞれ記入します。該当する区分に、勤務先から交付された源泉徴収票の記載内容に基づいて支払金額、勤続年数に応じた退職所得控除額、課税退職所得金額などを転記します。これらの記入により、第三表上で退職所得の金額および税額を計算し、その税額を確定申告書第一表に反映させる形になります。なお、退職所得の金額計算は通常、「(支払金額 - 退職所得控除額) × 1/2」(特定役員退職手当等を除く)で算出されます。第三表への正確な記入方法については、国税庁の確定申告書作成の手引きや記載例を参照してください。
e-Taxで申告する場合の留意点
e-Tax(国税電子申告)を利用してオンラインで確定申告書を作成・提出する場合も、基本的な記入内容は紙の申告書と同じです。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、画面の案内に従って**「退職所得」欄に源泉徴収票の情報を入力することで、自動的に第三表を含む必要書類一式が作成されます。紙の提出と異なり、e-Taxでは前述のとおり退職所得の源泉徴収票そのものを税務署へ送付する必要はありません(電子申告の場合でも入力内容確認のため源泉徴収票は手元に保管**しておきます)。また、e-Taxでは送信後に受付結果(受信通知)を受け取ることができますので、退職所得を含む申告内容に誤りがないか最終確認するようにしましょう。万が一入力ミスに気付いた場合でも、後日「訂正申告」や「修正申告」の手続きで訂正が可能です。
最後に、退職所得に関する確定申告で特に注意すべき点として、他の退職手当等との重複があります。同一年中に複数箇所から退職金等を受け取った場合、退職所得控除額の計算が変わる可能性があるため(源泉徴収票の摘要欄に他の支払先情報が記載されます)、必ず全ての退職所得を合算して申告してください。不明点がある場合は国税庁の公式サイトや最寄りの税務署に用意されているガイドをご確認ください。以下に参考となる国税庁の関連ページへのリンクを示しますので、詳細な記載方法や計算方法については公式情報もあわせて参照してください。
- 国税庁タックスアンサー No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」
- 「確定申告の手引き」退職所得の記入方法(分離課税の第三表の記載要領)
- 国税庁 e-Tax における源泉徴収票の添付省略に関する案内
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