中小企業の純損失繰戻還付制度(2025年税制)概要と詳細

1. 純損失の繰戻還付制度の概要(対象法人・適用要件・手続・適用期限)

制度の概要: 青色申告書を提出している中小企業者等の法人が当期に純損失(欠損金額)を計上した場合、前期(当期開始の日前1年以内に開始した事業年度)の所得にその欠損金額を繰り戻して、前期に納付した法人税の還付を受けることができる制度ですnta.go.jp。簡単に言えば、「今期が赤字・前期が黒字」の中小企業は、今期の赤字を前期の黒字にさかのぼってぶつけることで、前期に納めた法人税の一部または全額を取り戻せる仕組みです。 

対象法人: 本制度を適用できるのは中小企業者等に該当する法人ですnta.go.jp。具体的には、事業年度末の資本金等の額が1億円以下の普通法人(大法人に100%支配されていないもの等)や、資本金を有しない法人などが該当しますnta.go.jp(一定の大法人の子会社や投資法人等は除かれます)。一方、これら中小企業者等以外の大法人については、平成4年4月1日から令和8年3月31日までの間に終了する各事業年度の欠損金について、原則として本制度の適用が停止されていますnta.go.jp(※後述の特例を除く)。そのため2025年時点では基本的に資本金1億円超の大企業は繰戻還付を利用できません。ただし例外として、大法人であっても清算中の欠損解散等に伴う欠損災害による損失欠損など一定の欠損金については繰戻還付制度を適用可能とされていますnta.go.jp。 

適用要件: 繰戻還付を受けるためには、次の主要な要件を全て満たす必要がありますnta.go.jp:

  • 青色申告の継続提出: 還付を受ける前期から欠損が生じた当期まで、連続して青色申告による確定申告書を提出していることnta.go.jp
  • 期限内申告: 欠損金が生じた当期の確定申告書を提出期限までに提出していることnta.go.jp(期限後申告では適用不可)。
  • 所定の請求書の提出: 当期の確定申告書と同時に所定の様式である「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を税務署長宛てに提出していることnta.go.jp。この請求書を確定申告書に添付しないと繰戻還付は受けられません。

手続方法: 上記の要件を満たした上で、確定申告書提出時に繰戻還付請求書を添付するのが通常の手続ですnta.go.jp。税務署による審査後、還付金額が確定し法人の預金口座等へ振り込まれます。還付される法人税額の計算は、前期の法人税額に対する当期欠損金額の割合等に応じて按分計算されます(国税庁タックスアンサーでは計算式も示されています)nta.go.jp。なお、繰戻還付によって還付された欠損金相当額は、将来の欠損金繰越控除には重複して利用できない点に注意が必要です(繰戻還付を受けた部分の欠損金は既に前期にて控除済みとなるため、残余の欠損金のみ繰越可能となります)。また、この制度を適用するか否かは納税者の任意であり、適用しない場合はその欠損金は通常どおり翌期以降に繰越控除することができます。 

適用期限(制度の時限的特例): 上記のとおり大法人への適用停止措置は令和8年3月31日まで継続中ですが、本制度については近年一時的な適用範囲拡大の特例措置も実施されました。新型コロナウイルス感染症対策の特例として、「資本金1億円超~10億円以下」の中堅企業も青色欠損金の繰戻還付を受けられる措置が講じられていますnta.go.jp。この特例は令和2年2月1日から令和4年1月31日までに終了する各事業年度の欠損金が対象で、一時的に適用範囲を拡大したものですchuokai-shiga.or.jp。現在(2025年時点)このコロナ特例は既に適用期間を終了しており、基本的には再び資本金1億円以下の中小法人等のみが本制度の対象となっていますnta.go.jp。もっとも将来の税制改正等により適用期限が見直される可能性もありますので、最新の国税庁情報を確認することが重要です。

2. 還付対象となる法人税の範囲

繰戻還付によって**還付の対象となる税金は「法人税」ですnta.go.jp。ここでいう法人税とは国税である法人所得に対する税金を指し、具体的には法人税法に基づき国に納付する法人税(国税)**を意味します。したがって、繰戻還付請求によって返還されるのは前期に納めた法人税額(国税分)であり、当該欠損金額に対応する法人税相当額が還付金として戻ってきますnta.go.jp。 

なお、法人税に付随して課税される地方法人税(国税として徴収され地方交付税原資となる付加税)も法人税の一部として扱われます。地方法人税は法人税額に一定率を乗じて計算される国税であるため、前期の法人税が欠損金の繰戻によって減額されれば、それに連動して前期に納付した地方法人税も減額されることになり、繰戻還付請求により併せて還付されることになります(※国税庁の資料において「対象税目:法人税」とあるのは地方法人税を含む法人税全体を指すと解されていますnta.go.jp)。

3. 法人地方税(法人住民税・法人事業税)は繰戻還付の対象か

法人地方税は繰戻還付の対象になりません。 繰戻還付制度は国税である法人税について法人税法上認められた制度であり、地方税である法人住民税(道府県民税・市町村民税)や法人事業税には同様の欠損金繰戻還付の規定がありませんwishkaikei.comaiwa-tax.or.jp。したがって、当期に赤字が出ても地方税において前期分の税金が還付されることはなく、地方税については通常通り当期は所得ゼロにより非課税(または均等割のみ課税)となるだけです。翌期以降に黒字が出れば、地方税独自の欠損金繰越控除の規定に基づき、当期の欠損金を繰り越して住民税・事業税の課税所得の計算に反映させることになります(※法人住民税の「法人税割」は法人税額に連動するため、国税である法人税が繰戻還付で減少した場合、後年の法人住民税申告の際に**「還付法人税額控除」**として調整する仕組みがあります)。要するに、繰戻による即時還付が認められるのは国税である法人税のみであり、地方税については欠損金の繰戻還付制度は設けられていないということですnta.go.jp

4. 繰戻還付制度の実務上の留意点・申告書類・手続方法

申告・請求手続: 繰戻還付を受けるには、原則として欠損金が発生した事業年度の確定申告書を期限内申告し、その申告と同時に「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を提出する必要がありますnta.go.jp。確定申告書と還付請求書は所轄税務署に提出し、電子申告(e-Tax)の場合も所定の様式データを添付して送信します。還付請求書には、当期欠損金額のうち前期に繰り戻す金額や前期の所得金額・法人税額などを記載し、還付金の計算根拠を示しますnta.go.jpnta.go.jp。税務署は提出書類を審査のうえ適否を判断し、適用要件を満たしていれば概ね確定申告から2~3か月程度で指定口座へ還付金が振り込まれます(還付には所定の還付加算金〈利息相当額〉も付きます)。 

実務上の留意点:

  • 期限内申告の厳守: 繰戻還付を受けるには当期の確定申告書を法定申告期限内に提出していることが必須ですnta.go.jp。期限後申告の場合、青色申告の承認自体が取り消されるため繰戻還付の適用対象から外れてしまいます。よって、業績不振で赤字見込みの場合でも申告期限の延長などは慎重に判断してください。
  • 請求書の添付漏れ防止: 還付請求書の提出は確定申告と同時が原則で、後から単独で提出することはできませんnta.go.jp(通常の更正の請求では対応不可)。申告書類の作成段階で還付請求書の添付漏れがないよう十分注意が必要です。万一添付し忘れた場合、その事業年度の繰戻還付は受けられなくなります。
  • 繰戻還付と繰越控除の選択: 欠損金の処理について繰戻還付を選択した場合、その欠損金額は翌期以降の欠損金繰越控除には充てられません。当期欠損金の一部のみ繰戻し、残りを繰越すこと自体は可能ですが(前期の課税所得を上限として繰戻し、それを超える欠損は繰越)、同じ額を二重に控除することはできません。繰戻還付を受けると当期欠損金が将来の税負担軽減に使えなくなる点を踏まえ、資金繰り状況や翌期以降の利益予想を勘案して適用するか判断します。
  • 地方税への影響: 前述のように地方税には繰戻還付がないため、当期に欠損金が生じても住民税・事業税で直ちに還付はありません。ただし、前期に納付した法人税が還付される場合、翌期以降の法人住民税申告において「還付法人税額」に対応する控除を適用できます(見落とし防止のため、還付を受けた後も数年間は住民税の申告書作成時に留意が必要です)wishkaikei.com
  • 解散や災害時の特例手続: 通常は確定申告と同時に請求しますが、会社の解散等の事実が生じた場合には例外的に、解散等の日が属する事業年度の欠損金についてその事実発生日から1年以内であれば還付請求書を提出することが可能ですnta.go.jp。例えば事業廃止や法人清算のケースでは、清算事業年度の確定申告後でも1年以内であれば繰戻還付を請求できますnta.go.jp。また災害による損失が生じた場合には、青色申告法人であれば欠損事業年度開始日前2年以内まで遡って繰戻還付を受けられる特例がありますnta.go.jp。災害時の手続きでは、仮決算による中間申告を行い還付請求を同時提出することも可能ですnta.go.jp。これら特例を適用する際は、別途証明書類の添付や期限の管理に注意する必要があります。

以上のように、純損失の繰戻還付制度は中小企業の資金繰りを支援する有用な制度ですが、適用要件や手続に細かな決まりがあります。国税庁の公開する情報(タックスアンサーや手引き等)を参照しつつ、漏れのない適用・申告を行うことが大切です。


主要ポイントのまとめ:

  • 中小企業(資本金1億円以下などの青色申告法人)は、当期の赤字(欠損金)を前期の黒字に繰り戻し、前期に納めた法人税(国税)を還付してもらうことができますnta.go.jp
  • 繰戻還付の対象税金は法人税(含む地方法人税)のみであり、地方税である法人住民税・法人事業税は繰戻による還付の対象外ですnta.go.jp
  • 本制度を利用するには、連続した青色申告期限内申告還付請求書の同時提出という3つの主な要件を満たす必要がありますnta.go.jp。確定申告と同時に所定の「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を提出しないと適用されない点に注意してください。
  • 大企業について繰戻還付制度は1992年以降停止されています(通常は適用不可)が、資本金1億円超10億円以下の法人は2020~2021年度の欠損に限り特例適用可とされたなど、一時的な適用範囲拡大が行われた例がありますnta.go.jp。現在(2025年)時点では原則中小企業のみ適用可能ですnta.go.jp
  • 実務上は、還付請求書の添付漏れや期限後申告による適用漏れに注意し、繰戻還付を受けた場合は将来の欠損金繰越控除や法人住民税額の調整に留意しましょう。nta.go.jpwishkaikei.com

引用

No.5763 欠損金の繰戻しによる還付|国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5763.htmNo.5763 欠損金の繰戻しによる還付|国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5763.htmNo.5763 欠損金の繰戻しによる還付|国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5763.htmNo.5763 欠損金の繰戻しによる還付|国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5763.htmNo.5763 欠損金の繰戻しによる還付|国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5763.htmNo.5763 欠損金の繰戻しによる還付|国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5763.htmhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/keizaitaisaku/pdf/keizaitaisaku_2.pdf欠損金の繰戻し還付制度を利用できる法人の範囲拡大のお知らせ〖国税庁〗 | 滋賀県中小企業団体中央会https://chuokai-shiga.or.jp/%E6%AC%A0%E6%90%8D%E9%87%91%E3%81%AE%E7%B9%B0%E6%88%BB%E3%81%97%E9%82%84%E4%BB%98%E5%88%B6%E5%BA%A6%E3%82%92%E5%88%A9%E7%94%A8%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E6%B3%95%E4%BA%BA%E3%81%AE%E7%AF%84%E5%9B%B2/No.5763 欠損金の繰戻しによる還付|国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5763.htm欠損金の繰戻しによる還付と 事業税および法人住民税での調整 | 全国対応/大家さん専門の税理士wish会計事務所 / 家賃の節税から相続税対策までお任せ下さい!https://www.wishkaikei.com/taxknowledge/628.html税務レポート | トピックス | あいわ税理士法人https://www.aiwa-tax.or.jp/report/6813/https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/123-1.pdfhttps://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/123-1.pdf欠損金の繰戻しによる還付と 事業税および法人住民税での調整 | 全国対応/大家さん専門の税理士wish会計事務所 / 家賃の節税から相続税対策までお任せ下さい!https://www.wishkaikei.com/taxknowledge/628.htmlNo.5763 欠損金の繰戻しによる還付|国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5763.htmNo.5763 欠損金の繰戻しによる還付|国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5763.htmNo.5763 欠損金の繰戻しによる還付|国税庁https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5763.htm欠損金の繰戻しによる還付と 事業税および法人住民税での調整 | 全国対応/大家さん専門の税理士wish会計事務所 / 家賃の節税から相続税対策までお任せ下さい!https://www.wishkaikei.com/taxknowledge/628.html

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