米国の金保有量は過去数十年にわたってほぼ一定で推移している一方、特別引出権(SDR)やIMF準備ポジション、外貨準備は大きく変動します。上のグラフは、金保有量(メトリック・トン)を左軸に、金の割合を右軸に示した先ほどの折れ線グラフを、金を帳簿価額ではなく時価で評価した場合の姿に置き換えたものです。
時価ベースの割合の計算方法
- 金の量は米財務省の国際準備ポジションで公表されており、2025年7月11日時点で米国は261.499百万トロイオンスの金を保有しています。帳簿価値は42.22ドル/トロイオンスで固定されているため110.41億ドルですが、市場価格に換算すると大きく増えます。
- 金価格は、2025年9月19日時点の金スポット価格が3,657.79ドル/トロイオンスであることを用いました。帳簿価格との比率は約86.6倍です。
- 各年度の公式準備資産総額(帳簿ベース)は連邦準備制度理事会の統計表3.12等に基づきます。例えば2022~2024年の総準備資産は約2,380億~2,450億ドルで、金の帳簿価額は常に110.41億ドルです。2003~2006年や2012~2016年の値も過去の統計資料を参照しています。
- 時価ベースの割合は、帳簿価額を市場価額に置き換え、分母にSDR・IMF準備ポジション・外貨準備と金の時価を合計した値を使用して計算しました。
結果と解釈
グラフでは、金保有量(青線)は8,133.5トン前後でほぼ水平のままですが、金の割合(赤線)は帳簿ベースのグラフに比べて非常に高く推移しています。これは、金を市場価格に換算すると110億ドルが約9,565億ドルに跳ね上がるため、SDRや外貨準備の比重が小さくなり、金が総準備資産の80~95%を占める計算になるからです。特に2005~2006年のように総準備資産が6万億ドル台と小さい時期には、金の割合が9割以上に達しています。その後、SDRの増加や外貨準備の拡充により割合はやや低下しましたが、それでも2022~2025年でも80%前後と高水準です。
※本グラフでは金価格として2025年9月19日の時価を全期間に適用しているため、実際の歴史的な金価格の変動を反映していません。各年の市場価格を用いると金の割合は年ごとに多少異なるはずですが、データ入手の制約上ここでは簡便な仮定を置いています。
このグラフから、金を時価で評価すると米国の準備資産の大部分が金ということになりますが、これは会計上の評価とは異なります。公的統計で用いられる帳簿価額ベースでは金の割合は数%~十数%程度であることに注意してください。
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