パーペチュアル・フューチャーズ(パープス)とは

パーペチュアル・フューチャーズ(以下パープス)は、暗号資産市場特有のレバレッジ商品として世界の市場を席巻してきました。毎日24時間取引でき、決済期限が無いためポジションを長期間保持できることから、現物を保有しなくても値動きの恩恵を受けられます。資金調達率(ファンディング・レート)によって価格がスポット市場から離れ過ぎないよう自動調整され、取引所同士の裁定取引も活発です。その結果、2025年時点で一部の報告では暗号資産デリバティブ取引の9割以上がパープスによって占められるほど流動性が高く、トレーダーは必要証拠金の数倍から数十倍のポジションを建てることができます。

しかしこの利便性が規制当局の懸念を呼びました。パープスは現物を保有せず損益のみを清算するため、従来の先物よりも投機的要素が強く、最大100倍に達するレバレッジが投資家保護に反すると批判されています。各国は取引所を介さない越境取引がマネー・ロンダリングや投機的バブルを助長する点を懸念し、アメリカ、イギリス、カナダ、シンガポール、日本など多くの国や地域で未許可のパープス取引を禁止または制限しました。一方、ブラジルやトルコ、ナイジェリアなど一部の国ではほとんど規制が無く、利用者は高レバレッジを求めて規制の緩い海外取引所へ流れていきました。規制の無い環境ではアルゴリズム的な清算や過度のレバレッジにより短時間で多額の損失を被る投資家も多く、価格操作や急激な清算連鎖による市場の不安定化が問題視されました。

こうした混乱に対し、2025年には米国で規制に準拠した「パーペチュアル・スタイル」商品が登場しました。代表例がCoinbase Derivativesが同年7月に開始したナノ・ビットコイン/イーサリアムのパーペチュアル・スタイル先物で、従来のパープスの特徴(24時間取引・資金調達率による価格補正)を残しつつ、最長5年間の有効期限と10倍までのレバレッジ制限を設けています。さらにCboe Futures Exchangeは同年11月にビットコイン・イーサリアムの「連続型先物(Continuous futures)」を導入し、10年の有効期限と透明な資金調達率により無期限に近い建玉を可能にしました。これらは米商品先物取引委員会(CFTC)の承認を得た上で上場され、清算機関を通じて日次の値洗いと証拠金管理を行うことで、投資家保護と健全な価格形成を目指しています。規制当局が監督することで、反社会的な資金洗浄や顧客資産流用のリスクを低減でき、国内投資家が安心して利用できる選択肢が整いつつあります。

規制導入によりパープス市場は二極化していくでしょう。一方では高いレバレッジと匿名性を求めるユーザーが規制の緩い国や分散型取引所(DEX)に移り、他方では米国のように法の枠組みの中で資金調達率・レバレッジ・清算ルールが整備された「連続型先物」が普及する可能性が高いです。暗号資産の価格変動に対するヘッジ手段としても、採掘業者や長期保有者にとって規制型パープスは有用です。国際的な協調と共通ルールが進めば、パープス本来の利便性と投資家保護を両立できるでしょう。投資家としては、高レバレッジの魅力に目を奪われず、資金調達コストや清算リスクを理解し、各国の法制度や自らのリスク許容度に応じて慎重に利用することが肝要です。

要約
パーペチュアル・フューチャーズは無期限で24時間取引可能な暗号資産デリバティブであり、2025年にはデリバティブ市場の主力商品として高い流動性を誇る。一方で100倍レバレッジなど投機性の高さから、米国や日本、英国など多くの国で無許可取引が禁止され、規制のない国では投資家の損失や市場操作の問題が顕在化した。こうした課題に対応するため、米国ではCFTCが監督する「パーペチュアル・スタイル」や「連続型先物」が2025年に上場し、5〜10年の期限と10倍程度のレバレッジ、資金調達率による価格補正などを導入して投資家保護と健全な市場形成を図っている。

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