**MMT(Modern Monetary Theory、現代貨幣理論)**とは、政府の財政政策に対する新しい考え方であり、主流派経済学の財政規律重視の立場と大きく異なる理論です。以下、その核心を詳しく説明します。
① MMTの基本的主張
- 自国通貨を発行できる政府は財政破綻しない。
- 日本や米国など、自国通貨(円、ドルなど)を自由に発行できる国では、財政赤字は必ずしも問題ではない。
- 税収や借入に依存せず、通貨発行権を利用すれば財政支出を自由に増やせる。
- インフレこそが財政支出の制約要因である。
- 財政赤字自体は問題ではないが、政府支出が経済の供給能力を超えてしまうとインフレが生じる。
- インフレが許容範囲内であれば、財政拡張を続けても問題はない。
- 税金は財源ではなく、インフレ抑制や所得再分配の手段である。
- 税金は政府支出の財源として集めるのではなく、通貨の価値を維持したり、所得格差を是正するための政策手段として利用する。
② MMTの代表的な提唱者
- ステファニー・ケルトン(Stephanie Kelton)
- MMTの最も著名な推進者。著書『財政赤字の神話』で有名。
- ウォーレン・モズラー(Warren Mosler)
- MMTの基礎を築いた人物の一人。金融業界出身。
- ランダル・レイ(L. Randall Wray)
- 理論的枠組みの整備に貢献。
③ MMTと従来の経済学との違い
項目 | 従来の主流派経済学 | MMT |
---|---|---|
財政赤字 | 財政破綻のリスクがあるため抑制すべき | 自国通貨を発行できる政府に破綻リスクはない |
インフレ | 貨幣供給が増えすぎるとインフレが起きる | 経済の供給能力を超える政府支出が原因でインフレが起きる |
税金の役割 | 政府支出の財源 | インフレ抑制や所得再分配、通貨価値維持の政策手段 |
④ MMTの政策的帰結(政策提言)
- 雇用保証プログラム(Job Guarantee)
- 政府が最終的な雇用主となり、完全雇用を維持するために雇用を保証する。
- 積極的な財政政策
- 景気後退時には、政府が通貨発行権を活用し積極的に財政支出を拡大する。
⑤ MMTへの批判
- 過度な財政拡張によるハイパーインフレリスク
- 無制限な通貨発行は通貨価値の暴落や極端なインフレを引き起こす恐れがある。
- 通貨価値・金利上昇リスク
- 通貨発行の拡大が続けば、通貨の価値が低下し、結果的に金利上昇(国債価格下落)を引き起こす可能性がある。
- 経済の構造的問題を解決しない
- 生産性の向上や技術革新を伴わない通貨供給の増加は、経済の構造的問題を改善しないとの批判もある。
📌要約
MMT(現代貨幣理論) は、自国通貨を発行できる政府は財政破綻しないという前提に基づき、財政赤字を問題視せず、インフレを唯一の制約とする財政政策を推進する理論です。主流派経済学と異なり、税金を財源ではなく通貨価値調整手段として位置づけ、完全雇用や景気刺激を積極的に推進する政策的帰結を持ちます。一方で、通貨価値の毀損やインフレリスク、経済構造問題の解決に寄与しないなどの批判もあります。
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