企業会計基準第9号(棚卸資産の評価に関する会計基準)では、トレーディング目的で保有する棚卸資産の損益は原則として売上高に純額表示することと定められていますasb-j.jp。これは、当該資産を短期売買目的の「営業活動の一部」とみなし、評価差額(評価益または評価損)を売上高と売上原価の差額として処理するためです。したがって、当期末評価益を売上高に含めている場合は、損益計算書上に別途「有価証券評価益」などの科目を置かず、売上高の増減に反映させて表示します。
これを踏まえ、**個別財務諸表の注記(個別注記表)**では、次のような事項を開示する必要があります。まず、トレーディング目的棚卸資産の評価方法と損益計上方法について、重要な会計方針として明示します。具体例としては、
- 「当社は、トレーディング目的で保有する商品(売買目的有価証券)を時価評価しており、評価差額は当期損益に計上しています。当期における期末評価益××円は売上高に含めており、売上原価等から相殺の形で純額表示しています。」
といった記載です。ここでは、評価益額(例:××円)を具体的に示すとともに、その評価益を売上高に含めている旨を明記します。「純額表示」である理由として、企業会計基準第9号第19項に基づく取扱いであることを説明するとよいでしょうasb-j.jp。例えば、「当社のトレーディング目的棚卸資産に係る評価益は、企業会計基準第9号第19項に従い売上高に純額で表示していますasb-j.jp。」のように注記します。
次に、開示すべき注記事項としては、金融商品会計基準(企業会計基準第10号)第40-2項(3)に準じた情報を開示しますasb-j.jppdca-accounting.com。具体的には、売買目的有価証券(ここではトレーディング目的棚卸資産)の時価水準ごとの内訳や、主要銘柄別の評価額などを記載します。例示的には以下のようになります:
- 「トレーディング目的で保有する商品(売買目的有価証券)の期末時価総額は○○円です。当該資産の時価は、【注記例】参照のとおり主に市場価格に基づく(レベル1)算定です。」
- 「当該商品の期末時価のレベル別内訳(市場価格等の入力)を以下に示します。レベル1:△△円、レベル2:◇◇円、レベル3:なし(ほとんどが市場価格に基づく評価です)。」
これらの開示は、企業会計基準第9号第19-2項で「売買目的有価証券に関する注記に準じて」行うよう求められていますasb-j.jp。ただし同条では「重要性が乏しい場合は注記を省略することができる」と規定されており、評価益が金額的に小さい場合は注記を省略することが可能ですasb-j.jp。また、連結財務諸表で同様の注記を行っていれば、個別財務諸表に重複して記載する必要はありませんasb-j.jp。
なお、会社法計算書類上の注記としては、上記会計方針を「重要な会計方針」に含めて開示します。また、有価証券及び棚卸資産の評価基準・方法に関する注記で、「当該有価証券については時価法(評価益は売上高に含む)」旨を明記することが考えられます。例えば、会計方針の欄に「売買目的有価証券の評価は時価法(市場価格による)を採用し、その評価差額は営業損益(売上高)に含めて処理します」といった記載例が考えられます。
以上をまとめると、トレーディング目的棚卸資産の評価益を売上高に含める場合、注記表には(1)当該評価益を売上高に含めて純額表示している旨とその理由・基準、(2)評価益の金額や対象資産、(3)金融商品開示基準に準じた時価の水準別内訳等を示すことが求められます。重要性の低い場合は詳細開示が省略できる点にも留意しますasb-j.jp。
要点まとめ: 本件では、企業会計基準第9号第19項に従い、トレーディング目的棚卸資産の評価益を売上高に純額表示していますasb-j.jp。個別注記表では、当該評価益を含めている旨とその額を会計方針として注記し、金融商品会計基準第40-2項(3)に準じて時価の水準別内訳等を必要に応じて開示しますasb-j.jppdca-accounting.com。評価益が重要性に欠ける場合は注記を省略できる点も明示されておりasb-j.jp、これらを踏まえて適切な文例で記載します。
参考資料: 会計基準第9号(棚卸資産評価基準)asb-j.jpasb-j.jp、金融商品開示適用指針pdca-accounting.com、財務諸表等規則fsa.go.jp。
引用
https://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=24#heading-id-56会計基準詳細 | 会計基準検索システムhttps://www.asb-j.jp/jp/accounting_standards_system/details.html?topics_id=24#heading-id-56トレーディング目的で保有する棚卸資産とは|会計処理を解説https://www.pdca-accounting.com/fs/01091001_commodity_trading.htmlhttps://www.fsa.go.jp/common/law/kaiji/04.pdf
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