遺産分割協議書の作成が非弁行為(弁護士法違反)に該当するかどうかは、誰がどのような目的や状況で作成するかによります。一般的なポイントを整理すると次のようになります。
① 非弁行為とは
非弁行為とは、弁護士資格を持たない者が報酬を得る目的で、法律事務(法律判断・法律的アドバイス・書面の作成・交渉代理など)を反復継続して行うことを指します(弁護士法第72条違反)。
② 遺産分割協議書作成が非弁に該当しないケース
以下の場合は非弁行為に該当しません。
- 相続人自身が自ら作成する場合
- 相続人同士で話し合い、自ら協議書を作成することは自由です。
- 親族や知人が無償かつ一回限りで作成を手伝う場合
- 無報酬で善意の範囲内で一回限り、単純な代書や事務的補助を行うことは非弁にはなりません。
- 行政書士が権限の範囲内で作成する場合
- 行政書士は『書面作成の代理』に関する業務が認められており、紛争性がないことを前提として、遺産分割協議書の作成業務を行えます。
- ただし、相続人間で争いがあり、法律的交渉が必要となる場合は行政書士でも作成はできません。
- 司法書士が登記手続きに付随して作成する場合
- 相続登記に関連し、その登記手続きに伴う書面として作成する場合は認められます。
- ただし、争いがあり交渉を伴うケースは、司法書士が作成することは認められていません(認定司法書士でも交渉は140万円以下の案件に限られます)。
③ 非弁行為になる可能性があるケース
- 無資格者が報酬を得て継続的に協議書作成を請け負う場合
- 弁護士資格を持たない人が、業務として反復継続的に遺産分割協議書作成を請け負う行為は非弁に該当します。
- 行政書士や司法書士が相続人間の争い(紛争)に介入して作成する場合
- 紛争があるケースで、法律上の交渉や判断を要する場面で書面作成や交渉を行う場合は非弁となります。
【まとめ(要点)】
行為主体 | 状況・条件 | 非弁行為か |
---|---|---|
相続人自身 | 自分たちで作成 | ✖ |
親族・知人 | 無報酬かつ単発の作成支援 | ✖ |
行政書士 | 紛争なしで単純な作成 | ✖ |
司法書士 | 登記業務の範囲内での作成 | ✖ |
無資格者 | 報酬を得て反復継続的に作成 | 〇(非弁) |
行政書士・司法書士 | 紛争・交渉を伴う作成 | 〇(非弁) |
したがって、「遺産分割協議書作成」自体が直ちに非弁というわけではありませんが、『報酬を得て反復継続的に』法律的判断を伴う書面作成を行えば非弁行為に該当しますので、注意が必要です。
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