命題(利下げ推進論)
足元では景気減速リスクが意識され、FRBは年内および2026年にかけて複数回の利下げを行うとの見方が広がっている。市場コンセンサスでは、年末までに3回前後、2026年までに合計約6回程度の利下げが見込まれており(モルガン・スタンレーなどの予想)reuters.com、実際にFOMC直前にはドル安・金高が鮮明になっている。金利が低下すると名目利回りのみならず実質金利も低下するため、利息を生まない金にとって魅力が増す。過去のデータでも、米国で政策金利が引き下げられる局面では金価格が上昇する傾向があり(ピクテpictet.co.jp)、直近でも利下げ観測の強まりとともに金は史上高値を更新した(ブルームバーグbloomberg.co.jp)。また、金はインフレヘッジ資産としても位置づけられ、政府の財政拡張や貿易摩擦緩和に伴う将来の物価上昇リスクへの備えとして需要が高まるとの指摘もあるpictet.co.jp。総じて、景気悪化リスクに対抗するための利下げ継続は米国経済にとって必要とされ、それに伴ってドル安・金高の流れが強まるというのが命題側の立場である。
反命題(慎重論)
一方で、急速な利下げにはインフレ再燃や資産バブル発生のリスクが伴う。FRB自身の予測(ドットチャート)でも、2025年の利下げ回数は従来見通しから引き下げられ、インフレ率予想は上方修正されているjetro.go.jp。パウエル議長も会見で、関税引き上げの影響や地政学リスクによる物価上昇への警戒感を示し、「今すぐ利下げを急ぐ状況にはない」と述べたjetro.go.jp。急激に金融を緩和すれば、実体経済では過剰な需要拡大や資産価格の過熱につながる懸念がある。また、インフレ率が想定外に上昇すれば実質利回りがさらに低下し、将来的に追加利上げを余儀なくされる可能性もある。金相場の観点から見ると、急激な利下げでインフレ懸念が高まると金へのインフレヘッジ需要は増大する。しかし同時に、経済が好転し実質金利が急低下すれば株高に伴って金の代替資産的な役割が低下することもある(楽天証券media.rakuten-sec.net)。したがって、反命題側は「金融政策はインフレと資産バブルの抑制という役割も忘れてはならない」と主張し、慎重なペースでの対応を訴える。
総合(バランス論)
FRBはインフレ抑制と景気刺激という相反する課題のはざまでバランスを模索している。市場や一部機関投資家が多回数の利下げを織り込む一方、FRBはインフレ動向を注視しながら「ソフトランディング」を目指す姿勢を保っており、実際、2025年の利下げ回数は過半数のメンバーが1~2回程度を想定している。したがって今後は、急激に緩和へ舵を切るのではなく、経済指標の動向を確認しつつ段階的な利下げを行う可能性が高いと考えられる。金相場の観点では、このバランス策により金利低下・ドル安が徐々に進行し金には下支え要因となるが、インフレが比較的抑えられれば金利上昇圧力もかかり、金相場は大幅上昇の勢いを調整するだろう。換言すれば、FRBが中庸なペースで金融緩和を進めれば、金は安全資産・インフレヘッジとしての需要を背景に堅調を維持しつつ、急騰は抑制される見込みである。
要点まとめ: 市場では景気減速を見据えてFRBが年末以降にも複数回の利下げを実施すると予想されている。一方、急速な利下げはインフレ再燃やバブルリスクを招くため、金融政策は慎重姿勢を崩していない。FRBはインフレ抑制と景気刺激を両睨みし、段階的かつバランスの取れた利下げペースを模索する見込みである。金相場は利下げによるドル安・実質金利低下に支えられやすい一方、抑制的なインフレで金利上昇圧力も想定されるため、FRBの対応次第で上昇ペースに調整が入るだろう。
引用
Morgan Stanley, Deutsche Bank expect three US interest rate cuts this year | Reuters
https://www.reuters.com/business/morgan-stanley-deutsche-bank-expect-three-us-interest-rate-cuts-this-year-2025-09-12/ピクテ・ゴールド|2025年の金価格を支える主な要因https://www.pictet.co.jp/investment-information/fund-insight/fund-watch/gold/Gold-20250109.html金価格が最高値更新、一時3686ドル台-今週のFOMC前に米利下げ観測 – Bloomberghttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-09-16/T2NPQSGOT0JX00ピクテ・ゴールド|2025年の金価格を支える主な要因https://www.pictet.co.jp/investment-information/fund-insight/fund-watch/gold/Gold-20250109.html米FRB、政策金利を据え置き、金融政策の先行きはFOMC参加者の見解わかれる(米国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロhttps://www.jetro.go.jp/biznews/2025/06/739ad77f61e26b21.html米FRB、政策金利を据え置き、金融政策の先行きはFOMC参加者の見解わかれる(米国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロhttps://www.jetro.go.jp/biznews/2025/06/739ad77f61e26b21.html金(ゴールド)相場が3,600ドルの大台到達:その背後に中央銀行の存在 | トウシル 楽天証券の投資情報メディアhttps://media.rakuten-sec.net/articles/-/50013
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