AI関連需要が半導体のみならずクラウド基盤や電力インフラまで波及している現状

エヌビディア(NVDA)第2四半期決算のポイント:

  • 業績と見通し: 5~7月期の売上高は約467億ドルと、市場予想(約461億ドル)を上回りました。特にデータセンター向け半導体の需要が引き続き旺盛で、第3四半期(8~10月)の売上高見通しも約540億ドルと予想を上回る強気な内容となりました。ただし、この見通しにはアメリカ政府の輸出規制下で出荷が制限されている中国向けAIチップ「H20」の売上を含んでいません。もし規制が緩和され中国向け出荷が実現すれば、第3四半期にさらに数十億ドル規模で売上が押し上げられる可能性があります。
  • 中国リスクと株価反応: 同社は米政府の対中輸出規制の影響により、第2四半期だけで約80億ドル相当の売上を失う見通しであることを明らかにしていました。この地政学的リスクへの懸念から、好調な業績にもかかわらず投資家の反応は慎重で、決算発表後に株価は一時下落しました。エヌビディアCEOの黄(ジェンスン・フアン)氏も「同社の成長のボトルネックはシリコン(技術)ではなく外交問題だ」と指摘しており、中国市場から事実上締め出されている現状への危機感を示しています。また、同社は追加で600億ドルの自社株買いを承認し、株主還元策も強化しています。

Nebius Group(ティッカー: NBIS)第2四半期決算のポイント:

  • 会社背景: Nebius(ネビウス)グループはAI専用のクラウドインフラやデータセンター事業を手掛ける新興企業です。急成長中のAI需要を背景に注目されており、2025年に入ってから株式市場でも話題になっています。
  • 業績ハイライト: 4~6月期の売上高は1億0510万ドルに達し、前年同期比で実に+625%(約7.25倍)という驚異的な伸びを記録しました。市場予想(約1億0120万ドル)も上回り、大幅なトップライン成長を示しています。
  • 成長戦略と見通し: 急増する需要を受け、同社は2025年末時点の年間売上高ランレート(ARR)見通しを当初の9億ドルから11億ドルへと上方修正しました。また、AIインフラ拡充のために2026年末までに1GW超の電力供給能力を確保する計画を発表し、大規模な設備投資を継続しています。実際、第2四半期の設備投資額は5億1060万ドルと前年の約3倍に増加しました。
  • 収益性: 大規模投資段階のためまだ最終損益は赤字ですが、損失幅は概ね想定内です。調整後純損失は9150万ドル(前年同期は6160万ドルの損失)となり、規模拡大に伴い赤字額が一時的に増えています。ただし調整後税引前損益は-2100万ドルと、前年(-5810万ドル)より改善しました。一部報道では中核となるAIインフラ事業がEBITDAベースで黒字転換したとも伝えられており、急成長と並行して収益性の向上も見られます。

GEベルノバ (GE Vernova, ティッカー: GEV) 第2四半期決算のポイント:

  • 会社背景: GEベルノバは米ゼネラル・エレクトリック(GE)社から分離独立したエネルギー関連事業会社で、発電設備や再生可能エネルギー(風力など)を手掛けています。世界的なエネルギー転換やインフラ需要の高まりを受け、注目される公益セクター企業です。
  • 業績ハイライト: 4~6月期の売上高は91億1,100万ドルとなり、前年同期比+11.1%の増収を達成しました(市場予想の88億ドルも上回る好結果)。調整後1株当たり利益(EPS)も$1.86となり、予想($1.50前後)を上回っています。収益増はガスタービンなど**発電部門(パワー事業)**の好調に支えられ、同部門の受注額は前年同期比+42%と大きく伸びました。これにはデータセンター向け電力需要の拡大も貢献しており、AI時代のインフラ投資が電力設備に波及していることが伺えます。風力事業も売上+9%と増収でした(大型案件の反動で受注はやや減少)。電化機器(グリッドなど送配電関連)事業は売上+23%と大きく伸び、利益率も改善しています。全社の調整後EBITDA(税引前利益)は7億70百万ドルとなり前年同期比+約50%増、EBITDAマージンも8.5%(前年6.4%)へ大幅向上しました。
  • キャッシュフローと財務: 一方で当期の営業キャッシュフローは3億6700万ドル、フリーキャッシュフローは1億9400万ドルとなり、前年同期(それぞれ9億7800万ドル、8億2100万ドル)に比べ現金創出は減少しました。前年は一時的な大口入金があった反動もありつつ、引き続き設備増強やリストラ費用など先行投資が現金を圧迫しています。ただし財務基盤は健全で、同社は約80億ドルの手元資金と無借金経営を維持しています。
  • 通期見通し: 好調な受注と業績を受け、GEベルノバは2025年通期の業績見通しを引き上げました。売上高成長率は従来計画から上方修正され約+20%増を見込み、通年売上高は360~370億ドル程度と予測されています(以前の市場予想は約369.7億ドル)。調整後EBITDAマージン見通しも8~9%へ改善させています(従来ガイダンスは8%前後)。また年間のフリーキャッシュフロー見通しも従来より10億ドル引き上げ、30~35億ドルのプラスを見込むなど、将来への自信を示しました。経営陣は決算説明で「データセンター向け需要など電力インフラ市場が加速している」と述べるとともに、生産現場でのロボティクスや自動化、AI活用による効率化をさらに推進する方針を示しています。これは社内のリーン生産体制を強化した上で、最新技術投資によって一段の成長と収益改善を狙う戦略です。

筆者の総括・主張:
AIブームがもたらす光と影を指摘しています。エヌビディアの驚異的な売上成長は生成AI需要の爆発力を物語っていますが、米中対立という地政学リスクがその成長に影を落としている点が強調されています。一方、ネビウスのような新興企業が巨額の設備投資を伴いながらも桁違いの成長率を示したことや、GEベルノバがAI時代のインフラ需要取り込みで業績を伸ばしていることから、AI関連需要が半導体のみならずクラウド基盤や電力インフラまで波及している現状が浮き彫りになっています。テクノロジーの進歩による恩恵(旺盛な需要と成長機会)と同時に、それに伴う国際情勢の不確実性や巨額投資の必要性といった課題にも目を向けるべきだと示唆しています。総じて**「AI革命」は産業構造全体に大きなインパクトを与えており、投資家はその恩恵とリスクの両面を見極める必要がある**というのが私の見立てです。

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